第40話 日向の熱の看病を 1

「うぅ……。」


 あ……そうか。今日は、待ちに待った……っていうのも何なんだけど、中間考査の当日か。


 僕は、目を覚ますと軽く目をこすり、学校の準備を始める前に、日向を起こすことにした。


 なぜそうしたのかはよく分からない。


 なんとなく、意気込みっていうか……そんな感じのことを聞いてみたかったのだろうか?


 コンコンッ


「日向、起きているの?」


 やっぱり、いつものように返事はないか。まぁ、昨日は張り切って、勉強会が終わっても頑張ろうとしてい……。


 ん?


 今、なにかどこからか小さく声が聞こえたような……?


 気になって、周りを見渡してみても、誰もいなかった。そして、もう一度耳を澄ませてみると、声が聞こえてきた。


 それは、日向の部屋の方からだ。


 なにかな?もしかしてだけど、もう起きてきたり……?


「ハァ……ハァ……。」


 ん?なにか、声がなにかいつも比べておかしいような……。え……。もしかして体調が……。


「大丈夫か!」


 僕は、その焦りから、勢いよく扉を開けて日向が寝ているベッドに向かった。


 日向の様子を見てみると、顔がかなりあつくて、すごく体調が悪そうだった。


 おでこの部分に触れてみても、そのおでこの色のとおりにとってもあつくて、僕がそうなっていたと思うと、よく日向は耐えられているな、と思うほどであった。


「大丈夫……?いや、こんな状態で大丈夫なわけはないよな。」


「ハァ……ハァ……。」


「とりあえず、おばあちゃんを呼んでくるよ!それまで、我慢していてくれ。」


 急いで1階に駆け下りると、おばあちゃんがいるであろう食堂に向かった。


「あら、おはよう。はやかっ……ど、どうしたの?そんなに慌てて。なにかあったの?」


「あの……日向が、なにか大変そうで、熱できつそうで……。来てほしいんです!」


「わ、わかったわ。」


 そして、ふたりで、今度はおばあちゃんと一緒なので小走りで日向の部屋に向かっていった。


「大丈夫かい?日向。……これは、大変そうだ。小夜くん。メイドを呼んできてくれないかい。」


「は、はい。」


「メイドは、全員看病できるはずだから。なにか、いろいろと解決方法を知っているかもしれないし。」


「分かりました。」


 こんな感じになったのは初めてだと思う。

 僕が熱のときは、それほど焦ることなんてなかったのに。


 それに、家族のときもこれと同じくらい慌てはしたけど、それとはなにか違うような気がする。


 そして、歩いていたメイドさんに声をかける。


「すみません。」


「あ、はい。どうされましたか?」


「あの、日向……さんが、あの、熱のようで、おばあちゃんに呼んでと言われてですね、それで……。」


「はい、分かりました。では、今から向かいます。」


 メイドさんに何をすればいいのかを伝えてはいなかったが、僕が何を言っているのかは伝わったようだった。


「ありがとうございます。」


「いえ。」


 そして、僕は少し小走りぎみでろうかを進むメイドについていった。


 そして、今日だけで3度目の日向の部屋だ。


「大丈夫ですか?」


「あぁ、メイドか。すまないんだけど、日向の容態を見てほしいんだけど……。」


「分かりました。」


 そして、メイドさんの判定……じゃなくて、まぁそうではあるんだけど。で、日向の容態は、風邪らしい。


 良かった……。なにか、すごい病気だったら、前日に勉強をするのを止めなかった僕の責任に……せき、にん、に…………。


 ……もしかしてだけど、日向が風邪をひいてしまった原因というのは、僕のせいなんだろうか。


 そんなふうに考えていると、おばあちゃんがそんな僕の様子に気づいたようで、声をかけてきた。


「ねぇ、小夜くん。勉強会のせいとか、いろいろと思っているみたいなんだけど、別に小夜くんのせいではないよ。」


「……でも。昨日、日向は勉強会が終わっても、勉強を続けると言っていたんです。それを止めなかったのは……。」


「いやいや、それは違うよ。それどころか、感謝しているんだから。」


「……感謝……?」


 僕の責任なのに、こんな僕のどこに感謝できるということがあるんだろうか?


「あぁ。日向は、前まではこんなに自分から勉強をしようとしていたのは、初めてなんだよ。」


「…………。」


「それに、この原因は、小夜くんが原因じゃなくて、勉強を続けようとしてこうなったんだから、日向が原因だよ。」


「いや……。」


「それで、そんな原因ばかり言っていても、もう過去は変えられないんだよ。だから、小夜くんは、これからのことを考えればいいんだよ。」


「……分かりました。それでなんですが、僕も看病をしてもいいですか……?」


「学校は、どうするのかい……?」


「それは……。」


「休むのはだめだよ。そしたら、日向の分のお知らせの紙とかもらってこられなくなるよ。」


「……分かりました。……じゃあ、行ってきます。」


 そして、僕はまだ少し罪悪感が残りながらも学校へ向かっていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る