第19話 自己紹介 1

 僕は、日向より1足先に校門に向かった。つくと、端のほうで丸まって……いたら、少し恥ずかしいので、そういうわけではなく、普通に端のほうで立っていた。



 最近はずっと忘れていたけど、日向は、クラスの中で中心人物だった人だもんな。こんな関係があるだけでも奇跡だな。


 お婆ちゃんを助けただけで、こんなことになるだなんてな……。


 本当に人生っていうのは、分からないものなんだな。


 そんなことを考えていると、日向が校門についた。


「ごめん。ちょっと遅れた。新しくできた友達と連絡先を交換したんだ。」


「すごいね、まだ1日目だよ?まだ僕、日向以外だと彩人と、あと後ろの人に「はい」ってぐらいしか会話してないよ。」


「えー、でもすごいじゃん、彩人って、誰だか知らないけど名前で呼んでる仲になったってことでしょ?」


「仲っていうかね……。でもまぁ、日向家以外にそれだけ話したのはひさしぶりだったよ。」


「ふふっ、良かったね。」


「うん、そうだね。」


 そして、あと新入生代表の話とかについていろいろと話していたら、水谷家の豪邸についた。


「「ただいまー」」


「お、おかえり。」


 僕たちがドアを開けて、「ただいま」とハモりながらいうと、ちょうど近くにいたお婆ちゃんが、「おかえり」と、返してくれた。


 ちょっと、男性の声と女性の声をハモらせると、意外に、きれいなんだなー、なんて思いながら。


 僕は、階段を上がり、自分の部屋に向かうと、日向がついてきた。でも、実際に付いてきているという表現が正しいかというと、少し違う。


 なぜなら、部屋が隣なんだから、方面が同じなのは当たり前だからね。


 まぁ、途中まで一緒にあるいて、僕の部屋の前まで来ると、「じゃあ」と言い、執事の服に着替えた。


 そして、1日の仕事を終わらせた。


「ふぅ、やっと終わったー、それにしても、銭湯のお風呂と比べても、こっちのほうが絶対すごいお風呂だよなー……。」


 なんていつものように考えながら、いつものように寝る準備をする。そして、まだ自己紹介用紙を書いていないことに気付いた。


「そうだ、自己紹介用紙を書かないといけないんだった。えーっと……。」


 そして、僕の部屋に置いてある机に座ると、自己紹介用紙を広げた。


「まず、名前を書いてっと……。で、次に出身中学校は……、得意なことは……。」


 そして、書き終わった頃にはもう11時をまわっていた。


「やばいな。寝坊しないかな、不安だよ。」


 そう呟くと、僕はあくびをしてベッドに寝転がった。そして、疲れていたのか、いつもよりはやく眠ることができた。




「うぅー……。」


 目を覚ますと………7時20分!?


 やばい、昨日遅くまで起きすぎた!

 うわー……!少しでも早めに寝ることができたら良かったのにー!


 なんて、そんなことを豪邸の中で叫ぶわけにもいかず、とりあえず、僕は心の中で名いっぱい叫ぶことにした。


 まぁ、そんなことを叫んでも、時間が戻るはずもないことは分かっているので、急いで用意に取り掛かる。そして、もちろん日向の世話も。


 今回は、ちゃんとノックしてから入った。今日は、起きていないらしい。ノックの返事が来ない。


「おーい、日向。起きてくれー!」


「……すぅ………すぅ……。」


 うっ…、こんなときになぜ起きない!?もうすぐ遅刻だよ……!


「おーい、日向ー!」


「……すぅ……すぅ……。」


 な、なんで……。深い眠りってことは、ノンレム睡眠だっけ?


 でもまぁ、ちゃんと脳や肉体を休息させているから、偉い、偉い。


 ……ってちがーーう!!違うんだよ!起こさないといけないんだよ!


 寝ているときに身体に触れたらセクハラみたいなこと無いかな……。でも、声で起きないなら、しょうがないような……。


 こんなことで悩んでいたら、ただ時間を無駄にしているだけだ!よしっ……!


「おーい……。」


 そして、肩を揺らしてみる。


 うっ……。なんで起きないんだよ!もうあと少しぐらいで遅刻することになるぞ!


 そして、次は少し強めに揺らしてみる。すると、やっとのことでなんとか起こすことができた。


 「ん……?なに……?……キャーー!!」


「うわあ!!」


 うー……。やめてほしい、叫ぶこと。心臓にすごく悪いから。何度も思うけど。

 寿命、日向の叫びだけで365日くらい、まぁつまり一年くらい縮んだ気がする。


 まぁ、そんなこんなで、なんとかぎりぎり遅刻せずに登校することができた。


 ちなみに、「寝ている私を起こすからとはいえ、体を触ったんだから罰だね。」と言って、またどこかに遊びに行くことになった。


 あれ?なんか、バツじゃないよね?ご褒美だよね?なんて思いながら、僕は日向の言う事を聞いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る