第8話 水谷さんとのお出かけ 2
そして昼になり、僕のお腹もだんだん減っていった。もうちょっと時間がたてば、お腹がなってしまいそうなくらいだ。
「どこでご飯を食べようか?」
すると、本当にちょうどいいところで日向が僕に尋ねる。
「え、僕もお腹空いてはいるけどさ、それを僕に聞く?」
「うん。だって私、友達とショッピングモールに来たの始めてだもん。」
「僕もだ……」
……え?
今、友達って言った?
もしかしたら、いやいや、きっと聞き間違いなのだと思ったので、取りあえずもう一度聞いてみるっていうか、聞き返してみることにした。
「え、えーっと、と、友達なの?」
「え、そうでしょ。そうじゃないの?」
「あ、もしかして……」
「私を彼女だとおも……」
「それはない!」
いや、なんでだよ。彼女とかあり得ないでしょ。
っていうか、友達でさえ、できたこと1回もないんだけど……
いや待てよ。1回あったような無かったような?
まぁ、そんなことは今この状況ではどうでもいいことだな。
「で、どこで食べるの?」
「日向……は、なにを食べたいとかある?」
「私は……パンケーキとか食べてみたいかな?なんか憧れだよ。女子高生になるっていうか、JKになるっていうかさ。なにかよく分かんないけど食べてみたくない?」
「じゃあ、そうするか。」
「ありがとう。でも、日陰は本当にそれでいいの?」
なぜか、自分が日向のことを日向っていうよりも、日向に僕のことを日陰といってもらうほうが恥ずかしいな……。
ん?でも、パンケーキはおやつの分類に入るのかな?いや、バナナはおやつに入りますかって聞いたら、どうなのかは分からないけれど……
パンケーキはもう完全におやつだよね。
「えっ、ちょっと待って。そのパンケーキっていうのは、昼ごはんにっていうこと?」
「うん、昼ごはんにっていうことだよ。」
まぁ、それでもいいか。
そう納得した後、僕はこのショッピングモールにスイーツが食べられる店を探した。
そして、その中から良さそうな店を2、3個選び、日向に決めてもらうことにした。
そして、その店に向かった。
「来たけど……。」
「うっ……」
僕たちがついた店は、いかにも女子高生が使いそうな店だった。窓から見てみると、店内はピンク色一色で固められていて、男性というだけでも入りにくいのに、さらに僕のような地道系なら、なおさら入りにくい。
「うわぁー……。」
なんでここを候補の1つとして、選んでしまったんだろう……?
たしかに、食べ放題ではあったけど……。
僕は僕が選んだ選択に絶賛後悔中だった。
「ホントにここでいいの?」
僕が嫌そうな顔をしていることに気付くと、日向は、僕に問いかけた。
「だ、大丈夫。」
「全然大丈夫じゃないじゃん。」
「ホントにいいの?」
うっ……。
「ま、まぁ、入ろう。」
僕は覚悟を決めると、深呼吸をして、その店の中に入った。
それに、日向がパンケーキを食べたいと言っていた。あと、一応日向は主人?なので願いは叶えないといけないからね。
横では日向がいまだに僕のことをみて心配しているようだった。
中に入ってみると、さらに僕を攻め立てるような事態が起こった。そこでの分布を聞いてみると、理由が分かる。
分布は次のようだった。
男子0割、女子10割
あっ、うん、知ってたよ、知ってた。だいたい周りを見ればわかることじゃん。
……すごい気まずいんだけど……。
そして、日向はこれほどか、というか、その量がどこに入っているの?って言えるくらいまで食べ続けた。
一方僕は、この場にいること自体緊張していて、ほとんど食べられていなかった。
そうして、夕方になり、家に帰ってきた。
ふぅー……。
ここまで遊んだのは、本当に久しぶりだなー。でも、友達……?と、ここまで遊んだのは始めてだな。
それにしても、本当に恥ずかしかったな。日向が周りから注目されていて、もしかしたら僕は彼氏に思われ……いやいやいや、うん。それはないな。
他にも、日向と遊園地とかも行ってみたいな。遊園地に行ったら……。ふふっ、楽しそうだな……。
……うぅ、あれ?……。何でこんなことを、考えちゃうんだろう?
部屋にだいたい引きこもっていた時は、時間の流れがすごく遅く感じた。
そのため、家事以外していない僕にとって暇な僕には少しばかりこの時間の流れの遅さはきつかった。
そして、それが慣れるのにもかなりの時間を使った。
なのに、その努力もこのお出かけによって水の泡だ。
でも、後悔することはなかった。また、楽しさを覚えてしまった。
それどころか、新しい楽しさまで見つけてしまった。
今日の感想は、単にこうだ。っていうか、何もそれ以外は思いつかない
『本当にあっという間だったなー。』
と、いうことだった。
初めて、友達……かどうかは分からないけど、家族以外の人と一緒に出かけるということを実感した。
もしかしたら子供の頃にもあったことがあるのかもしれないけど、きっとそれとは違う。
今だからこそできる友達とのお出かけは多くある。
今、友達のいない僕にとって、友達はいいものだと、皮肉にも思ってしまったのであった。
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