第41話 日向の熱の看病を 2

 学校も終わり、下校中だ。


 今は、とぼとぼとひとりで寂しく……って思ってしまうとなおさら寂しく感じてしまうので、そう思うのはすぐにやめた。


 学校の中では、テストの休憩時間に彩人や、佐藤先生からなにか元気がない?、とか、どうした?なにかあったのか?、とか、色々言われたので、結構顔がひどい状態なのだろう。


「はぁ……。そうだ。何か買ってあげたほうがいいのかな?それとも、なにかメイドさんがもう買っているんだろうかな?」


 ……まぁ、メイドさんのことだから、買ってあるんだろうけど、もしかしたらってことがあるかもしれないし。


 でも、ないよりはあったほうがいいよね。


「それにしても……看病のときって、何を持っていけばいいんだろう?」


 そして、スマートフォンを取り出して、看病のときに持っていくといいものとかを検索する。


「えーっと……食べ物だったら……。」


 消化がいいやつと、体をあたためるものと、すぐエネルギーになるものと、あと……栄養と水分を同時に補給できるもの……か。


 それで、それを満たしたっていうか、おすすめのメニューなのはうどん・おかゆ・スープ・プリン・ゼリー・茶碗蒸し・バナナなど……。


 へぇー……。じゃあ、コンビニで売っているやつがいいし、ゼリーでいいかな?


 そして、コンビニでゼリーを買った後に、水谷家に帰ってきた。


「あ、おかえりなさい。」


「ただいまです。あ、ちゃんと日向の分の紙も持ってきましたよ。あと、ゼリーも買ったんですが。」


「ありがとう。そうだ、日向、少し良くなって、今寝ているわ。」


「そうなんですね。あとで向かいます。」


 良かったー。


 手洗いうがいを済ますと、すぐに日向のところに向かった。


 コンコンッ


 …………。


 そうだった。さっき、おばあちゃんから日向が寝ているって言っていたのに。なんか、恥ずかしい……。


「失礼します……。」


 起こすわけにはいかないと思い、小さく声をかける。


 その後に、日向が寝ているベッドの横にある小さな戸棚の上にゼリーを置いて、ベッドの横にある椅子に座る。


 可愛い……。


 ゴホンゴホンッ。


 なんで、こんなときにそんなことを考えているんだよッ!今は日向が苦しいときなのにッ!


 でも、こんなに寝顔を見たのは初めてかも……。


 ゴホンゴホンッ。


 あれ、僕の方も風邪になっちゃったのかな……?


 ……ハァ……。でも、大丈夫かな?


 僕は、この一人きり……っていう訳でもないけど、目が覚めて意識がある人は一人なので、少し寂しい。


 そして、罪悪感もある。


 でも、それを勘付かれたくはない。そのために、僕は誤魔化す。


 そして、その結果、こんな状況……っていうか、茶番をしていた。


「うぅ……。」


 起きたのだろうか?僕は、そう思って日向の寝顔を確認してみる。


「日向……?」


「あ、おはよう……。」


「大丈夫……?苦しかったりする?」


「いや、今は大丈夫。なんとか落ち着いているよ。」


「そうなんだ、良かったよ。そうだ、ゼリー買ってきたんだけど食べる?」


「あ、うん。ありがとね。」


「はい、どうぞ。」


「ねぇ、食べさせてくれない?今落ち着いたとはいえ、あんまり動きたくないんだよね……。」


「えー……。」


 でも、嫌だからとはいえ、僕は少し日向が熱になってしまったことに責任感を感じていた。


 だから、僕は少しでも罪悪感が勝手な考えだけど消えると思い、ちゃんと日向の言うことを聞くことにした。


「分かったよ。」


「ありがとう。」


「はい、あーん。」


 あーん、となんとなく口にしてから思ったことがある。


 恥ずかしい。すげー恥ずかしい。


「……あむ。」


 そして、ちょっとなぜか熱で顔が赤い日向とは別に、違う意味で顔が赤くなるぼくだった。


 その後も、あーん。を繰り返してなんとか日向が食べ終わった。


「……ねぇ、もしかしてなんだけど、私が熱になったのを自分のせいって思っていたりする?」


 2人ともがなにも話さなくて、少しきついような感じになっていると、日向がそれを崩すように話しかけてきた。


「……まぁ。」


「それなら、違うからね。」


「でも……。」


「私が勝手にやって私が勝手になっただけなんだから。」


「うーん………?」


「納得できないっていうのなら、罰ゲームだよ。それで、一緒にまたどっかに遊びに行こうよ。」


「……そうだね。ありがとう。」


 すごい解決方法だな、と思ってしまった。ソて、それと同時に日向はやっぱり僕の憧れだな、ともね。


「おー。そうだ、夏休みに私の……って訳でもないんだけど、水谷家がもっている別荘に行かない?」


「べ、別荘……。まぁ、いいんならありがたい。」


 僕は、僕の無駄に大きい責任感と、罪悪感をはらってくれた日向に感謝しながら、出かけるところについて話し続けていた。


 それに、これは、この時かもしれない。僕の中に新しく、日向に対してなにかよく分からない、初めて感じた想いが芽生えていたのは。


 でも、それがなんなのかに僕が気づくのは、まだまだ先のこと。

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