第3話 修羅場?

 昼休み前の四時限目。

 数学の授業。

 出された課題をこなしていると、後ろからペンでつつかれる。


「んだよ、海成」


 あともう少しで解けるんだけど。


「お姉様、今日はお弁当ですの?」


「いや、食堂」


 毎時間と休みに話しかけられると結構この話し方も慣れるらしい。もうイラつくことも無くなった。


「なら、海成もお供しますの」


「はいはい」


 こいつといると飯が進まないから行く気は無いけど、可哀想だから返事だけはしてあげる。


「はーい、授業終わりー」


 そう言って担任かつ、数学担当の塩川先生が出ていく。


 と、思ったら引き返してきた。


「長峰、お前課題出してなかったな。職員室こい」


 後ろからガタンッと音がした直後、海成が叫び出す。


「バレたあァァァァ!!」


 おい、白井さんどこ行った。



 海成が職員室に連行されたので食堂に1人で向かっている。基本的にどこかへ行く時は海成も一緒なので一人は少し寂しい。


 寂しい?

 寂しくはないか。

 なんか俺軽くなった気がする。このままどこまでも行けそうだぜ!


「いたっ」


 考え事をしていたらすれ違った男子とぶつかってしまった。


「ごめん、大丈夫?」


 一個下の学年だろうか。身長は俺よりかなり低い。

 とりあえず起こしてあげようと手を伸ばすと、その手を叩かれる。


「触んなイケメン!!」


 急に暴言を吐かれた。いや、これは暴言なのかな、褒められてるのかもしれないな。だってイケメンって言われたし。


「ありがとう、君もかっこいいよ」


 俺にとってイケメンは最高の褒め言葉だ。褒められたなら褒め返さないとな。


「は?キモ」


 完全に軽蔑した目で見られる。


「まぁいいや、藤田涼って知ってる?」


「……はい?」


 まだこの学校に俺を知らない人がいたのか。驚きと情けなさで声が出ない。

 フッ、俺のイケメンもまだまだだな。


「俺が藤田涼だ」


 目の前の男子を圧倒するように見下して言う。


「んなわけねえだろ」


「……は?」


 あれぇ?俺が藤田涼なんだけどな、俺変なこと言ってる?


「あいつはお前みたいなイケメンじゃないんだよ!」


「……はい」


 ものすごい剣幕だな。


「いいから、本当のことを言え!」


 だから俺なのに。それよりなんで俺の事を探しているんだ?告白かな、男子からだけど。面倒くさくなりそうだし嘘つこう。


「あいつなら今教室いるぞ」


「ほんとうか!?」


 途端に笑顔になる彼。なんの用なんだろう。


 まあいっか。食堂行こ。


「ありがとなお前!」


 走り出そうとする彼。廊下は走っちゃダメだからな、と声だけかけて食堂へ向かおうとする。


「せーんぱいっ!食堂ですか?」


 前から悪魔(小さい)が来る。


「先輩この人は?」


 不思議そうな目を彼に向けている。


「んー……」


 説明に困る。

 ここで俺を探しているといえば彼に嘘をついたとバレてしまう。でも友達でもないしな。


 彼の方を見ると彼が彼女を睨んでいる。


「この人って失礼じゃないですかね?」


「えー、だって名前知りませんもーん」


 うわー、バチバチし始めた。女子同士の喧嘩ってほんとに怖いよね。男子の殴り合いの方がまだ怖くない。


 このまま喧嘩になっても嫌だし止めないとな。


「お前らそこらへんに……」


「風紀委員ですの!!」


 一番めんどくさいのが来た。


「喧嘩はおやめなさい」


「「は?」」


 2人に睨まれた海成がこっちを見てくる。

 やめろ、見るな。


「りょう〜」


 風紀委員の人はそんな事言わないぞ。一人で何とかしろ。俺は無視して食堂へと歩き出す。


 後ろでは、俺の事に気づいた男子と、俺と一緒にいたい後輩と、俺に助けを求めるバカが付いてきて話しかけるが、無視していくことに決めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺のラブコメは終わっている。 神無木メイ @MeiKannagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ