第17話 前の席の人
「えーっと、1年3組だったから……ここだよね?」
「うん、そうだね。……多分。」
「えー!多分って言わないでよ。多分って。なんか私、もう心配になってきちゃうよ?」
「ふふっ、でも、確実じゃないなら、自信をもって言ったら、後で間違ったときにすごい恥ずかしいじゃん。」
念の為、一度2人で正しいかどうかを確認すると、僕たちは教室の中に入っていった。
……何か途中に無駄な会話が入ったような気もするが、まぁそれは気のせいだろう、ということで、この話題は終わり。
教室の中を覗いてみると、初日だからなのか、それとも僕が遅いのかは知らないが、8割前後の人が来ていたように思える。
……立っている人がすごい多かったので、正しいのかは分からないから確定はできないが。
そして、その中には、僕が名前まで知っているのはそのうち0、5割くらい。見たことあるっていう人はそのうち5割。あとは、もう全く知らない。見たことない。他人。うん。
「じゃ、また後でね。」
「分かった。また後で。」
そう言って、僕は日向と一時的に別れた。まぁ、別れたと言っても、教室内で自分の席に座るだけだが。
僕は、窓側の一番端……が希望なんだが、名字の頭文字が「さ」のため、微妙なところ。
ちなみに、日向も頭文字が「み」のため、そちらの方も微妙なところに座るのであろう、などと想像する。
で、どちらも微妙なところということで、結局席は隣。本当に一時的な別れであった。
「……すごい偶然だね。」
「おじいちゃんが、何かいろいろと仕組んだりしていないかな?」
「ふふっ、どうだろうね。」
名前って性格に反映されると、僕は思っている。それも、今、この状況を見れば簡単なことだろう。
僕は、「日陰」の通りに、入学式の準備をして、終わったら読書をするという感じになっている。
が、日向は「日向」の通りに、前の友達、そして、初めてクラス、学校が同じになる生徒とも、もう話している。
……家での暮らしを見ると、その話し方に少し違和感を感じるが。
まぁ、それはおいておいて、こんなにわかりやすいことなど、他にあるのだろうか?
もしかしたら、あるかもしれないが、大半はこれよりは分かりにくいだろう。
そんなことを考えていると、前の席の人が僕に話しかけてきた。この人は……知らない人だ。つまり、日向系の人であろう。
「よう!俺は彩人だ。あっ、俺のことは普通に彩人って呼んでくれればいいぞ。」
うっ……。すごい日向系の人だな……。この人も、僕とは真反対の人だ。まぁ、とりあえず、日向系の人は、ある程度のことなら言うことを聞いたほうがいいはずだから、聞いておこう。
「僕は、日陰だよ。……あ、彩人……、よろしくね。」
「おう!日陰か、ぴったりな名前だな。よろしく!」
「日陰」が、ぴったりな名前?僕のことを地味な人間なんて言っているんだろうか?
「どういうこと?ぴったりな名前って?」
「え?分かるだろ。日陰って何って聞かれると、俺のイメージでは縁の下の力持ちっていうか、陰で努力しているっていうか……。まぁ、そんな感じなんだ。」
「日陰って、絶対にそんな感じだろ!あっ、違っていたらごめんな!」
あっ、この人、すごいいい人かも……!
何か僕が単純な人に見えるな……。でも、日陰っていう名前をそういう風に捉えたことなんてなかったな。
「……ふふっ、ありがとう。」
「おう!」
「あっそろそろ入学式始めるんだよな。そろそろ並べって声かけたほうがいいのかな?」
すごい……!僕だったら、絶対に他の人に代わりにしてもらって、僕はただ静かに待っていようとしていたのに……!
この人、本当に尊敬するよ。嫌な役を自分が代わりに背負って、すごいな……。それに、もし自分がしたいからしていると言ってもすごいな……。この仕事を楽しいって、思えることなんだろうから……!
「うーん、先生が来ていろいろと説明とかしてくれるんじゃない?だって、学校初日だから。」
「あー、それあり得るな。教えてくれたありがとな!」
「あ、どうも……。」
これが、中学校を卒業して、できる友達の2人目との最初の会話だった。
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