第21話 GWのお土産

 ゴールデンウィークが終わった。

そう遠くない領地の生徒は実家に帰っていたようだ。


「お土産のチチデスヨーグルトじゃ」

 広島県に相当する安芸領の跡取り息子である民生たみおが地元のヨーグルトをクラスメイトに配っている。


「クポー!」

白い食品が大好物のコバたんが大喜びだ。


「まあ!ありがとうございます。コバたんの分まで用意していただいてうれしいわ」

「うちの領地の会社の製品じゃ。なにしろ日本で初めてヨーグルトを発売した会社じゃけぇの」


「味自慢はもちろん、キャラクターのチチデス坊やも子どもから大人まで幅広い層に人気よね。わたくしも大好き!」

「ありがとの」

 グルメと評判の桜子に認められ、まんざらでもない民生たみおだった。


「私もよろしい?」

 ほんわかした雰囲気に割って入ったのは越後領の末っ子のいさ子だ。


「伝統では負けるれど、我が越後領のヤスダさんのヨーグルトも負けていませんわ。搾りたての牛乳にこだわって作られているの。良質なたんぱく質やビタミンA・B2、カルシウムなどの栄養素がたっぷり含まれてるのよ。さあ、どうぞ」

 チチデスヨーグルトを食べ終えたコバたんに飲むヨーグルトを差し出すいさ子。


「クポー!」

もちろん、コバたんは大喜びだ。

ご機嫌で味わい、あっという間に飲み干した。

「どうかしら?」


 白い紙を取りよせたコバたんが念写する。

味のあるフォントで『フレッシュな風味とヨーグルト特有の酸味がマッチしたまろやかなコクが美味い』と書いてあった。


「さすがコバたんちゃんね! 越後領特産の20世紀梨ヒントにした優しい甘味と、ヨーグルトの酸味がマッチしたまろやかなコクが自慢なのよ!」



「ぐぬぬ…コバたん! チチデスヨーグルトはどうか?」

 コバたんが白い紙に念写する。


 味のあるフォントで『原料本来の味が生きていて美味い。ヨーグルトに求めるものが詰まっている』と書いてある。


「さすがじゃのぉ。乳本来の美味しさとチチデス独自の乳酸菌ブレンドで、どこか懐かしい、チチデスならではの味わいを徹底追求しているんじゃ」


 ちゃっかり民生たみおといさ子からお代わりをもらってご機嫌なコバたんだった。



 桜子たちも昼休みのデザートに早速いただいている。

「チチデスヨーグルトは安定の美味しさだな」

「私はいさ子さんの領地の飲むヨーグルトも好き。まろやかで本当に美味しい」

きよが好きなら、いつでも買えるように常陸領に誘致すっぺ」

「ありがとう」


 民生たみおやいさ子の領地の産物が他領地に販路を広げるきっかけとなる出来事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る