第3話


「よしっ全員着席しましたね。それでは、私の自己紹介を始めます。皆んなの自己紹介は、入学式が終わった後に行います。それまでは、我慢しましょう」


眼鏡をかけた女教師はそう言って教室を隅々まで見渡した。


「私の名前は、羽賀 結衣(はが ゆい)です。皆んなの進路とか一緒に悩んだりして、夢とかを応援します。この1年間一緒に頑張りましょう。そして、早く高校生に慣れて下さいね。それじゃあ、廊下に出て列に並びましょう」


羽賀先生の合図で生徒達は、席を立ち廊下に出て行った。

青井は、隣の席の小萩君が立って廊下へ行くのを待ってから、席を立ち上がり廊下へ向かった。


青井は禿げと一緒が恥ずかしかったのである。

廊下へ向かうと新入生独特のお互いを見定めるような雰囲気が漂っていた。


入学式自体は問題もなく終わり、教室に戻ってきた。

教室に戻り自分の席に着くと、やはり隣には禿げが居た。


「入学式緊張しましたか?何だか朝は緊張している感じがあったので、少し心配してました。僕で良ければ相談乗りますので…なんでも言ってくださいね」


小萩君は頭を輝かせながら、青井に気を使っていた。


(何なのこの人。でも、今の私の一番の気掛かりなのはあなたってことは間違いないわ)


青井は作り笑いをして、

「あっはい。大丈夫です」

といい会話を切った。


小萩君はさらに何かを言おうとして感じだったが、羽賀先生が入ってきたので、小萩君は前を向いた。


「はいっそれでは、入学式も終わったことですし、今日は解散です。明日も元気に来てくださいね」


羽賀先生はそれだけを言うと、スタスタとドアの方は向かって行く。


皆んな突然の事に一瞬固まってしまう。

しかし、さっき小萩君のことを言った男子が先生を呼び止めた。


「先生皆んなが自己紹介する時間あるって言ってたじゃんか。忘れてるよー」


動きを一瞬止めると先生は生徒の方へ向きを変えて

「今日は入学式で終わりだ。先生の自己紹介は終わっている。お前らは時間あるんだから自主的に自己紹介をしておきなさい。先生は忙しい」

それだけ言うと再び身体の向きを扉の方へ変えた。


「そんなぁ、強制じゃないとやらない人がいるかもしんないじゃん。てゆーかやりづらい。」


「「そーだ。そーだ」」


ほぼ全員が先生に文句を言っていた。

流石に生徒にここまで言われるて困ったのか先生が少し黙っていた。


しかし、10秒ほどで顔を上げると、

「分かった。それなら、宿題にしよう。全員自己紹介を誰かしらとする事。これ以上お前らの一発自己紹介で決めてやろう願望には付き合えない。じゃあ皆んな気を付けて帰って下さい」

そういうと、扉を開けて教室の外へ出て行ってしまった。


(えっ何…入学式当日からのこの教師への失望感)

クラスの全員の胸の内には、この想いが強く刻み込まれた。


(で、ここからどうするよ私達…)


【青井 花(あおい はな)】不安だらけの入学初日である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ときめきポップコーン(シナモン味) ミンチステーキ! @ooseedgzzz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ