第14話 遊園地 1


「ねぇねぇ。」


 僕が日向を起こして服を着させると、突然、僕を呼んだ。

 最初に思ったことが、その呼び方があるテレビ番組の有名な1言を連想させたので、からかってみる事にした。


「ん?もしかしてだけど、あの有名なテレビ番組のパクリをしているとか?」


「なんでそんなことになるの?私、普通に呼んでいるだけだよね……?」


「ははっ、そうだね。で、今日は何をするの?」


「はい、そうなんですよ!そうなんです!」


 何が、そうなんですよそうなんです、だ!僕はまだ何も言ってないよ?


「今日は日陰の高校に合格できた祝い、第2弾!家族で遊園地行こうぜ!イェーイ!!」


 うん。なにか、だいたいわかった気がする。日向って、もしかしてだけど楽しいこと、サプライズをするときにテンションが上がるんだな。


 ……まぁ、大抵の人は普通にそうかもしれないけど。


「え、それでお婆ちゃん、おじいちゃんも遊園地行くことに賛成だったの?」 


「オー、イェース!」


 どこか部分的に英語にすると、もう全部英語で話しているよ、みたいに感じる系の人なのかな……?


「ふぅーん、でも僕まだ学校の準備終わってないけど大丈夫なの?明日学校だよ?」


「オーケーオーケー、夕方で帰りマース!」


 いつまで「部分的に英語」を続けているんだよ……!そろそろ、いろいろと突っ込めなくなるぞ。


 でも、遊園地か……。まだ1度も行ったことないんだよな……。一度行ってみたかったし、この機会に行ってみたいな。


「まぁ、なら分かった。少し待ってて。服とか用意してくるから。」


「うん!」


 それにしても、合格祝いに第2弾がある人を始めて見たかもな……。さすが水谷家だ。


 そして、僕は執事の服から私服に着替え、必要なもの……とは言っても財布にハンカチ、ティッシュぐらいだけど。


 用意が終わると、玄関に向かった。そして、もう外には車が待っていた。


「すみません、またせ……」


 僕は、車を見て驚いてしまった。水谷家の車だから、結構高そうな外国製の車みたいなものなのかなと思っていたが、それを上回っていた。


 そこにあったのは、あのテレビでもよくある、桁外れのお金持ちや、大統領、総理大臣が持つようなあの黒くて、長いあの……あれだ。うん、あれ。なんていうのかはわからないが、初めて見た。リムジン……だっけ?


「凄い……。」


「じゃあ、行くよ。小夜くん、早く車に乗ってね。」


「あっ、すみません、分かりました。」


 これが当たり前になっている時点で、日向もいろいろと金銭感覚おかしくなっているのかな?


 車に乗ると、真ん中にテレビがつけられていた。そして、この車の運転席には、運転手が付いていた。


 さすがだなー……。


 こんな風景をこの15年間見ることのなかった僕にとってはそれくらいしか言えることが無かった。


「遊園地に向かって、レッツゴー!!」


 そして、日向の掛け声で、車は遊園地に向かって走り出した。


 30分がたった頃、外からは何やら騒がしい声と音が聞こえた。

 窓から外を見てみると、まず目に入ったのは、観覧車で、その後に遊園地全体が見えた。


「わぁー……!」


「日陰は、遊園地を見てそんな反応するんだね、子供っぽいよ。」


「うるさい……。僕は遊園地を初めて見るんだもん。楽しみなのはもう仕方ないことだよ……。」


「えっ、日陰は遊園地に初めて来るの?」


「うん、うち貧乏だし。それに中学校始まってからは一人暮らしだからね。」


「えっ、中学校の時から一人暮らしなの?すごいね!」


「ハハッ、ありがとう。でも、バイトができないから、お母さんから支援は受けていたけどね。」


「でも、すごいよ!」


 僕は少しすごいって言われたことが恥ずかしくて、頭をクシャクシャと右手でかいて、紛らわした。


「よし、じゃあ車から降りようか。楽しみだね。」


 お婆ちゃんは、僕に対してそういった。そして、昼までは別行動で行動してもいいらしい。その結果、日向と日陰チームと、お婆ちゃんとおじいちゃんチームに分かれて行動することになった。


「日向、じゃあまずはどこに行きたい?」


「いやいや、今日は日陰が行きたいところに行くばんだよ!日陰は遊園地に来たことないんでしょ?私は何度か行ったことがあるから大丈夫なの!」


「そう?なら……。」


 正直に言うと、ありがたかった。


 始めてきたところで、少し行ってみたかった憧れの場所とかあった。でも、僕の勝手にするわけには行かず、しょうがないな、と思っていたからだ。


「メリーゴーラウンドに、あっあと、ジェットコースターも怖そうだけど行ってみたいな。あっ、それに……。」


「ふふっ、色々と行きたいんなら、順番に行こうよ!私もそこらへんの場所、まわってみたいなーなんて思ってたし。」


「ありがとう。それじゃあ行こうか。」


「うん。」


 そして、遊園地を楽しもう企画……ではなくかった。えーっと、そうだ。高校に合格できた祝いの第2弾が始まった。

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