第6話 初仕事 3

そして、夕方になった。


「はい、次は……お風呂か。」


 僕は、お婆ちゃんのくれた紙をみて、次に何をするか確認する。


 そして、次を見て、これはやれと言われても流石に無理だと思っていたら、その紙には『お風呂に入れさせる』とかいてあったので、僕はお風呂に入れと促すだけでいいと考え、安心する。


「よし、無理。これはさすがにメイドさんに任せよう。」

「すみませーーん。」


 そして僕は、周りを見渡して、一番近くにいた少し仕事が一区切りすんで、暇そうなメイドさんに声をかける。


「あのー……?」


「はい、何でしょうか?」


「あ、あの、水谷さんにお風呂入れさせてあげてもらえませんか?ちょっと、僕じゃあ、ちょっとむりなんで……。」


「はい、分かりました。あ、今から入られますか?」


「あ、はい。そうだと思います。」


「分かりました。」


 よかったー。


 つい一息ついてしまう。そして、そのメイドさんの仕事を増やしてしまっていることはわかっているので、感謝の念をしめしておく。


「ありがとうございます。じゃあお願いします。」


ほんとにメイドさん、ありがとう、と心の中でも感謝。


 そして次は……と、次にするべきことを紙を見て確認する。


 水谷さんの部屋の掃除……か。じゃあもう早速部屋に向かうとするか。


 今日は始めての仕事だったけど、すごい疲れたなー。


 それにしても、僕から見ての水谷さんのイメージとの代わり具合が本当にすごかったなー。


 とか、いろいろと考えながら、僕は水谷さんの部屋に向かう。


「あ、そうだ。その前に。」


 しかし、掃除道具がない事に気付いて、水谷さんの部屋に向かう前に掃除機だったり雑巾だったりとがおいてある場所に取りに向かう。


 見周りっていうか、周って何がどこにあるのかを確認していたので、迷わずそこまで向かった。


 そして、それを取ると再び水谷さんの部屋に行く。


ガチャッ


えーっと、まずは掃除機か……。


 そして、部屋中に掃除機をかける。メイドさんが毎日僕が来るまで掃除機をしていたのか、水谷さんがずっと寝ていたのかは知らないが、とてもきれいで、少しぐらいしか汚れが残っていなかった。


 終わると、次は濡れている雑巾を右手に、乾いた雑巾を左手に持って、部屋を濡れた雑巾できれいにしては乾いた雑巾で濡れているところを乾かす、という作業を何度も何度も繰り返す。


「ふぅ……。」


 取りあえず床の掃除を終えると、少し疲れてしまったので、休ませてもらうことにした。


「いったん休ませてもらおうかな。」


そういって、水谷さんのベットの端を使わせてもらって、寝転がった。


 ふぅーー、これをちゃんと毎日しないといけないのかー。


 そして、僕がいったん寝転がって休んでしまったことで、今日昨日まではあまり運動していなかったことが少し不運だったようで、我慢していた疲れを、一気に感じてしまった。


 そして、僕はいつの間にか、眠ってしまっていたのであった。












「んんーー……。」


 あ、やべっ、眠ってしまっていた!


 目が覚めて気づくと、周りはまだ暗く、カーテンからは、光もまだ差していない。今はまだ夜だということが分かった。


「……ん?」


 するとなにかが、布団の中で僕の足とぶつかった。


「なんだろう?僕、なにか物をおいたっけ……?」


 布団を少し上げて、よく見てみると、そこには水谷さんがいて、僕の隣で寝ていた。


「……水谷さん!?」


 そして、少し考えるとその理由が簡単に分かった。


「……そうだ、水谷さんの部屋で布団を整えようとして、眠ってしまっていたんだ。」

「……早くでないと!」


 そして、今ここは水谷さんの部屋で、僕はその水谷さんの部屋で寝ちゃっていることに気付いた。


……あっ……やば……。


 僕は、急いで布団から出ようとした。

 しかし、無理だった。


「……動、かない……。」


 それもそのはず。僕は水谷さんに捕まっていたのだ。水谷さんは、僕の足に抱きつくようにして寝ていたのだった。


 僕は抱き枕か!


 なんて、恥ずかしさを紛らわすために心の中で突っ込みながらも、それでも恥ずかしさには勝てず、結局ふつうの状態に戻る。



う……寝相……。


 それにしても恥ずかしいなー……。

 何とかしてでないと。


「うっ……。」


 なのに、なぜか動けば動くほど、水谷さんの腕に捕まってしまった。


「うぅー……。」


 起こすにしても、自分が原因なんだし、それに起こすにしても恥ずかしい……。

 しかも、寝ているところを起こしても悪いしな……。


そして、僕は結局あきらめて、その場で寝ることに決めた。


 恥ずかしくて、いつもより眠るのに時間はかかったけど、それでもまだ疲れは取れていなかったのか、また寝ることができた。

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