第35話 魔王軍120億が現る

 空その物が真っ黒になっていく、

 そこから巨大な闇色の破滅のブレスをこちらに叩きこもうとしている。

 最初はサタンドラゴンに向けていたブレスも、

 先程からむかつく俺様の方に切り替えている。

 俺様達は覚悟を決める。


「あの破滅のブレスを食らったらリュウケンでも死ぬわよ」

「安心しろサリィー」


「安心出来ないわよ、速くそこから逃げなさいよ、あんたが死んだらあたしは」

「逃げられないんだ、俺様達の後ろにはミリーシャ王国があるから、あそこに破滅のブレスが直撃すれば沢山人は死ぬ」


「あんな国なんか放って置けば良いじゃない、奴隷を作るような国なんて」

「サリィー僕は思うんだ。奴隷が必要だったのも貧しさのせいだ。貧しさがなくなれば奴隷は生まれない、そして国王たちの意識を改善して貰えば、すべては解決」


「だからってリュウケンが死んでいい訳」

「誰が死ぬって? ようは生き残ればいいんだよ」


 場の雰囲気が凍り付いた。

 破滅竜はにやりと口の端を釣り上げた。


 それは僕からの目でも見えた。

 破滅のブレスがこちらに放たれた。

 そこにいるのは僕と勇者と冥王と玄武と玲子だった。


「みんな死なない覚悟はあるな」

【おう】


 その場の全員が頷く、

 七つの大罪達のモンスター化した仲間達はこちらを唖然と見ている。

 破滅のブレスがこっちにまっすぐに飛来してくる。

 それを食らったらきっと破滅するのだろう、

 破滅の種類は色々とあるだろうけど、

 

 俺様は死ぬつもりなんてない、

 僕が俺様のように、俺様は僕なのだ。


 2人いる訳じゃなくて、1人なのだ。

 1人で2人なのだ。


 意味が分からないけど、


「また同時に発動すればいいのだ」


 僕は冷静沈着に破滅のブレスを見る。

 俺様はドラゴンキラーソードを構える。

 剣術なんてちゃんと学んでいない。

 それでもレベルが12000あるおかげである程度の攻撃方法は分かる。


 隣には冥王と勇者がいる。

 冥王がこちらを見てにかりと笑うと、

 僕の背中の後ろに隠れた訳ではない、

 僕のドラゴンキラーソードに魔力を提供し始める。

 勇者と冥王と玄武と玲子が僕の後ろに隠れる訳ではなく、魔力を提供する。

 ここで僕が死ねば、きっと仲間達も死ぬのだから、


 冥王は僕の体に【ダークゾネス】という闇の塊を出現させ、

 それを俺様の体に覆うようにする。

 するとその覆う様な闇の塊がドラゴンキラーソードに付与されていく、

 玄武は【伝説魔法】に水色のオーラを付与してくれる。

 勇者も【勇者魔法】に強化してくれて、玲子も僕の体に頑丈さを強める超能力を付与してくれる。


 沢山の仲間達の願いを受けて、


 俺様はドラゴンキラーソードを振り落とした。

 破滅のブレスが真っ二つに別れる訳ではなく、

 そこで消滅してしまう、

 斬撃はそのまま飛び続け、

 破滅竜の右目を両断した。



 破滅竜は断末摩を上げると、

 右目が消滅している。

 頭にまで届く事はせず、

 破滅竜は地面に墜落する。

 それでも立ち上がろうとする。


 そしてその時全ての計算が崩れる事が巻き起こる。

 破滅竜の後ろから沢山の、それも数えきれないモンスター達が出現する。

 最初は数千であった。しかしどんどんと膨れ上がり1万になり、


 それでも空を覆うが如く、10万になり、

 さらに増え続け、1億になり、

 まだまだ増え続けて行く、

 僕たちは絶望に打ちひしがれる。

 どうやらここは魔王軍がいる山の近くであり、

 その近くで暴れるものだから、彼等が異変に気付いたのだろう、


 ようは僕達が魔王軍に侵略を開始したと勘違いされたのだろう。


 僕は冷や汗を掻きながら、

 そこに集まった120億体の魔王軍を見据えていたのだから。


 破滅竜は地面で横たわり意識を失っているようだ。

 破滅竜は力を使い果たすと小さくなるようで、

 まるで犬くらいの大きさの真っ黒い子竜になっている。

 なぜか憤怒のサリィーが人間の姿になると、彼を背負ってこっちに走ってくる。

 その後ろからは120億体のモンスター達が追いかけてくる。

 他の七つの大罪達も本気で戦った事により魔力切れを起こしているようだ。

 後体力そのものも枯渇してきている。


 俺様と勇者と冥王と玄武と玲子だけが戦える状態なのだが、

 先程の俺様への付与により100パーセントではなさそうだ。


「七つの大罪達は城に知らせに行ってくれ、もう国を守るとか言ってないで、逃げろってな」

「それは御姉さまであるこのおいらに任せて頂こうか、みんなも付いてくるように、今のあなた達ではリュウケン殿の足手まといになるわよ」


【はいですわお姉さま】



 七つの大罪皆が頷いていた。



「ついに彼らの出番だ」


 僕はモンスターボックスを解放した。

 その中からやってくるモンスターたちの数は相当な数なのだ。

 しかし120億体には負ける。


 1体でも多く敵を倒してくれる仲間のモンスターがいれば、百人力だ。


 一番最初に出現したのはキャプテンという名前のクリエイトゴミスライムだ。

 ゴブリンソルジャーのコーブ

 ブラッドスライムのリール

 ボスバチのメイヴ

 トレトレントのボンサイ

 スピードグリフォンのワシル

 エンペラードラゴンとクイーンズドラゴンのシェイガとシュリフォ

 ハイマンティコアのスコーピ

 生死神のデスサイズ

 ラットナイトのネズ公

 メガモグラのアスン

 ギガドンベアーのクマサン。


 そして彼らの配下達が次から次へとモンスターボックスから出現する。

 

 ゴブリンが99体

 ノーマルスライムが499体

 ロックビーが99体

 ノーマルトレントが299体

 グリフォンが49体

 マンティコアが49体

 ビッグラットが999体

 フォトンモグラが499体

 キラーベアが9体。


 その大群のモンスターに、

 冥王と玄武が仰天してモンスター達を見ている。

 そして冥王はある事に気付いていた。


「そ、そのモンスターボックス」


「便利なんだ沢山のモンスターをモンスターボックスに入れる事が出来るんだけど」

「そ、その数字は」

「これ? なにかのおしゃれでしょ」

「それ修行効果100倍です」

「はい、え、えーと、どゆこと?」


「それはキャプテンが教えます」


 クリエイトゴミスライムが述べるには、


「モンスターボックスでの修行効果が100倍されるので、皆さん最強です」

「はい、えーと」


「だからここにいるモンスターは1体ずつレベルが10000万を超えています」


 その場が凍り付く、

 俺様は何も知らないのに知っているふりをして、


「ふ、その為にモンスターボックスに入れていたのだ」


(あれ、絶対気づいてないよ)

(だよな、玄武もそう思う?)

(勇者として恐ろしいのだが)

(超能力で鑑定したけど凄い事になってるよ)


【これなら勝てる!】


 その場の全員が想ったはず。


 単なるノーマルスライムですらレベルが10000万あるのだから、

 俺様は僕になりながら、くふふと笑って見せる。


「まったく気づかなかった」


 その場の全員に聞こえなかったそうだ。

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