第28話 旅行の前日準備

 プレゼント交換の日から1週間程度がたち、学校にもだいぶなれてきた。


 ……学校のなかの友達は、まだ彩人と日向ぐらいしかいないんだけどね。でも、話した人は……あと、2人くらい……?


 そして、本題はそのプレゼント交換の日から1週間後の帰りのこと。


「ねぇ、日陰。」


「なに?」


 学校の宿題について話している途中、突然日向が話題を変えて話しかけてきた。


「明日から、ゴールデンウィークでしょ?だから、明日、ちょっと出かけようかなー、と思って。」


「うん。別にいいけど。それにしても、どこに行くの?」


「えーっとね、福岡だよ。あ、詳しく言うとすると、博多だね。私、本場のラーメン食べてみたかったんだよね。あと、学問の神様にも会いに行きたかったし。」


「ん?それって、日帰りで行けるの?」


「行けないよ。」


「…………え?」


 僕は、びっくりしたあまり、声が裏返って出てしまった。さすがに日帰りだと思っていたので、泊まりになるとは思わなかったからだ。


「え?ちゃんと聞いてた?だから、日帰りじゃなくて泊まりなんだよ。」


「…………。」


 そして、考えて、おばあちゃんやおじいちゃんが来るから大丈夫か、と一息ついていると、また僕の考えを裏切ることを言ってきた。


「あ、ちなみに、私と日陰の2人で行くからね。」


「……それ、大丈夫なの?」


 僕は、それが少し……いや、かなり不安で聞いてみることにした。


「うん。おじいちゃんとおじいちゃんが私達の誕生日プレゼントだよ、って。ちなみに、どこ行くかは私がおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に考えたから、安心して。」


「まぁ、おばあちゃんとおじいちゃんが考えてくれているなら安心だけど。でも、付いてくればいいんじゃないの?」


「……なんか少し馬鹿にされた気がするんだけど……。」

「まぁ、おじいちゃんとおばあちゃんはきついからと言っていたよ。」


「…………。」


 なんとかできると思っていたけど、それならさすがに一緒に行けないな……。


「それ、おばあちゃんとおじいちゃんが誕生日プレゼントとしてくれたのはありがたいんだけど、行くのやめても……」


「あ、ちなみにこれは罰ゲームの権利使うからね。プレゼント交換のほうの紙じゃないよ。」


「あ、はい。」

「……ん?待って。明日行くの?明後日とかではなくて、明日?」


「えっ、うん。」


「……あ、そう。」


 そして、僕たちは2人で旅行に行くこととなった。


 家につくと、僕は大急ぎで準備することにした。


 ……ちなみにこの準備は、日向の手伝いの方。早めに手伝いを終わらせて、旅行の準備を終わらせようと思ったからだ。


 そして、いつもより1時間程度早く終わらせることができた。


「ふぅ……つかれたー……。」

「それにしても、僕は何を準備すればいいんだろうか?」


 僕は、今まで旅行に行ったことがなかった気がする。いや、小学校の頃に修学旅行があったのだろうが、それは学校で配られた用意の紙があったので、大丈夫だったのだ。


 でも、そんなことはもう忘れたし、参考にならない。


「うーん……。ハンカチとかティッシュとかぐらい?あと、財布と……。うーん……、全然分からない。」


 そして、僕は聞いてみることにした。


 僕は、部屋を出て隣の部屋の方に向かうと、扉をノックした。


「ねぇ、日向。」


「ん?なに?」


「何を持っていけばいいのか分からないんだけど。」


「ふふーん、私が先生になる番が来たのかい。はっはっはっは!」


「…………。」


 よしっ、部屋に戻るか……。


 そして、部屋に戻ることにした。


「あー、待って待って待って待って!分かったから。ごめんなさいってば。普通にやるからってば。」


 そうすると、僕に抱きついて、僕が部屋に入ろうとするのを止めてきた。


「………っ!?」


 多分、抱きつきたいと思っているのではなく、僕を止めるためという違う目的があったから、恥ずかしさなんて持っていないと思う。


 しかし、僕は違う。


 さて、それはどういう事なのだろう。


 それは、簡単。


 すごい恥ずかしい。もう2度目とはいえ、本当にすごい恥ずかしい。


 僕の顔が、みるみる赤くなっていくのが自分でもよくわかった。すごくあつかったからだ。


「ちょっ……ちょっと……。」


 僕は、止めようと声をかけた。でも、これならあまり効果がなさそうだったので、次は違うふうにいってみることにした。


「分かった、分かった。全然怒ってなんてないから。」


「本当?良かったー!」

「…………。」

「……私、今何をしてましたかね……?」


 あ、気付いた。


 正気に戻ったのか、考える力も戻り、さきほど何をしていたかに気付いたようだった。そして、その途端に日向はボンッ、と、顔を赤くした。


「……抱きついていた……ね……。」


「……すみません、本当に。」


「……大丈夫。」


 そして、僕たちは、少し気まずさなんかがまだ残りながら、旅行の準備を進めたのだった。


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