第21話 面談

 翌日、登校中


「日向、本当にごめんね。昨日の朝に起こったことも忘れていて、普通に日向に触れちゃってて。」


「もう、いいよ。まぁ、その代わりに罰が少しグレードアップしちゃったけどね。」


 僕に対して意地悪そうに笑っている。まるで、悪魔か!なんて思ってしまった。


 そして、僕は日向が悪魔になった姿を想像してみる。


 ……なんか、可愛いな……。


 ……ってそうじゃなくて、罰がグレードアップしたってどういう事なのかな?


 そして、僕はそれがどういう事なのか、少し不安な思いで聞いてみることにした。


「ねぇ、グレードアップしたってどういう事なの?僕、少し怖いよ……。」


「ふふっ、おしえなーいよー!」


「もう、聞いて怖がるよりも、聞かないほうがすごい怖いんだけど。なんか無知って嫌だね。」


「まぁ、ゴールデンウィークになったら分かるから、それまでお楽しみにね。」


「うーーん……。」


 そして、結局、何なのか分からなくて、不安になりながら、僕は学校に向かった。


 今日は、昨日までとは違って、普通の時間割だった。それだからか、昨日と比べて長く感じてしまうので、学校が少し面倒くさく感じる。


 でも、日向に勉強を教えることになっているために、居眠りは厳禁。だから、話は全て聞けはしなくても、黒板に書いてあることをノートに写した。


 そして、4時間目の終わりを表すチャイムが、学校中に鳴り響いた。この音は、少し前に聞いた1、2、3時間目の終わりを表すチャイムと比べて、なぜかすごくきれいに感じた。


 ……まぁ、次が昼休憩になるってことが嬉しいからだろうが。


 すると、ほとんどの人が教室から出ていった。多分食堂に行くからなのだろう。弁当を持ってきていた人は、ごく少数だったからな。 


 僕と日向は、そのごく少数の方に入る。水谷家の専属料理人の料理のほうが、絶対美味しいしな。


 だが、少し恥ずかしいところもある。それは、まだ弁当が日向のしかないからということで、大きい弁当を二人で食べることになっていることだ。


 だから、僕たちはいつものように屋上に向かう。屋上は、人が少なくて、風が気持ちいいし、それになにより、変な噂も立たないだろうしな。


 そのため、僕たちは椅子からたち、屋上に向かおうとした。しかし、遮られた。だが、それは、屋上に行かせないためではない。もっと別の理由だ。


 教室を出ようとすると、佐藤先生が教室に入ってきた。そして、僕らに話しかけてきた。


「おぉ、小夜に水谷、ちょうどいい。」


「あのー、何がちょうどいいんですか?何かあったんでしょうか?」

  

 僕が聞くよりも先に、日向が先生になんなのか聞いた。


 おぉ、豪邸で住んでいるときとは違って、すごい丁寧なんだなー、なんて思いながら、日向の横顔を見ていた。


「あぁ、他のみんなより2人ともを先に面談をしてもいいか。少し、聞きたいことがあるんだ。」


「……?分かりました……。」


 そして、佐藤先生の席のある職員室の方に向かった。


 次は、僕が日向よりも先に質問した。決して先に質問されたのが悔しかったわけでは無い。


 ……あっ、これはフリじゃないぞ。決してフリなんかじゃないぞ。


「それで、なんで先に僕らを?っていうか、なんで2人同時に?」


「あぁ、それなんだが、2人とも、この紙を見てくれ。」


 佐藤先生が出したものは、昨日出した僕たちの家庭調査票だった。最初は何をしているのかよく分からなかったんだが、先生が2つ指を差しているところを見て気付いた。


「「あ………。」」


 同時に日向も気づいたらしい。


「そういうことだ。なんで、家庭調査票で住んでいる『家の住所』が同じところなんだ?」


 うわー……。日向とは別で書いていたから、気にしていなかったー……。


「それは……。」


 僕は、困ってどうすればいいのか分からなかったので、とりあえず日向に目配せした。


 すると、日向は「……分かった。日陰、話してもいいよ……。」と小さく呟いた。


 そして、僕は世話係のことを話すことにした。


「今から話すこと、絶対に他の人に言わないでくださいね。」


「あ、あぁ、分かった。それで、なんでなんだ?もしかして、付き合ってて、同棲?」


「いやいやいやいや、違いますよ!それはですね、僕がそこで働いているからなんですって。」


「ん?働いている?」


「はい。実はそこに書いてある住所は、水谷家のあの家……っていうか豪邸なんです。」


「え?……あ、そういえば、ここの校長先生と同じ住所だな。」


「そういう事です。つまり、僕はそこで、日向専属の執事として住みながら働いているんです。」


「なっ……。でも、そういう事だったのか……。」

「でも、どうしてその豪邸で働くことになったんだ?募集とか簡単にはできないだろ?」


「あぁ、それはですね。………………。」


 そして、そこまでの成り立ちまでも佐藤先生に話した。


「へぇ。色々あるんだな。お前らは。」


「はははっ。そうですね。」


「ま、水谷は、結構前の学校で人気なんだったんだろ。もしかしたら小夜は、いろいろと反感持たれるんじゃねぇの?」


「だから、言わないでほしいんですって。」


「ほいほい、分かったよ。」


 そして、秘密を知る人が、1人できたのでした。

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