夜の電話

 アパートで、住み込みのメイドと暮らす木之瀬蘭子。メイドは、所用で外出、

明日まで帰ってこない。そんな日の夜、彼女の家の電話が鳴った。

ディスプレイには、非通知と書いてあった。


 蘭子は、コードレスの子機を手にした。


「私、メリーさん、今、○○駅にいるの」


電話が切れる。○○駅は、最寄りの駅であるが、距離はそこそこある。

充電スタンドに戻す蘭子。


 少しして、再び非通知でかかってくる電話、再びとる蘭子


「私、メリーさん。今、△△スーパーの前にいるの」


アパートの最寄りのスーパーマーケットの名前を出した。

駅よりアパートに近づいている。電話は切れるが、少しして再び鳴る電話。


「私メリーさん。××の○○店にいるの」


それは、アパートのすぐ近くの、コンビニの店名で会った。蘭子は、無言のまま子機を充電スタンドに戻す。


 少ししてまた電話、出ると


「私、メリーさん、今あなたのアパートの前に居るわ。貴女の部屋が良く見える」


蘭子は、子機を持ったまま、ベランダに出て、外を確認するが、人影は見えない。


 再び部屋に戻ると、電話が鳴った。蘭子は、身構えて通話ボタンを押し、

子機を耳に当てる。


「私、メリーさん、今、あなたの……あれ?」


ここで、さっきから無言の蘭子が初めて口を開いた。


「ねえ、メリーさん、わたくし、今、貴女の後ろに居ますの」

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