第43話 転校生は幼馴染だった 2

 学校も終わり、放課後となった。


 いつものように、地味にくらしていきたいのに……。静かに学校生活というものを楽しんでいきたいのに……。


 今日は、すごい僕に居場所はない!って彩人以外の男子から言われているような気がした。


 まぁ、実際には言われてはいないんだけど、そんな目をしていたという方が正しいのかな……?


「ねえねえ、日陰ー。」


 そんなことを考えながら、下校するための用意をしていると、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。


「な……凛か。なに?」


「一緒に帰らない?私の家、あの水谷家とかなんとかの豪邸に行くちょっと手前のところなんだけど、日陰はどっち方面なの?」


「えーっと……僕も、そっち方面……ではあるね……。」


 その方面というよりも、僕が住んでいるところはそこなんだけどね。


 ちょっと手前ってことは、僕がここに住んでいるっていうことはバレなさそうだし。でも……意外と近いんだね……。


「じゃあ、一緒に帰ろ?」


「あ、うん。分かったよ。」


 そして、荷物を少しグチャグチャではあるけどカバンに詰め込んで下校する。


「自己紹介のときも言ったけど、久しぶりだね。」


「うん。」


「それにしても、日陰も引っ越ししていたんだね。私、ここに引っ越すことになって、日陰がいないと思っていたから、すごい嬉しかったんだよ。」


「そうなんだね。」


「今、ひとり暮らし?」


 ……どうしよう。どうやって答えるのが正解なんだろうか。


 まず、とりあえず家族と住んでいるって言ったらどうなるだろう?……それだったら、家に遊びに来たときとかに、いつか必ず嘘がバレるよね。


 じゃあ、ひとり暮らし。……これも、なら料理作ってあげよっか?とか、それなら遊びに行っても大丈夫だね!とか言って嘘がバレそう……。


 正直に言う……?いやいやいや、これこそだめだよね。おばあちゃんやおじいちゃん、日向や執事さんに、メイドまで全員に迷惑をかけちゃう……。


 なら……この中で、1番迷惑がかからないのはどれ?……やっぱり、ひとり暮らしかな……?


「もしかして、誰かと一緒に住んでいるの?恋人とか?」


「いやいやいや違うよ、違うからね!?ひとり暮らしだよ、ひとり暮らし。それに、恋人とかいないから。」


「そうなんだ……!」


 僕がそう言うと、なにか凛は嬉しそうな顔をして笑っていた。多分、恋人がいないと言って、まだ恋人いないの?的な感じだろうか?


「ん……?もしかして、僕が恋人といないから、それが面白くて笑っているの?」


「いやいや、違うからね。別に恋人がいなくて私がなれるから嬉しかっただけ………じゃなくて、そうじゃなくて、………もう、なんでもない!」


「ふふっ……!」


 やっぱり面白いよね、凛は。僕のセリフというか、……まぁ、言ったことに対して、ノリツッコミしてくれるんだから。


「あ、私の家ここなんだよ。遊びに来る?今、お父さんは仕事でいないんだけど、お母さんはいると思うから。久しぶりに挨拶しない?」


「うーん……どうしようかな……?」


 日向の手伝いとか……それに、今はまだ微熱なんだし、早めに帰ったほうがいいんだよね……。


「お母さんはここにいないと思っているんだし、ドッキリとかしちゃう?」


 でも、凛のお母さんには結構世話になったりしているんだよね。でも……まぁ、早めに帰ったらいいか。とりあえず、友達の家に行くことを連絡するか。


「分かったよ。だけど、ちょっと待ってて。凛の家行くって連絡しておかないといけないから。」


「……ん、連絡……?もしかして、やっぱり誰かと一緒に住んでいるの?」


 やべっ、それを考えるのを忘れてた。そりゃそうだよね……。連絡するって言ったら水谷家でとはいかないものも、疑われるよね……。


 どうしようか……?


「そ、そうだ。あの……バイトをしているんだよ。それで、そのバイトは今日のこれからあって……だから、ちょっと遅れるっていうのを連絡するん……だよ。」


 まぁ、これはちょっと正しいのかは分からないけど、間違っているわけでもないよね。


「あっ……。そうか、ひとり暮らしなんだもんね。それでお金が足りなくなるんだもんね。」


「う、うん……。」


「それなら、私がいろいろ手伝ってあげるから、たまにここに来てね?それで、今はどうするの?やっぱりやめにしよっか……。ごめん……。私の考えばっかり押し付けて……。」


「いやいや、大丈夫、大丈夫だよ。本当に。別に急ぐ用でもないと思うし……。」


「そう……?」


「うん、もちろんだから。」


「よしっ、じゃあ行こうよ。」


「うん、その前に一応電話だけさせてね。」


「あ、そうだった。ごめん。じゃあ、できるだけ早めにしてね。私、ここで待ってるから。」


「うん……?まぁ、わかった。」


 なんで待っているのかはちょっと分からないけど、僕はスマートフォンから電話アプリを開き、メイドさんに電話した。







 


【番外編 電話帳の中】

【お母さん、お父さん、妹、日向のおばあちゃん、日向のおじいちゃん、詩織さん(あの、初仕事のときにお風呂に入らせてもらうように頼んだメイドさんのこと)】

【メモ 最近は詩織さんにあの日向の手伝いの大変さとか愚痴とか話したりしてました。その詩織さんと仲良くなりました。最近、暇なときにその詩織さんと話すのが趣味です……。あと、なにか用事があったときは詩織さんに電話するといいと言われていたので、電話するのはおばあちゃんよりも、詩織さんのほうが多いです。】

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