第25話 体力測定の本番 2

 ある程度の競技は、ペアですることが多い。つまり、ペアの相手と比べられるということだ。


 そして、幸運といったら少しペアの相手に悪いが、そのペアの相手は、運動神経が日向以上に壊滅的だった。そのため、ある程度の競技はみんなにすごいと思ってくれると言う事だ。


 だから、立ち幅跳びや長座体前屈、握力、上体起こしくらいなら問題はほとんどない。


 しかし、それだけじゃ全てが解決するわけではない。ソフトボール投げや持久走、シャトルランはペアとではなく、みんなと比べられてしまう競技だからだ。


 つまり、最後の3競技をどうにかすればなんとかできるということなのだが、それが難しい。


 それでもなんとかしないといけないので、解決方法を見つけようとしたのだが、その前に残り3競技のみとなって昼休憩が始まった。


「……どうすればいいんだ?」

「全くと言っていいほど、解決方法が思いつかない。せめて日向が普通レベルに運動ができたら何とかなったかもしれないけど。」


 うーん……。


 もう、体調不良とか言って休むかな?そうすれば……。


「ねぇ。」


 そんなことを考えていたりすると、隣の席にいた日向が話しかけてきた。


「ん?なに?」


「……どうすればいい?もう分からないよ……。」


 僕はまだ全然思いつくこともなかったので、さっき考えたことを言ってみることにした。


「体調不良とか言って休めばなんとかなるんじゃない?」


「うー……。」


 でも、本当にどうすればいいんだろうか。


 そして、次は、日向は僕が知っている中で何ができたのかを考えてみることにした。


 水谷家の豪邸で、日向となにかあったっけ……?


 あっ!


 そうだ!勉強会のときに、日向にご褒美があると伝えれば、勉強を頑張っていたよな。すぐに集中力が切れてしまったけど、それを利用すれば、普通のときより少しくらいなら結果が良くなるんじゃないか?


 でも、何をご褒美にすればいいだろうか?日向が喜びそうなことか……。


 うーん……。誕生日がもうすぐなんだし、あれにしようか。


「ねぇ日向。競技で頑張ることができたら、誕生日のときにプレゼント交換でもする?」


「……うん!」


 僕がそう言うと、日向は笑顔になって喜んでいる。元気になったようだ。まぁ、その僕に向けられた笑みが、とっても可愛くて少し顔が赤くなってしまったから、少し日向の方から少し背いてしまったことは秘密だ。


 でも、僕は元気になってくれて本当に良かったなと思った。


 そして、すべての競技が終わり、結果は成功…………した訳ではなかった。


 日向は張り切りすぎたのか、ソフトボール投げのときに手をつってしまって、現在は保健室で診察中。


 まぁ、これで日向の運動神経を見られることもなかったし良かったのかな?


 などと考えていると、落ち込んでいる様子の日向が保健室から出てきた。


 僕は、どうして落ち込んでいるのかを考えてみたんだけど、どうしても思い浮かばなくて、聞いてみることにした。


「ん?日向、どうかしたの?」


「……誕生日の……プレゼント交換が……なくなったよ……うぅ……。」


 あ、そういうことか。僕が、体力測定を頑張ったらって言ったからかな……?


「プレゼント交換。別に大丈夫だよ。ちゃんとするから。」


「……本当に?」


「うん。」


「やったー!ありがとーー!」


 僕にお礼をいった瞬間、なぜか僕に抱きつこうとしてきた。いや、正しくはもう抱きつかれている。


「えぇぇぇぇ!!」


 抱きつかれた感想は……えっと……うん。


 僕の身体にあたっている部分がちょっと、いや結構柔らかかったな……。


 ……って違う違う!


 取りあえず、この状況をなんとかしないといけないじゃん!


「えっ!?なにしてんの!?」


「え?……うわぁ!!」


 僕が声をかけると、日向が何をしているのかに気づいたみたいだった。そして、その瞬間にみるみる日向の顔は赤く染まっていった。


「ご、こめん……。」


「い、いや、大丈夫だよ……。」


 そして、学校から家に向かう途中も、ずっと僕たちは顔を赤くしながら帰っていったのだった。

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