第31話 日向との泊まり旅行 3

「ぜぇはぁぜぇはぁ………。」 


「ぜぇはぁぜぇはぁ………。」


 どちらも息切れが結構ひどくて、今は、参拝などはできそうもなかった。


「ねぇ……今思ったことなんだけど……。」


「な……なに……?」


「この今僕たちが持っている大荷物……さきにホテルのところにおいておけば良かったんじゃないかな……?」


「…………そうだね……。」


 とりあえず、今引き返すわけにも行かないし、この次はどうせホテルなので、ここで参拝はすることに決めた。


 水分補給もして、呼吸を普段のように戻すと、参拝に向かった。


「じゃあ、そろそろ参拝しに行く?」


「うん。」


 手をパンッと言う音が出るくらいに叩いて合わせて僕は願いを頭の中で思い浮かべてみた。


 水谷家で、日向と一緒にずっと楽しみながら働いていきたい……。


 と、いうふうに。


 神様は、頼みを直接聞いてくれるわけではないことは分かっている。でも、僕には何年も置いてくれるとは思わないし、それが叶う自信がない。


 だから、せめて神様に頼んで僕は、その自信をもってみたい。せめて…………。


 その願いも祈り終わり、つぶっていた目を開けると、突然周りが明るくなったからか、少しチカチカする。


 そして、横を見てみると、僕を見ている日向の姿があった。


「どうかした?」


「いや、なんでもないよ。どんだけお祈りしているんだろうなー、って思っただけ。」


「ごめん。でも、そんなに長かったかな?」


「うん。1分くらいじゃなかったかな?」


「僕、1分も祈っていたの?」


「そうだよー。」


 僕は、日向が何を願っていたのかが気になっていたけど、どこかで願いを言うと叶わなくなるとかなんとかってあった気がするのでやめておいた。


 ……今になって思ったんだけど、なんで学問の神様にこんなことをお願いしたんだろう?


 そんなことを考えていると、日向がまた話しかけてきた。


「ねえねえ、おみくじをしてみない?楽しそうじゃん。」


「じゃあ、しようかな……。」


 そして、おみくじを売っているところで行き、おみくじをもらった。


「どんな感じだったー?」


「うん?教えない。」


「せめて何だったかは教えてよ。私の教えるからさ。えーっとね、私は中吉だったよ。」


「ふぅー……。」


「もう、こうなったら除いちゃお!」


 そして、僕に向かってジャンプして覗いてきた。


「えっ、大吉?なんで結果が良かったのに私に教えなかったの?……まさか、これは日陰の策略かい?」


「ふふっ、どうだろうね?」


「もう!引っかかったよー!」


 僕は、そうしたいっていうのもあって隠した。だけど、もう一つの理由もある。


 ……っていうか、それが僕的にではあるんだけど、一番の理由な気がする。


 それは、おみくじに書いてある他のところをみられたくなかったからだ。


《恋愛 身近にいる人との良縁あり》


 それを見たとき、なぜなのか、僕は顔が赤くなっていくのを感じていた。


 でも、それに気づかれたらとても恥ずかしいと思うので、僕は日向の陰のところに隠れた。


 本当になぜなのかは分からない。おみくじは外れると思っている。でも……。


 僕はこのときから、何か日向に対しての価値観っていうか、なにかが変わっていったんだ。


 僕は日向のことを、人気のクラスメイト、そして、僕の御主人様の孫などと考えていた。


 だが、それからもう1つ、女性、というふうに考えるようになっていたのだ。


 その後も、その近くで抹茶や三色だんごを食べていたのだが、なぜかその時もおみくじのことを意識してしまい、ちょっとぎこちなかった気がする。


 ただ、そんなことを言うわけにもいかず、できるだけそれを気づかれないようにするため、できるだけ頑張って笑顔で日向と接した。



 なぜかちょっとだけ、その日その時は、恥ずかしかった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る