第32話 日向との泊まり旅行 4

 抹茶や三色だんごも食べたり飲んだりしているうちに、なんとかその恥ずかしさを抑えることに成功……した、いや、うん。した。


 そして、今から行くホテルがどんなかんじなのかがとりあえず聞いてみることにしてみた。


「よしっ、じゃあそろそろホテルの方に向かおうか?日向、ホテルってどんな感じなの?僕、あまり知らないからちょっと気になっちゃって……。」


 そして、そう聞くと、日向は少しイジワルそうに笑って、こう答えた。


「秘密だよ。」 


 なんとか抑えていた恥ずかしさが、表に出て来そうになってしまった。


 危ない危ない……。


「じゃ、行くか。」


「うん。」


 そして、日向と歩きながら向かった先には、少し……いや、かなり僕にとって予想外のところだった。


 ……いや、ちゃんとホテルなんだ。ホテルではあるんだ。でも………。


 ちょっと大きすぎないか……?立派すぎないか……?


 そこにあったのは、いかにも高級そうで、お金持ちの人……あと、総理大臣とかここらへんに来たらよく利用しそうなほどのホテルだった。


「こ、これ……?」


「うん、もちろん。」


「いや、まぁさすがに水谷家は結構すごいレベルでお金持ちだっていうのは分かっているんだけど……。」


「驚いた……?」


「うん……。こんなすごい誕生日プレゼントは初めてだ。あと、言っておくと、こんなすごい罰ゲームも初めてだな。」


「そうでしょ、そうでしょ。じゃあ、このホテルの前で立ち尽くすのも何だし、部屋の中に入ろ?」


「あ、うん……。」


 そして、中も予想以上だった。うん。外見も本当にすごいのだが、内装もちゃんとこだわってあって、予想を超えていた。


「じゃあ、私は先に準備を済ませておくよ。終わるまで、ロビーで待っててね。」


「うん、分かった。ありがとう。」


「どうも。」


 その後、日向はカウンターのところに向かっていった。僕は、とりあえずロビーに向かって椅子に座ったのだけど、何もすることがないし、日向の方を見ていた。


 日向が、カウンターに着くと、カウンターの内側の方にいる人……つまり、このホテルの従業員は丁寧にお辞儀をした。


 その後、日向が何かを行った素振りを見せると、それに応じてホテルの従業員さんも何かを答えていた。


 そして、一通り終わったような素振りを見せると、今度は日向がお辞儀をして、その後ロビーの方へ向かってきた。


 多分、いや絶対に僕のことを探しているんだろう。


 僕は、とりあえず手をふると、それに気づいたようで僕のところまで来た。


「ふぅ、ごめん。ちょっと準備が遅くなっちゃって。じゃあ、早速部屋に行こう!私、予約をしていたりして写真とかでみたのはあるんだけど、実際には見たことがないからさ、わくわくするよ!」


「そうだね。でも、僕は写真でさえ見たことがないから、多分、日向よりもワクワクしているよ。」


「いや、写真をみたからこそ、更にワクワクできるんだよ。」


「いや、何も知らないこそワクワクできるんじゃないの?」


 などと、少し意味不明な会話をしながら日向の横に立ってついていった。


 そして、エレベーターに乗った。


 どれくらいのいに乗るんだろうと思い、日向がボタンを押すところを見ると、驚いてしまった。


「えっ……。結構上のほうじゃん。」


 そう言うと同時くらいに、変な感覚に陥った。エレベーターが動き出したのだろう。


「うん、なにかよくわからないんだけど、このホテルで1番凄そうなやつにしといたよ。なんだって、ラグジュアリー……?まぁ、よくわかんないから気にしないで。ここらへんはおじいちゃんとおばあちゃんにまかせといたから。」


「はぁー………。」


 なんか日向。ラグジュアリーがなんとかって言っていたよね?僕もよくわからないことではあるんだけど……


 ラグジュアリーって、日本語に訳してみると『贅沢』って意味だったような……。


 ちょっと、やりすぎなんじゃないかなー、って不安になり始めた。


 突然、このエレベーターがチンと鳴り、変な感覚が消えていった。目的地についたようだった。


 僕は、少し豪華すぎじゃないか、不安になりながらも、今日僕たちの泊まる部屋の扉を開けたのだった。




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