記録18 問題『妻』とは何か?
『妻』
今、フォルティの口から出たその単語。
さて、突然ですが、クイズです!
『妻』ってなんでしょう!?
勇者リザシオン君、回答をどうぞ!!
「妻、つま、ツナ・・・つまり、マグロの親戚か?」
あぁ、ツナかぁ!美味しいよね!ツナ缶とか便利だもんね!
しかし、残念だけど不正解!!
「妻って、まさか・・・」
リザシオンは不安になって、アガットの方を見る。
「ア、アガット!!『妻』って、まさか、伴侶の事か!?」
ギャーギャーと叫ぶ、化け猫や、蝙蝠などを相手にしていたアガットが、すごい形相で振り向く。
「はぁ?『妻』だとぉ!?伴侶とか、配偶者とかだろ?てか、突然、何を聞いてくるんだよ!?あ、化け猫!俺の腕を噛んだな!!」
リザシオンの顔は真っ青!!
「つ、つまり、フォルティはクローチェが好き・・・?つまり、フォルティは僕のライバルになったって事!?」
これは大事件だ!
「フォ、フォルティ!待ってくれっ!って・・・いない!?」
さっきまで隣にいたはずのフォルティが、いないではないか!
彼は何処に!?
「ちょっと、フォルティ!非戦闘要員のアンタが何で前に行ってるのよ!!私たちの援護はどうなったのよー!?」
ミーチェが骸骨兵たちの相手をしながら、勝手な行動をしているフォルティに呼び掛ける。
慌て、リザシオンも前のステージの方を見る。
そして、フォルティは・・・
「おやぁ?誰かに呼ばれた様な?いや、きっと気のせい、気のせい♪」
フォルティは自分に移動が速くなる魔法をかけて、すいすい~っと、魔族たちの間をすり抜けていく。
フォルティが向かうのはステージ。つまり、クローチェの元へ向かっているのだ。
「待て待て待て待てぇえい!フォルティーーー!頼むから、待ってくれっ!いや、行くな!ステージに行くなーーーー!」
リザシオンは叫ぶ!そして、追いかける!
そう、追いかけようとするのだが・・・
「わ、邪魔!あ~退いてくれ!うがっ!いてっ!す、進まない!あ~!波に流されるぅうう!?」
ぎゅうぎゅうの魔族たちにもみくちゃにされて、流されるリザシオン。
フォルティから、ステージから、遠ざかってしまう!
すいすいと魔族たちの間をすり抜けていくフォルティは、無事にステージに到着しちゃったのだ。
「よっと、到着~♪」
ひょいっとスポットライトで照らされているステージに飛び乗る。
そこには、あわあわとしているクローチェがいた。
「え!?えぇ!?これ、どうしよう!こんなぎゅうぎゅうで狭いと、自慢の斧が振れないよ~!!それに、勇者り~・・・リザルト?レトルト?いや、レトルトは明らかに違うな」
リザルトも違うけれど、相変わらず、勇者の名前を覚えていない、クローチェ。
困った事に、戦いたくても場所が狭い為、クローチェの自慢の大斧を振り回せないのだ。それに、攻撃対象である、勇者達が遠い!勇者リザシオンに至っては、魔族たちにもみくちゃにされて、見つけにくい!!勇者どこにいるの!?
そして、困った事に、クローチェの側にはいつの間にか、アイツがいたのだ。
「いやぁ、美しい人は、困り顔すら美しいね・・・それは~ま~さ~に~♪ダイヤモンドの~様に~ピッカピカのきらきらり~ん♪」
「え?」
クローチェの側には、変な歌を歌う池麺・・・じゃなくて、イケメンがいたのだ!!
そして、サッとクローチェの腰に手を!さらに、サラッとクローチェの空いている手を取る!
そして、クローチェをエスコートして踊る!!
「え?って、いやいやいやいや!?え、ナニコレ?てか、誰よ!貴方!?」
困惑のクローチェ。クローチェをエスコートする謎のイケメンは歌うように・・・いや、歌って答える。
「俺の~名前は~フォルティ~♪いつでも~愛を~歌う~♪吟遊詩人さ~♪」
くるくるっと回って、はい、決めポーズ。
「な~るほど~♪はっ!伝染してる!?」
クローチェも一緒に歌ってしまう!
そんな時、クローチェとフォルティの目が合う。
フォルティはにっこり笑った。
「ふふ、俺たち、息ぴったりだね」
何だか、遠くから「ぎゃあああ!フォルティやめろおぉ!」とか、聞こえるのはきっと、気のせいだろう。
でも、きっとこの寒気は、殺気は、気のせいじゃない。
クローチェは反射的にフォルティを突き飛ばして、うさぎみたいに飛び退いた。
その瞬間、カーンッとステージの上で固い物が落ちる音が響く。
クローチェとフォルティの間に落ちたのだ。
クローチェは息を飲んで魔王代理を見た。
(こ、これは、知っている!お母様が、お母様が!すごく怒ってる!!何で怒ってるのかわからないけど、これはヤバい!!)
クローチェは、心の中でヒィイ!と叫んだ。
クローチェとフォルティの間に落ちた物。
それは、魔王代理の美しい美脚だ。
いや、正確には、真っ赤な、ピンヒール。
この時ばかりは、クローチェには、ピンヒールが鋭利な刃物に見えた。
「あら、残念。吟遊詩人さんの腕を、踵落としでへし折ろうと思ったのに・・・本当に残念ね」
魔王代理は、そう言ってフッと微笑むと、フォルティを突き飛ばし飛び退いた、クローチェに近づく。
クローチェはガタガタに震えている。
「ぴぃいいい!?お、お母様!私、何かやっちゃいましたか!?」
魔王代理は、そっとクローチェを引き寄せて、抱きしめる。
ぎゅぅうっと、蛇が巻き付き、獲物を絞める様に、抱きしめる。
「怒ってないわよ?でも、そうねぇ・・・1つ言うなら、知らない人には、極力近づかない事ね。クローチェはもっと、周りをよく見ないといけないわねぇ」
魔王代理の視線は、フォルティに向いている。
幸運にも、クローチェが突き飛ばしてくれたお陰で、腕も命も無事だったフォルティ。
「ふふ、クローチェ。お母様が怒ってるのはね、クローチェじゃなくて、あの吟遊詩人さんなのよ」
魔王代理は、抱きしめていたクローチェを解放し、フォルティに近づく。
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