第23話 地獄のジョギング

テンテレテーーン!テンテレテーーン!


「……なんかすごい鼻につく!」


ドンっ!


 新しくスマートフォンの目覚ましアプリをしてみたのだが、その音が少し陽気な感じがして、眠い僕にとってはなにか馬鹿にしているみたいで、少し苛ついてしまった。


 そして、どこか前であったようなシュチエーションを繰り返すように僕はスマートフォンを叩いてしまう。


 ……まぁ、前のシュチエーションとは少し違って、壊れはしなかったんだけどね。


「あっ……、やべ…………ふぅ、良かった。壊れてなかった。まだデジタル時計を壊してから1ヶ月も経っていないのに、また壊してしまうところだったんだけど……。」


 目をこすってベッドから立ち上がると、学校の制服ではなくて、お婆ちゃんに新しく買ってもらったスポーツ用の服を着た。


 ジョギングすることになった事を伝えると、その日の夕方にはこれが用意されていたのだ。


 最初を遠慮したのだが、もう買ってしまったしということで、しょうがなく着ることにした。


 まぁそれで、着ることになったとはいえ、今日は平日なので、すぐに着替えられるように制服やらなんやらを、もうすぐに着替えて学校に行けるように出して置いておく。


「よしっ、じゃあ日向を起こしに行くか。」


コンコンッ


「……今日もまだ起きてないのかな。」

「失礼します。」


 そして、日向をおこす。日向は、まだ起きたばかりだからなのか、少し動きがゆっくりだったけど、なんとかむりやり引っ張って、ジョギングに連れて行った。



 ジョギングを始めて1分が経った。


 本気で走っている訳でもないし、結構ゆっくりと呼ばれるペースで走っているのだが、僕はもう結構限界だ。


 少し、勉強と家事くらいしかしていなくて、運動を全然していなかったという事に後悔している。


 ちなみに横を見てみると、そこには同じように息切れして苦しそうな日向がいた。


 すると、日向は走りながら僕にとぎれとぎれ話しかけてきた。


「ねぇ……これ……いつまで……ゴホンッ……走るの……?」


「ゴホンッ……休憩……する……?」


「……うん……。」


 まだ1分ぐらいしか時間が経っていないのだが、もう近くの公園で休憩することになった。


 公園に置いてある木の椅子に2人で座ると、まずは水を飲んだ。


「ゼェ……ハァ……」


「ゼェ……ハァ……」


 日向も僕と同じように、水を飲んでもまだ、ゼェハァゼェハァ言っている。


 馬鹿にできないな……。勉強やら生活態度やらなら、僕が上の方だったんだけど、ジョギングだったら、同じくらいか……。


 そして、5分くらい経って、いつもの疲れていないときの呼吸の状態になんとか戻した。


「それにしても、日陰は体力がないんだね。」


「いやいや、同じくらいでしょ。」


「うん。同じくらいだからっていうことだよ。」


「……あぁ、そういう事か……。」


 僕は、日向の世話係になる前までは、勉強もできて運動もできてそれに容姿も……可愛くて……。


 いいなぁなんて思っていたけど……。


 でも、容姿が可愛いくらいしか正しいところないんだな。どうやって誤魔化してこれたんだろうか。


 みたいな、少し日向を馬鹿にしているようなちょっと悪いなぁなんて事を考えながら、僕は日向の話を聞く。


「それにしても、どうするの?もう5分くらいも休憩しちゃっているよ?今日はもうやめにするのかな?」


「もう、走りたくないな……。今日は終わりにしよう。」


 そして、ジョギング最初の1日目は、たった1分走っただけで終わることとなったのだった。




2日目


「日向、起きてるー?」

「……はぁ、失礼します。」


 そして、今日も起こそうとした。だけど、昨日とは違ってやけに時間がかかった。昨日走ったことで、もう面倒くさくなったのだろうか。


「うぅ……。」

「もう走りたくないよー……。」


 みたいなことを呟いてばかりで、あまり動こうとしない。


 ちなみに言うと、僕も面倒くさくなってきていて正直続けたくはない。でも、一応日向のためだし、日向が面倒くさそうにしていてもちゃんと導いてやらないとなー、みたいな覚悟を持ってジョギングをしようと始めたので、途中で簡単に曲げるわけにはいかないのだ。


 ……まぁ、日向が良いっていったらやめたいけどね。


 そして、面倒くさいなーなんて思いながら走り始めて、今日も1分走って終わってしまったのだった。




 3日目


 日向は、もう用意をしようととしなくなってしまった。それどころか、起きようとしたり動こうとしたりしなくなってしまった。


「もう……無理だよ……。」

「日陰、頑張って……。」


「いやいや、僕が頑張っても何も変わったりしないよ。」

「僕が頑張ったら日向の足が早くなるみたいなことがあったらおかしいよね……?」


「おかしくなーい……。」


 いや、おかしいだろ。


 ちょっと日向の頭がおかしくなっちゃったのかな?


 そんな感じみたいなことを考えながら、僕は何度も起こそうとする。


 でも、昨日とは違い、一筋縄ではいかないようで、何度も何度も起こそうとしているうちに学校の用意を始めないといけない時間になってしまった。


 そして、1分のジョギングさえもなくなり、このジョギングは、3日坊主どころか2日坊主で終わってしまったのだった。


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