第9話 学校に行くことに

この豪邸に来て、1週間の時間がすぎた。


 1週間というのはあっという間で、でも、そんなにも時間がすぎると、もうこの生活にだんだん馴染めるようになってきた。


 最初に、こんな豪邸に住むと決まったときは、絶対馴染めないだったり、絶対慣れないだったりとおもっていた時期がもううそのようだった。


「あ、そろそろ起こしにいかないと。」


 時計が、あと少しで6時30分になっているということを確認すると、そう呟いて、僕は、僕の隣の部屋、つまり日向の部屋に向かう。


 そして、起きているかを確認するために、まずは部屋の扉をノックする。


しかし、返事は何も帰ってこない。


「あー、やっぱり返事が来ないかー。」


 返事が来た場合は、当たり前だが、起きている。つまり、部屋に入って起こさなくても大丈夫。


 しかし、返事が来なかった場合は、ほとんど確実に起きていない。つまり、起こさないといけない。


 しかし、前にあった、寝ているふりドッキリはびっくりしたけど、あれ以降ないし、ほとんど起きてないと思ってていい。


 まぁ、そんな風に油断していたからびっくりするんだけどね。


 そして、大半が、返事が来ない。


「……失礼しまーす。」


 そう言って、扉を開ける。

 ベットまで近付くと、まずは、深呼吸をする。


 なぜなら、この作業はまだ慣れないからだ。だって、この人、今中学3年なんだぞ!来週からもう高校1年なんだぞ!

 そして……なにより異性なんだぞ!


慣れるわけがない。うんうん。


 まぁ、深呼吸を簡単に終わらせると、僕は日向を起こす。


 そして、起きると、大抵の日向のまず1言目は、こんな感じだ。


「キャーーーーッッッ!!」



「侵入……あ、おはよう、日陰君。」


の大体は2通り。


 いい加減もう覚えておいてほしい。起こすって言ったのに……。本当に心臓に悪い。


あ、でも最近は少し確認する時間はあるが、ちゃんと普通に起きるときもある。


「…………おはよう。」


っていう感じだ。


 一応、ちゃんと成長はしてくれているみたいだ。


 そして、僕も成長している。

 まず1つ目だが、この次の日向の着替えについてだ。


 相変わらず日向は僕にやらせているんだが、僕は、日向の肌に触れることなく、着替えさせることができるようになっていた。


でも、着替えだし、僕は日向の下着姿を見ることになる。


つまり……



慣れるか!!

慣れるなんて無理にきまっているだろ!


 ホントに、日向のやつ、ちょっとぐらい羞恥心もってくれよ!!


 ……ん?あれ?やっぱり、ほとんど成長していないかも?うーん、でも、伸び盛りがもうあと少しであるかもしれないし……。


 あ、ちょっとちがうか……。


 そして、食堂に向かう。


 1足くらい先に食堂につくと、料理人さんから、食事をもらう。そして、1足くらい後に降りてきた日向のところに持っていく。


「どうぞ。」


「ありがとう。」


 そして、ここ。ここでも、なんとか成長を遂げている。


「はい……」


「……あむ」


「はい……」


「……あむ」




 と、このような感じで、ご飯が無くなるまで続く。


この「あーん」地獄についてだ!


 無理に決まっているだろーとか思っていたけど、最近はずっと照れている状態な訳ではなく、案外最後の方になると慣れることができるようになったのだ。


 が、しかし、なぜか毎日の1口目はいつも同じで、めちゃくちゃ恥ずかしい。


つまり……。


これも慣れることはない!!


 ということである。


 ……うん、やっぱり、ほとんど成長していなかったな……。


 これらを、前は他のみんながやってくれていたんだな……


 と、少し尊敬。


そんなことを考えていると、途中、お婆ちゃんが起きてきた。


「おはようございます。」


 僕はお婆ちゃんが起きてきたことに気づいて、礼をしながら挨拶をすると、しっかり返してくれた。


「おはよう」

「あ、そういえば日向、」


「なに?」


 お婆ちゃんが日向の方に話しかけると、日向は口に食べ物をいれたまま、お婆ちゃんの返事に答える。


……おい、ちゃんと噛めよ。噛むか話すかどっちかにしてよ。


 まぁ、早く答えたいって気持ちみたいなことは分かるっちゃ分かるけど……。


「1週間後、学校でしょ。用意できてる?」


あー……学校か。

 そのあいだ、僕は、なにをすればいいんだろうか。


 ひまになるのかなー?


よし、聞いてみるか!


 そして、僕は、日向が学校に行っている間、何をするべきなのか聞いてみることにした。


「すみません」


「なんだい?」


「僕って、日向が学校に行っているあいだ、何をすればいいでしょうか?」


「え、学校に行くんじゃないの?」


 急に日向が喋り始めた。しかも、僕の中で予想外の言葉を。



……え?


「いやいや、行かないよ。」


「…え?」


いやいやいや、こっちが、え?、だよ。

なんでそうなってんの?


「なんで行かないのかい?」


お婆ちゃんが僕に尋ねる。


「えっと、金欠だから……?です。」


あと、それに友達いないし……。


うぅーー……。


 と、勝手に自分で考えて、勝手に自分で落ち込んだ。


「なら、私がお金出してあげるよ。」


「え?いいんですか?」


「あぁ、いいよ。」


 正直、行くのが嫌だった。


 しかし、今ならわからない。

 僕が高校に行かない理由として、わかっていると思うが、友達がいないから、ていうのがある。


 だがしかし、今は1人……いる……と言ってもいいのかな……?まぁ、いる。


 まぁ、だから、いってみようかな。

と、考えていた。そして、こう答えることに決めた。


「……じゃあ、お願いします。」


あーあ、言っちゃったよ……。


でも、それほど後悔はしていなかった。


「やったー。」と、日向は笑いながら、しゃべっていた。


でも……。


「でも、どうするんですか?」


「なにが?」


 僕は受験を受けていなかった。そのため、学校にはいけないのか、と心配していた。


「受験、受けてませんけど……。」


「あぁー、編入試験を受けて合格すれば、後は私の夫がなんとか頑張ってくれると思うよ。」


 そういえば、お婆ちゃんの夫さん、まだ見たことないなー。

 何をしている人なんだろう?


「あの、お婆ちゃんの夫さんは、何をされてる方なんですか?」


「あぁ、日向と小夜君が行く高校のところの校長先生だよ。」


……え?


まさかの校長先生!?


 あー、だから、僕をなんとか高校に入学できるのかなー……?


「そうなんですね。」


「じゃあ、そうと決まったら準備をしないと。」


「はい!」


 僕のために、こんなにも優しくしてくれるなんて……。


「ありがとうございます!」



 そうして、僕は、学校に行き、高校生になることが決まった。


これから、頑張ろーーー!!


 僕は、お婆ちゃんに出してもらうお金を、無駄にしないように頑張ろうと決意したのであった。

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