第2話 お友達(バカ)

 通学路を歩く。

 まだ早い時間のため同じ学校の人は少ない。

 そのため、知り合いがいた時はすぐに見つけられるし、会いたくない相手にもすぐに見つかってしまうだろう。


 例えば、朝からテンション爆上がりのバカとか。


「おっねえさまーーんっ!」


 後ろから不意打ちで抱きつかれる。これが美咲先輩や、かほなら情けない声が出てしまうところだがそれは無い。


 絡みついている手をほどきつつ、後ろにいる相手に声をかける。


「おい、海成。毎朝ハイテンションで絡むのはやめろ。疲れる」


 こいつは長峰海成。俺の知り合いで、とてもバカで、アホだがイケメン。

 俺が爽やかイケメンだとすると、こいつは子犬系とでも言ったところか。

 特に理由はないのに何故か俺に絡んでくる。


「そんなに、褒めないでくださいまし」


「褒めてないし、心読むな」


 デレデレしながら言う海成に、キレぎみに返す。


 こいつに関わるとまじで朝から疲れるんだよなぁ……。


このまま無視するのもあれだし、めんどくさいけど聞いてやるとするか。


「それで?今日はなんだ?」


 海成が目を見開いてこっちを見る。


「お姉様、海成のことをお忘れになったんですの?」


 このバカは厨二病を拗らせにこじらせて、自分の喋り方や関係性を既存のキャラに当てるという、厄介な特性を持つモンスターだ。


「モンスターだなんてそんなひどい事、言わないでくださいまし」


 だから心を読むな。


 あーだこーだ話していると教室に着く。


「おっはよー!」


 大きな声で教室に向かって挨拶すると、先に教室にいた女子と少しの男子からおはよーと返ってくる。


「お姉様、殿方からの人気はあまりないようですね」


「うるせぇ」


 実際俺の男子からの人気は少ない。なぜなら俺の好きだった人が好きなのが藤田だった、なんてことが多発しているからだ。


対する海成は男子も女子も人気がある。なぜなら俺の好きだった人が海成だった、なんてことはほぼないからだ。


Q、それは何故か

A、こいつがアホだから


まぁつまり、俺の男子人気は決して高くない。


 実際俺の後から来た男子からの挨拶はほとんどない。


 海成のごっこ遊びに付き合いっていると、前の扉が開く。


「はーい、おはよー。全員席に着けー」


 全員が先に着き、またいつも通りの一日が始まっていく。

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