第44話 幼馴染の家に訪問
えーっと……電話帳……のところを押して、次は詩織さん……のところを押して、電話っと。
プルプルプル……プルプルプル……。
カチャ。
「もしもし……。」
「あ……もしもし、詩織さん。」
「あ、日陰くんですか。どうかしたんですか?もしかして、また日向の愚痴をしに来ましたか?」
「いやいや、今日は幼馴染の家に行くことになったんです。ここに転校してきたみたいで。」
「おっ、感動の再会ですか?そして、恋の始まりですか?」
「いやいや、普通に久しぶりだからってだけなんで。あとその幼馴染のお母さんにも昔、お世話になっていたんですよ。だから、挨拶くらいはしておかないといけないでしょう。」
「そうですね。じゃあ、私の方からご主人様に言っておきます。また、できるときでいいんで愚痴に付き合ってくださいね。」
「分かりましたよ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
よしっ、これで一応遅れてしまっても大丈夫だな。でも、とりあえずは早めに帰ることにしよう。
「じゃあ、凛。行こ……う……?」
そろそろ電話が終わったことを知らせて、家の中に入ろうと凛に言おうとして凛の方を見てると、なにか不機嫌そうだった。
「えーっと……なに……?」
「あの、さっき話していた人って女性だったよね……。きれいな声だね……。しかも、付き合うとかなんとか言っていたよね……。それに、ご主人様とかなんとか言っていたよね……。やっぱり付き合っている人いたんだ……。」
ん……?これは、どうしてこうなっているんだ?まったく情報がないからこの……なんていうか……まぁ、話の内容みたいなものが掴めないんだけど。
「いやいや、別に付き合っていないよ。詩織さんは別に僕のバイトの先輩だし。」
うんうん、ちゃんと間違っていることは言っていないよね!
「好きじゃないの?」
「いやいや、まぁ友達としては好きだけど、女性としては好きではないね。」
まぁ、嫌いでもないけど。それに、好きか嫌いかで言えば好きではあるんだけどね……。
でも、そう女の子に……っていうか凛に……直接いうのは少し恥ずかしかったからやめておいた。
「それで、ご主人様とかは……?」
「あ、えーっと……いつか話す。」
「…………まぁ、分かったよ。でも、いつかはちゃんと教えてね。」
「うん。」
「あら、話し終わったの……?」
うん……?
凛とは違う声が家の方から聞こえてきたので見てみると、そこには凛のお母さんがいた。
話しすぎたということで、気づかれてしまったのだろう。
「あ、お久しぶりです。お母さん。」
「本当にね。それにしても、すごい大人っぽくなっているじゃん。やっぱりひとり暮らししたからなの?」
「え、お母さん、日陰がひとり暮らしをしていること知っているの?……なら、日陰がここに引越していたことも?」
「えぇ、そうよ。だって、日陰くんのお母さんとは連絡先を交換しているんですから。」
そういえば……。僕は交換してい無かったから知らないとばかり思っていたよ。
「それで、さぁさぁ。玄関でずっと話すっていうのもなんだし、とりあえず家の中に入ったら……?」
「あ、じゃあお邪魔します。」
「どうぞ、どうぞ。」
そして、凛の……っていうか、まぁ小柳家のだけれど、家に入った。
「わぁ……!きれいですね。壁とか床とか。あと、ファッションっていうか、まぁその……そんな感じの空間みたいなものも。僕の昔住んでいたアパートととは大違いですよ。」
「ありがとう、まぁ、引越しをしたばっかりだからだけどね。でも……昔?」
ん……?
「あ、いやいや。別に違いますよ、違います!!今、住んでいるアパートのことですね。」
「……そうよね。」
「はい、そうですそうです!」
あぶねー……。
そして、凛やお母さんと一緒に昔の話をしたり、それに凛が引っ越してからのとか、僕が引っ越してからのとかの出来事を話し合った。
「あ、もう6時ですか。すみません、結構ここに居座っちゃって……。」
「いやいや、大丈夫。っていうか、むしろありがとうって言いたいよ。だって、久しぶりに日陰くんと話せたんだから。」
「すうよ、私も久しぶりに日陰と話せて嬉しかったよ。」
「……ちなみに言うと、僕もだね……。じゃあ、また。」
「はい、バイバーイ。」
「ちょっと暗くなってきた頃だから、早めに急いでアパート……?に帰ったほうがいいよ。」
「あ、はい。」
そして、僕はこの小柳家の家を出て、コンビニでプリンを買うと、水谷家の豪邸へ帰っていくのであった。
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