第35話 日向との泊まり旅行 7

 このホラー系の映画は、前にも行っていた通り、今、僕たちがここにいる……っていうか泊まっているホテルを舞台にして作られているものだ。


 その内容とは、まずはこのホテルの設定についてだが、どこから流れてきたかは分からない噂。


 それは、このホテルは呪われている、つまり『呪われたホテル』だというもの。


 それを聞いて、でもそんなことがあるわけ無い、ありえない、などと多くの人は考えていた。


 主人公もそんな考えでこのホテルを利用する。 


 そして、主人公が利用しているその日に出来事は起こる。


 不可解な連続殺人事件があったり、不思議な力を持った一面白い服の少女が出てきたり。


 そして、悪霊までも。


 そんないろいろな出来事を巻き起こして、主人公を驚かす。


 いや、ちょっと規制が入っちゃうんじゃないかっっっ…………っていうレベルにやばかった。


 まぁ、そんな感じの映画だった……。


 怖っ……。


 途中、音が大きくなってすごい……っていうかやばい演出をしているときは、おもわずこえがでてしまった。


 こんな映画を見ていて、本当に日向は耐えていられるんだろうか……?


 日向って、ホラー系の映画が苦手なんだよね……?


 僕は、そう思い、僕は隣の方を見てみた。


「ひゃう!きゃあーーー!」


 僕の目の前には、ハンバーガーももう食べ終わり、涙目で僕の腕に少しふるえながらも抱きついている、日向がいたのだった。


 あ、怖いんだ……。


 まぁ、これは僕もずっと真剣に見続けていたらこうなるだろうけど。


 だから、怖くてたまに目を背けて深呼吸してから、また見て……みたいなことを繰り返していたけど。


 …………いや、待て。本当にちょっと舞っててくれ。これ、今どんな状況?


 えーっと……?


 そして、目をこすったり深呼吸したりして、もう一度日向の方へ見てみる。


 僕の目の前には、涙目で僕の腕に少しふるえながらも抱きついている、日向がいたのだった。


 うん……。


 へ……?


 僕は、日向の方を見てみるまでは、怖さからかそんなことを気にしてなどいなかったが、それに気づいてしまったせいで、急に顔……っていうか、全身が熱くなっているんじゃないかレベルくらいに赤くなっていたのだった。


 もう……。せっかくあのおみくじの《恋愛》のところを忘れることができそうだったのにー!


 どんどんどんどん、僕の心臓が打つ時間の幅が短くなっていくのもわかってしまう。


 そして、その音が僕の中でどんどんどんどんうるさくなってきていて、破裂しないか、とか、日向の方に聞こえていないか、とか、すごい心配になるほどだった。


 でも、今はそれほど心配じゃない気がする。それは、僕の中にあった先程の以上に心配してしまうもう一つの心配が原因なのだろう。


 大丈夫かな……?日向、ホラー系の映画をみて、なにかトラウマとかなってしまったらどうしよう……?


 まずは、映画を始めるときまでまで消していた電気をつけた。


 その後に、一番の原因を消せばなんとかできると思い、映画を、消した。


 そして、僕は日向に大丈夫かを聞いて見ることにした。


「だ、大丈夫……?」


「うっ……うっ……。」


 僕は、まだちょっとだめだなー……、とか、こんなに苦手ならなんでこれにしたんだろう……?(まぁ、わかっているけど。)、などと考えながら、僕は覚悟を決めた。


 そして、行動に出すことにしたのだった。


トントントントンッ


 僕は、何をすればいいのかが分からなかったので、とりあえず背中をさすってみた。


「うっ……うっ……。」


「大丈夫、大丈夫だから……。」


 何が大丈夫なのかはよく分からないけど……。それに、僕の方はまったくもって大丈夫じゃないけど……。


「うっ……うっ……。」


 それでも、大丈夫じゃなそうなので、僕は次は違う方法で安心……っていうか、大丈夫だと思わせるか考えることにした。


 で、決めた。それと同時に覚悟も。


「ふぅ……。」


 そして、僕は日向を少し震えた手で抱きしめてみた。


 人っていうのは、体温っていうか、人の温度を感じると安心できると聞いたことがある。


 だから、僕は別に悪いことをしているわけではない。


「…………。」


 ……………。


 そんなふうに言い訳をしながらも、ずっと抱きしめ続ける。日向が安心できるようになるまで。


 もしかしたら、恋愛に無頓着そうな日向にも、好きな人とかはいるかもしれない。


 分からない。


 こんなに僕に優しく接してくれるんだけど、それは日向がただ優しいからなのかもしれない。


 そして、僕が日向のことが好きなのかも分からない。


 でも、日向のことを安心させてあげたかない。


 ただ、本当にそれだけの一心で僕は抱きしめ続けるのであった。


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