第38話 中間考査対策 1
「……夏休みもどこか遊びに行ったりしようかな?」
日向とほぼ同時に教室の席について、一息つくと、隣にいる日向が机にだるそうにしながら、僕に向かって話しかけてきた。
僕は、楽しそうなことを話しているのに、少しめんどくさそうという、そんな矛盾が少し気になってしまって、そのことを聞いてみた。
「夏休みのことを話している割には全然元気ないんだね……。」
「いやー……だってねー……。1週間後のことを考えると、誰が何をしようとしていてもこうなるじゃん。」
「1週間後……?あ、そういうこと。つまり、日向は現実から目を背けようとしているってこと?」
1週間後っていうことは、中間考査の頃……あっ、つまりテストがあるからこうなっているのか。
「まぁね……。」
「でも、ちゃんと勉強をしていれば、そんなことにはならないはずなんだけどね。」
「うるさーい……。」
そして、それに対して僕が声をかけようとしたのだが、先生が入ってきたのでやめることにした。
先生は僕と日向のこの状況を知っているし、それになにより元気だから、いろいろとからかってきそうなんだよなー。
と、言う理由でね。
「じゃあ、はい。号令をしてくれ。」
「起立。」
ガタガタッ。
このときに椅子を引く音だったりがよく響くのだが、日向や、また日向と同じことを考えている人は、少し遅れていたために、2回響いていた。
「姿勢、礼!」
「「「「お願いしまーす。」」」」
「はい、えーっと、じゃあまずは連絡だな。1週間後に何があるかわかっているな。」
「「「「…………。」」」」
あ……日向と同じことを考えている人は、少数派かと思っていたんだけど、結構多いな……。
「おーい……まぁ、中間考査だ。」
「「「「えー……。」」」」
すごい、みんなの意見が一体化している。ちなみに、僕のような喋らない人以外だけど。
「それで、先生は優しいからなぁ。それまでの1週間、俺が簡単にテストを作ってやるから、それを毎朝ホームルームの時間にするぞ。」
「「「「えー!!」」」」
これは、どういう意味で叫んでいるのだろう。やっぱり、テストが増えてめんどくさそう、だよね……。
「だから、ちゃんと勉強しておけよー。」
「「「「…………。」」」」
あ、この沈黙は多分、もう無理だって、開き直っているパターンかな?
そして、そんな少しも未来に役立たなさそうなことを考えながら横を見てみると、死んでいる日向の姿があった。
……まぁ、比喩表現だよ。死んだように動かないっていうのが正しいね。
その後も、ちょっといつもよりも元気がない状態がずっと続いていて、いつの間にか、もう放課後で、下校途中だった。
「ねぇ、日陰。」
「ん?何?もしかしてだけど、いや、もしかしてじゃなくても、中間考査のこと?」
「うん、勉強教えてー。」
「まぁ、一応頼まれていることだし、別にいいよ。」
「えっ、ありがとー!」
「おい、ちょっと待った。嬉しいことがあるたびに抱きつこうとするな。」
「あぁ、ごめん……。」
あぶねー……。また、今日も恥ずかしさを引きずって何もできなくなるところだったよ。
そして、そんなこんなで勉強会2を開くことになった。
家に帰って、そのことを伝えると、おばあちゃんからこう言われた。
「じゃあ、一週間は勉強期間を設けると言うことで、その間は日向の世話を休んでいいよ。その代わり、テストで日向が平均点を出せるようにしてね。」
と。
おじいちゃんから、すごい成績が悪いとは聞いていたけど、勉強会をしたときは、教えたところをすぐにわかってくれたから大丈夫だろうと思い、僕は了承した。
そして、突っ立っている時間が無駄だと言うことで、今から勉強会2を始めることになった。
「はいはい、勉強会2を始めるよ。さぁさぁ、ちゃんと勉強道具は置いてある?」
「うん。」
「じゃあ、とりあえず僕が本当は僕が中間考査対策するために作ったものなんだけど、別に大丈夫そうだし、これをあげるよ。」
「おー、すごいね。」
「だから、これを使って勉強会をするからね。」
「はい、先生ー!」
そして、勉強会2が幕を開けたのだった。
僕は、おばあちゃんの約束を責任を持って果たすため、おばあちゃんのために、そして、日向のために、頑張ろうと心に決めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます