覗き厳禁

 木之瀬蘭子は、忘れ物をして夜遅くに学校に来た。

幸い先生がまだいたので、開けてもらい教室へと向かった。

しかし教室に向かう途中で、尿意を催した。


(帰りにトイレによってきましょうか)


そんな事を思いながら教室に向かい、忘れ物のノートを手にすると、

教室の外から物音がしてきた。


(何でしょう、台車を押すような音ですわね)


気になって見に行こうとした瞬間、尿意が強烈なものになった。


(これは大変です!)


蘭子は、教室を飛び出し、廊下を全力疾走した。

その背後から、恐ろしい形相の女性看護師が台車を押しながら、

向かって来ているが、それに、気づくことはなかった。そもそも余裕もない。


 トイレに飛び込んだ蘭子であるが、勢い余って、

奥の個室まで来てしまったが、とにかく個室に入って用を足す


「ふぅ……」


一息ついていると、台車を押すような音が、

トイレの中に入って来た。その上、一番目の個室から、ドアを開けて


「ここにはいない……」


二番目以降からは、


「ここにもいない……」


と言いながら、近づいてくるが、蘭子は、意に介さずと言ったところ、

しかし、すぐ隣の個室が開いた時には、さすがに身構えたものの、

用を足していてはどうしようもない。


 しかし、蘭子がいる個室、次はここのはずだが、

何も起きない。鍵をかけているから容易に開けられないが、

それでも、開けようとする気配もない。


(どうしたんでしょうね?)


取り敢えず用を足し終えたので、用心しつつも、

鍵を開け外に出ようとしたら、どうしてか、扉があかない。

何かで押さえられているようである。


 そして、蘭子は何げなく、上を見る。


「そういう事ですか」


そして彼女の右手が異形の手に変化、そして握り拳にする。

それは、まるで岩石の用である。


「看護師さん、出歯亀と言う言葉をご暫時ですか!」


と言って、変化した右手でジャンピングアッパーを放った。

ドアの上から、恐ろしい顔で覗いていた看護師の顔面に直撃した。


「うぎゃあああっ!!!!!」


そのまま、床に真っ逆さまに落ちる看護師、

その後、扉が開き、外に出てくる蘭子


「いやらしい目的は、無いんでしょうが、

しかし、覗いていたことには違いありません

こういう事する人は、誰であろうと許せないんですよね」

「!」


看護師の顔は、恐ろしさはなくなり、恐怖におびえる表情になった。

蘭子は笑顔であるが、逆に恐ろしさを醸し出す。


「それでは、お仕置きです」


この後、何が起きたかは定かではないが、

蘭子は、忘れ物のノートをもって、学校を後にした。

以後、夜の学校で、どういうわけか、

大けがをして車いすに乗った看護師がいて

生徒を見ると一目散に逃げていく言う噂が流れた。

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