ウイルス共生社会

詩た猫

目に見えぬ隣人と

 2020年。日本では久々にオリンピックの開催地として選ばれ、国中が盛り上がっていた。

 そんな中とあるウイルスによって世界は混乱の渦に巻き込まれた。

 そのウイルスは新型コロナと呼ばれ、老若男女問わずあらゆる人に感染し、社会システムの崩壊を巻き起こすほどだった。

 そんな恐ろしい目に見えない敵に当時のトップたちはついに勝つことは無かった。

 ウイルスが爆発的に感染した時から約120年が経ち、当時の混乱を直接体験した人は少なくなった。

 私のひいおじいちゃんも学生時代にコロナの影響で中々友人に会うこともできなかったんだ、と時々思い出話をしてくれる。

 そんな目に見えない敵に対して勝つことをあきらめた世界は敵を隣人として向かい入れることにした。コロナに限らずあらゆるウイルスを隣人と認識するようになったのだ。

 当時の世界では口と鼻を覆うようなマスクが使用されていてそれが足りないということで大変な問題になったそうだ。それの対抗策として地球に住む人類は国から顔全体を覆うヘルメットが配布された。マイシェルターという。

 このヘルメットは完全に顔を覆い隠し、中の人の表情が全く見えないという難点があり大変不評だった。とはいえそれが唯一顔を覆い隠せる者だから仕方なくみんなヘルメットをかぶってお家でのんびりしていたそうだ。

 このヘルメットが浸透していくとどこかの天才肌の馬鹿が「ヘルメットに表情を表示させればいいじゃん!」と考えてできたのが今に続くマイシェルターの原型で、ヘルメットの中にカメラがあって、表情を読み取るとディスプレイに顔文字として投影されるようになった。

 マイシェルターの評判は「近未来っぽいよねえ」というタレントのコメントで急上昇し、誰も文句を言わなくなった。むしろシェルターを有効活用する方法を模索し始めたのだ。

 ある人は内部にディスプレイをつけてそれを携帯電話代わりに、ある人は自分のパソコンと連動させて仕事やゲームを、とあるオタクは「リンクスタート!」というツイートを行った。

 シェルターの普及に応じて世界的にネット環境が急速に整備され当時の人々が22世紀の近未来なんて想像していたものがどんどんと現実ものになっていった。

 ちょうどこの時代を生きたおじいちゃんとおばあちゃんは「だーれもコロナを気にする人なんていなかったわ」「時々感染者が出て、運が悪ければ死んじまうぐらいの認識だったな」なんて言っていた。コロナに効く薬は今もなくって解熱剤とかで症状を緩和するしかないのは昔から変わらない点かな。

 コロナなんてちょっとヤバめの風邪ぐらいになったころには世界は劇的に変わったという。そもそも人は外に出なくなった。買い物は通販で宅配はドローン。運動は一家に一台ルームランナー。日光浴は家にデカい窓でも開けとけという感じだ。これは今でも同じ。どの家に行っても日当たりのいい部屋にデカい窓が開いている、マンションとかは共有スペースがそんな場所。

 色々昔から変わったらしいけど一番変わったのは働き方だとおじいちゃんが言っていた。

「(私)から見てひいひいおじいちゃんぐらいまでは毎日会社に出勤していたらしいけど儂らの時に外に働きに行くのは医者ぐらいじゃったな」

らしい。お父さんは普通に会社員だがシェルター越しにパソコンを操作して、どうしても外ですることがある時は小型のドローンを飛ばして作業をしている、らしい。詳しいことは教えてくれなかった。

 ここまでコロナが世界中に広がって今まで変わったことを話してきた。ここからは私の生活を話していこうと思う。

 高校生である私は実家の私室でこのようにレポートを書いたり、AI指導員によるカリキュラムに従って勉強を進めている。(レポートなのにこの緩さは怒られるかな?)

 私の家は一軒家で緑地帯の近くにある。緑地帯はもともとは車という乗り物の通り道だったらしく、今ではただの林だ。春先になると花が咲いていて結構綺麗。昔は花粉症というものがあったらしいが花粉はシェルターの中に入ってこないからよく分からないね。

 家からは昔「学校」という教育機関だった建物が見えるが今は食料生産工場になっている。あそこで作られた人工肉はドローンで飛んできて今日の食卓に並ぶだろう。


 「はあー。日向で書いてたら眠くなってきたー」

もうちょっと書きたいけど若干熱っぽいしあとででいいや。

「今日は何で遊ぼうかなー」

 

 新型コロナは社会を全く別の物にする破壊力を持っていたがそれに逆らわない生活を構築するのが進化なのかもしれない。

 「カッコつけて完了っと。提出提出ー」

―ゴホゴホ。

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