宴もたけなわ

 悪夢のような飲み会が始まって2時間半。そんな中、事件が起きる。


「ねぇ、さとるくん寝ちゃったよ」


「えっ、何飲ましたの!?」


 メリーさんの声に真っ先に反応したのは花子さん。当のさとるくんは机に突っ伏して寝ている。


「いや、途中からフルーツジュース飲んでたんだけど……」


「にしては、顔が赤いのだが」


 怪人アンサーも会話に入ってくる。確かに寝ているさとるくんの顔は真っ赤だ。

 怪人アンサーはさとるくんに近づき、口元の匂いを嗅ぐ。


「確かにフルーツのような匂いもするが、少々酒臭い。M'a bu飲んだくれじゃないか」


「でも、フルーツジュース飲んでたんじゃ──」


「あっ!!」


 口さけ女を遮ったのは、メニューを見ていた花子さんだ。


「メニューにフルーツジュースなんてない」


「「「えっ??」」」


 衝撃。

 じゃあ、さとるくんは一体何を──?

 全員が、頭を悩ませたときだった。


「あのー、人面犬さん。

 さとるくん、何頼んでました?」


 メリーさんが最も簡単な解法を出した。


「ああ、彼でしたらフルーツワインを」


「ワイン!?

 あ、ありがとうございます……」


 そう、ワイン。葡萄の果汁を発酵させたアルコール飲料。果実酒。フルーツワインだとアルコール度数は5~6%程度。


「さとるくん、下戸だものね……」


 そう呟いたのは口さけ女だ。

 今、メリーさん以外全員同じことを考えていた。


 ──どうやってさとるくんを家に帰そう。


 彼の家を知っているのはこの中だとメリーさんのみだ。ただし、2人で行かせるのは何かと不安だ。子ども2人。そしてこの2人だと完全にだ。

 かと言って、誰か付き添うとしよう。残念なことに花子さんと口さけ女はさとるくんたちの家とは反対方面。付き添いは必然的に怪人アンサーになる。そして、さとるくんの家に着いたら怪人アンサーとメリーさんの2人きりとなる。

 ここで問題です。夜、怪人アンサーのような格好のおじさんがコスプレまがいの幼女と歩いていたらどうなりますか。

 A,職務質問を受ける。


 詰んだ。


 誰もがそう思った。その時だった。


「さとるくん送ってきたー」


 入り口の方から花子さんの声が聞こえた。


「えっ、どうやって?」


「タクシーの運転手さんに住所伝えて、少し多めくらいにお金払っておいた。さとるくん起きちゃったから平気かなって」


 盲点。

 またも、1番簡単な解法を見つけたのはメリーさんだった。




 そのまま全員のテンションは低迷し、飲み会はお開きとなった。人間たちが街に出てきたら、また脅かそうと約束し合って。

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オフ会!都市伝説 叶本 翔 @Hemurokku

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