第13話 豪華な料理

 水谷家の豪邸に戻ると、扉の目の前には、日向が、腰に両方の手をおいて、それでいてエプロンを着て、なにか自慢をするときみたいな格好をしていた。


 だから、なにか自慢したいことでもあったのかなー?なんて考えながら、家の中に入る。


「おかえり!」


 やけに元気だな……とか思いながら、返事をする。


「ただいま……。日向、どうしたの?なにかあった?」


「ふふーん!さて問題!なにか気づくことはない?」


「なにか?」


 服装とかかな?


 まず、僕はそう考え、服装をチェックしてみることにした。でも、エプロン以外は何も変わったものなど無かった。


 そして、次はエプロンを何故着ているのか考えることにした。


 まず、どうして着ているかだな……。エプロンを着る時って、どういう時だろう?えーっと、何かで汚れるときか、料理を作るとき…………あっ!


 そして、僕は五感をすべて集中し、あることに気づいた。


 あれ、なにかいい匂いがする……!もしかしてだけど、日向、なにか料理を作ったのかな?


 いやいや、そんなこと、日向に限ってないだろう。だって、いつもだらけているから、料理なんて作れそうもないし……。あっ、これは偏見か。


 それに、もし日向が料理を作ったとして、なんで今料理を作る必要があるんだろうか……?


 僕の学校の合格祝いとか?でも、まだ僕は合格も何も言っていないから、落ちたっていう可能性も日向たちは考えているんだよね。


 すると、もし受験に落ちていたときは、なにか悪いことをしてしまった感あるよね。


 みんなは、受験に落ちていたことを祝って料理を作っていたのか、みたいな……。


 と、なるとそれ以外か……。うーん……。さっぱり分かんないよ。


「えー、分からないな。正解は?何が変わったの?」


「えー!わかるでしょ。私がこの服装をしているんだよ!答えは、料理を作ったんだよ!」


えぇー…………。


「でも、なんで?もしかして、今日は日向の誕生日で、それを祝うためとか?」


「違うよ!私の誕生日は、4月の21日だよ!ってそれは関係なくて……、分かってるでしょ!日陰が学校に合格したから、そのお祝いだよ!」


「え?いやでも、学校に合格したかなんてまだ言ってないよ?まぁ、合格してはいるけど……。」


「それはね……。おじいちゃんがおしえてくれたのでしたーー!」


「あ、そういうことか……。」


 本当にびびったよ。僕の心をよんで、学校に合格したのがわかったみたいなことかと思ってびっくりしたよ……。


 あ、でも、考えればそうか!もう料理作り終わっているんだもな。今心をよんでも意味ないよな!


…………ん?


「え?日向の誕生日って、4月の21日なの?」


「うん、そうだけど?」


「えーっと、僕の誕生日も4月の21日なんだけど……。」


「ええええぇ!すごいね!」


 思わず運命でもなんでもないのに、ただの偶然なのに、運命まで感じてしまった僕であった。


「ところで、いつまで玄関で長話する気なの?」


 そんな運命でもなんでもない偶然を感じていたとき、お婆ちゃんが話に入ってきた。


 そして、その声とともに、僕はここが玄関であったということに気づいた。


「あっ、すみません。」


「いやいや、別にいいんだよ。でも、玄関は冷えるから気をつけてね。4月に入ったけど、まだ寒さが残っているからね。」


「はい。」


そして、自分の部屋に戻ると、制服を着替え、前に日向と行ったショッピングの時に買った僕の私服に着替えた。


 いつもなら執事の服なのだが、今日は休みということで、特別に許されたのだ。


 階段を降り、食堂に向かおうとすると、その瞬間に玄関の扉が開き、そこからはついさっきまで話をしていた校長先せ……日向のおじいちゃんが入ってきた。


 なぜ校長先生と呼ばないようにしているかというと、それはすごく簡単なこと。


 校長先せ……ゴホンゴホン、日向のおじいちゃんにそう言われたからだ。


 そんなどうでもいい話は置いておいて、……いや、おじいちゃんがどうでもいい訳ではない。

 まあ、置いておいて、僕はこの豪邸でおじいちゃんと会うとは思わず、びっくりしていた。


「おじいちゃん!?どうしてここに?」


「おぉ、似合ってるね、その服。あ、そうだ、言っていなかったね。今日は早めに帰って来られるようにしておいたからだよ。」


「そ、そうだったんですね。」


「あ、先に食堂の方に行っておいてくれ。私は、服を着替えて、いろいろと準備を終えてからそちらにむかうから。」


「分かりました。では。」


 そして、僕は食堂の方に向かった。そこには、とても豪華な料理が並べてあった。豪華な、ということで、料理の量も、質も本当にすごかった。


 特にすごかったのは、キャビアとか使っていたところ。思わず叫んでしまいそうだった。


 だって、人生で1度もキャビアなどの高級食材を食べずにおわるんだろうなー……、食べてみたかったなー、みたいな感じでもう諦めていたからね。


「す、すごいですね!」


「あぁ、今日は記念の日だ、豪華にしないと!」


 食べてみると、本当に美味しかった。多分、今までで始めてご飯を食べて幸せを感じたかも?


 そして、意外なことに、日向の作った料理も美味しかった。あー、勝手に感じてるだけかもしれないのだけれど、偏見って怖いなー……。


 そして、幸せを感じているまま、1日が終わった…………わけではない。


 なぜなら、最後におばあちゃんがあるひと言を言ったから。


「そういえば、明後日は学校だけど、日向と小夜くんは、一緒に学校に行くの?」


と。


明後日、学校なの?


もうすぐじゃん……。学校の用意、何一つしていないよ?


 そして、最後に学校の準備が済ませることができるか、不安の状態で、1日が終わった。

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