第56話 キャンプごっこ

 玄子くろこの屋敷の庭でキャンプごっこをすることになった。


「立派な日本家屋だなあ!庭も凄い!池があるぞ」

ジョンが大はしゃぎだった。


「古いばかりで不便な家なんだけど喜んでもらえて良かったわ」

 大和にある玄子くろこの家は近代化されていない伝統的な屋敷だった。


「このあたりにテントを張りましょう。トイレは、そこの縁側から入ってすぐの屋内のものを使ってね」


「女子は玄子くろこのところで風呂を借りるだろうから男子はうちの風呂な」


玄子くろこの家と杜夫もりおの家は隣同士だった。



 大きなテントを男女1つずつ張った。玄子くろこ杜夫もりおの私物だ。お揃いにした訳じゃないのに同じ型番の色違いだった。


 趣味の傾向がそっくりだし、この2人は気の合う友達になれると思う桜子たちだった。



玄子くろこ杜夫もりおも慣れているな」

「本当に手際がいいわね」


「もともとキャンプは趣味だから」

「俺も長い休みはいつも登山だからな」


「そうなのか」

「健康的で素晴らしい趣味ね」

 生暖かい気持ちで玄子くろこ杜夫もりおを見守る桜子たちだった。



「料理も俺たちでするんだろう?」

 ジョンが興奮してソワソワしている。


「ああキャンプといえば飯盒で飯を炊いてカレーだ」

「凝ったキャンプ飯のレシピ本がいろいろ出ているけど最初はやっぱり飯盒でカレーよね」


「食後は焚き火でマシュマロを炙るぞ」

「チョコレートとグラハムクラッカーも多めに用意してあるから」

「やった!俺の大好物だ」


 ジョンはアメリカ人らしくスモアが好きなんだなと思う桜子だった。桜子が思い描くアメリカ人は情報が古いと気づいて指摘する者は居なかった。


 カレーの具はニンジン、玉ねぎ、じゃがいも、牛肉だ。飯盒でご飯は多めに炊いた。ジョンも桜子も大食いだし桜子がコバたんに塩むすびを作るのだ。



「米が炊けたぞ」

「カレーも良い出来よ」

「いただきましょう!」


「さあ、どうぞ」

桜子が握った塩むすびに大喜びのコバたん。


「ッポ〜!」

 美味しく炊けているらしい。

テックンにはヒロが持参したレーズンバターを食べさせている。


「美味い!日本のカレーは美味いな」

「食べる量なら負けないわ」

桜子が参戦した。


 清と玄子とヒロと高雄と杜夫が1杯ずつ、真太郎が2杯、ジョンと桜子が3杯食べてカレーとご飯はきれいに無くなった。


「こうやって食べるといつも食べるカレーより美味いって感じるな!」

「真太郎ったら。カレーはいつだって美味しいのよ」

 いつでもなんでも美味しく食べる桜子だった。


「後片付けも終わったからマシュマロを焼こうぜ!」

「紅茶を淹れるわね」

杜夫もりお玄子くろこの息がぴったりだった。


「コバたんにもマシュマロを焼きましょうね」

「ポ!」

 串に刺したマシュマロを炙ってトロリとさせてからコバたんに渡すと上手に串を持ってマシュマロをつつく。


「可愛いな」

「上手に食べるのね」

 マシュマロを突くコバたんは可愛らしかった。


「俺たちも食おう」

 焚き火を囲んでマシュマロを表面が薄い茶色になるまで炙る。


「このくらい炙れば良いかしら?」

「桜子さんのマシュマロは頃合いね」


 グラハムクラッカーの上に小さく割った板チョコレートを置いて炙ったマシュマロを乗せたらグラハムクラッカーをもう一枚載せて挟む。


「熱々のマシュマロの熱でチョコレートが溶けて美味しいわ!」

「マシュマロの外はサクッとしてるのに中はとろっとして美味いな!」


「アメリカには美味しいものがあるのねえ」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。どっちかっていうとアメリカの飯はバカにされることの方が多いから」


「バカにするなんてとんでもないわ!大きなハンバーガーは憧れだし、ニューイングランド風やトマト味のマンハッタン風とバリエーション豊かなチャウダーも是非とも本場でいただいてみたいわ」


「そのうち一緒に行こう」

「ヒロと一緒に!?」

「桜子が食べたいものを全部食べてまわる旅行だ」

桜子の顔が大喜びだ。


「ニュージャージーにも寄ってくれよ!みんなに来てほしいよ、一緒に行ってみたい場所がたくさんあるんだ」

「俺はアメリカで釣りとサーフィンをやりたい」

「釣りはいいな」

高雄も楽しそうだ。

「それも良いな!みんなで楽しもう」


楽しい週末だった。

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