4話目

翌日


やはりどうしても昨日のことが気がかりだった


どうして意識をなくし

気がつけば目の前に死体が2つ

見るも無残な状態で目の前にあったのか


後ろから襲われたところを

あの2人が命懸けで助けてくれたのか


それとも、自分が殺したのか


「……………ッ!」


どう考えても前者ではない、

そんな確信があった


(なら何故俺が2人を殺した……

恨みがあった…違う

誰かの仇討ち…違、?

2人に襲われた…違っ…)


分からなくなった

考えれば考えるほど

頭の中に霧がかかる


(……グ…?………サン……………??)


一瞬誰かが誰かの名前を呼んだ


そんな気がした、自分の名前ではない

しかし懐かしい感じがする


「…ミア………ネ…………様?……」


今度は聞き覚えのある声

自分の名前だ、誰だ、声の主は誰だ…


「さまぁ?!」


「ハッ!」

大きな声に反応して

辺りを見回す

そこには見覚えのある2人がいた


「ちょっとちょっと、

無視なんて酷くないですかぁ?

ほんとありえないんですがぁ!

ねぇ酷いよね、ミツ!」


「あんまり責めるものではありませんよフヤ

ですがぼーっとなさって

どこか悪いのですか?」


「あぁ…いや、なんていうかな

考え事をしちまって…」


「えっ、似合わない…」


「おいおい俺だって考え事の2つや3つくらい

するんだがなぁ…そんなに似合わないか?」


「うん、本当に似合わない

どのくらいかってーと

魚が陸で生きてるくらい有り得ない!」


「確かに魚は水の中じゃないと生きられ…

結構マジでありえないやつじゃねぇか!」


「いくらなんでも言い過ぎですよ?

少し控えなさい、そういうことは。」


「はっ、ヤダねぇ…

おツムが硬ぇ野郎はよぉ…」


「フヤ、それ以上言うなら森に

沈めますよ…?」


「ヒッ!」


それはまぁ恐ろしい顔をしていたとな


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アーリア・ラスが

川から流れてきて4日目


動き出す気配すらなかった


今は瞼を閉じている


と、いうのも

「流石に瞼あげっぱってのもアレだな

目ん中乾燥しちまうな」


そういうことにより瞼は閉じている状態だ


そして、(いつ目覚めてもいいように)と

フヤとミツがいつも世話をしている


チヌマという水やお湯、そして火にもに強く

保温が効く大木を使い簡易的な風呂を

作り、その中で体を洗い湯に浮かべ


1日4食、栄養価が高く

消化のしやすい木の実や果実などを食べさせ


髪切りをしたり、着替えさせたりと


至れり尽くせりなのだが

やはりどれをしていても

反応はなく、動かず


生きている人の世話をしている気がしなかった


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その頃、ヒナガとモナガの帰りを

心待ちにしていた国の長は

いくらなんでも帰りが遅い、と

苛立ちを隠しきれずにいた


挙句の果て新たに3人の調査人を送ることとなった


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それから数日後、ネスタミアは

フヤとミツから集落の長から呼ばれていると報告を受けた


おそらくはアーリアについての話なのだろうと

察しはついてはいた


「ネスタミア様、アーリア様をいががいたしましょう

連れていかれますか?ここに残されますか?」


「そこなんだがな…ちょっと迷っててな…

なあ、2人ともどうしたらいいと思う?」


「うーん…もう連れていっちゃおうよ!」


「私もその方がいいかと思います

留守の間に何が起こるかわからないですから。」


「おっ、そっか!じゃあそうするわ!」


「フフン、

ではこの私があなた方よりも優秀である

この私が!

このミツが

責任をもって

お運び致しますよぉ!」


「あっ、そっか!じゃあ頼むわ!」


「ええ、ええ!ミツの名にかけて!

安定かつ迅速に!お運び致しもぅ………」


「ささっ、ネス様

ここはミツに任せて

私たちは先に向かお〜!」


「そうだな、先に行くとすっか!」


「ごめんなさい!謝りますからぁ!

見栄を張ったのはあやまりますからぁ!

ちょっとした出来心なんですぅ!」


「はぁ…変な所で人を煽るから……」


「お前って結構お茶目なとこあんのな

意外だったわ」


「わ、私だってたまには……

真面目を辞めたい時だってあるんですぅ!」


「まぁ、人間何事も溜めすぎないってな

我慢は良くないぞ」


「まぁ…程々に……します………」


「ははははは!可愛いなお前!」


「なっ、ま、あっ…えっ………

もう!からかわないでください!」


「うんうん、わかりますわかります

もう最初っから最後までそのキャラで

いけばいいのに、勿体ない……」


「フヤまで…もうやめてくださいったら!」


「っと、そろそろ行くぞ〜

早くしないと長に怒られちまう」


「は~い」

「はい、ではアーリアをよろしくお願いします

ネスタミア様」


「あいよっ、任せとけって!」


そうしてネスタミアがアーリアを背負い

フヤ、ミツは少し幼げに

クルクルと回ったり

木の実を拾ったりしながら

集落へと向かって行った


まるで父親と娘が

家に帰るように。

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