第4話 初仕事 1

コンッコンッ


 何かを叩く音によって、僕は目を覚ました。


「……ん、知らない天井だ……。まぁ別に、ここがどこなのかは知っているけど。」


 そして、僕は少しでも眠気を覚ますために、いつものように目をこする。


 そして、ベッドの横にある小さな棚においてある、いかにも高そうな時計を見て、時間を確認する。


 最初見たときは、さすがだな、ぐらいしか言えなかった。


 うん。僕のコミュニケーション術の低さがかんたんに伺うことができる。


 ……そして、ネットショッピングを見ていたことが、無駄になったなー、とも思ったけど。


「あ、もう7時か。そういえば、いつから何をするとかまだ聞いてなかったな。」

「それにしても、この時計、本当に何円するんだろうな。すごい高そうだな……。」


 そして、この時計を見つめていると、また扉を叩く音が聞こえた。


コンッコンッ


「……あ、やば。そういえば扉がなっていたな。忘れてしまっていたな。」

「はーい!」


 返事をして、僕は部屋の扉を開けた。


「何でしょうか?」


 すると、そこには、昨日案内してくれた執事さんがたっていた。その執事さんはもう執事の服に着替えていて、僕はまだそれに着替えていなかったことに気付いた。


「ご主人様がお呼びです。」

「あと、ちゃんと服を着替えてから来てください。服はタンスの中にありますから。」


「あっ、分かりました。ありがとうございます。」


 そして、タンスから服を出して着替えると、急いで階段を降り、あのお婆ちゃんがいるところへむかった。


「おはようございます。」


「あ、おはよう。」


「で、何をすればいいんですか?おばあ……」


 あれ、なんて呼べばいいんだろう?お婆ちゃんって呼んだら何かおかしい気がするし……。


 そう考えて、なんと呼べばいいのかを聞くことにした。


「あ、あの、なんてお呼びしたらいいんでしょうか……。」


 すると、お婆ちゃんは、少し考えて僕の問いに答えてくれた。


「お婆ちゃんでいいよ。」


「でも……。」


「私がいいって言ったんだからいいよ。」


「……はい、分かりました……。」


 うぅー、一応偉い人なのに……。


 なんてそんなことを思っていると、僕は僕自身がなんで呼ばれたのか、まだ分かっていないことに気が付いた。


「それで、何でしょうか?」


「あ、そうそう、今日は仕事内容について、とか、この家のルール、とかを勉強してほしいんだよ。」


「あっ、分かりました。」


「で、あなたは、得意な家事とか、作業とかある?」


 僕が得意な家事?

 でも、独り暮らしをしていたし、ある程度のことなら、1人でできていたしな。何でもある程度のことならできるかなー?


「まぁ、だいたいのことならできると思います。独り暮らしなんで、料理とか掃除とか、自分でやっているんです。」


 そういうと、お婆ちゃんは、じゃあ、あの子の世話係でもやらせてみようかな、とか呟いて僕の仕事を決めた。


 しかし、僕にはお婆ちゃんのつぶやいていたことが何なのかわかっておらず戸惑っていた。


 だが、それもすぐにおばあちゃんが教えてくれた。


「じゃあ、私の孫の世話係をやってもらおうかな」


 そうだっ、気になっていたし、今ちょうどいいような感じだし、聞いてみるか。


「あ、そういえば家族って今何人ぐらい住んでいるんですか?ここに執事さん、メイドさんたちと、お婆ちゃんだけで住むには少し広い気がしますし……。」


「あぁ、私と私の孫、あと、私の夫の3人暮らしだよ。たまに、孫の両親も来るけどね。それに、夫は帰りが遅くて、出るのも早いから、あまり会えないと思うけどね。」


 へぇ、孫がいたんだ。今、小学生くらいかな?


 などと勝手に決めつけていると、そのお孫さんが今いないことに気が付いた。


「あのー、それで、今お孫さんは?」


「多分寝ていると思うけど……。」

「まぁ、お願いしてみても大丈夫かい?」


「分かりました。」

「そういえば、お孫さん、昨日はどこにいらっしゃったんですか?」


「多分寝ていたね……。」


「……。」


やっぱり、小学生じゃなくて、赤ちゃんなのかな……。


「あ、そうそう。」


「はい?」


「じゃあ……。」


 そう言った後、お婆ちゃんは服のポケットから紙と鉛筆をだし、なにかを書き始めた。


「あのー、何を書いているんですか?」


「することリストよ。本当にすること多いからね。」


「あっ、ありがとうございます」


 書き終えると、僕に紙をくれた。ありがたいな。僕、ちょっと忘れっぽいし。


「あともうひとつ」


「はい?」


「あの、あなたの名前ってなに?」


 何を今さら……。


 なんて思っていると、僕が名乗っていないことに気づいた。


「あ、すみません。さやひかげです。」


「いいよいいよ。それにしても、珍しい名字だねぇ」

「漢字でどうかくの?」


「小さい夜に日陰とかいて小夜日陰です。」


 そして、お婆ちゃんはありがとうと言うと、どこかに行ってしまった。一人になると、僕はお婆ちゃんが書いたすることリストをみて驚いた。


「……な、なんでこんなに?」


その紙には、こんなことが書かれていた。


1、起こす


2、服を着替えさせる


3、朝ご飯を食べさせる


4、歯磨きさせにいく




「……普通自分でできることも書いてあるし……。」

「……もしかして、朝ごはんってかいてあるから赤ちゃんではなくても、幼児だったりするのかな……。」


 確認していって、最後には、こう書かれていた。


『正直、めんどくさいって思うかもだけど、頑張れ!』


「……まぁ、とりあえず起こしにいくか。」

「そういえばどこなんだろう?お孫さんのへ……。」


紙の裏側には、ご親切に、簡単な感じではあるけど、地図がかかれていた。


「ありがたいな。」

「えーっと、あ、僕の部屋の隣なんだ」


すごいな……!僕は、準備の悪さとかも感じて、面接を落としたところもありそうだし、頑張ろうっと。


 そうして、お婆ちゃんのお孫さんの部屋にたどり着いた。


「……ここかな?」


 とりあえず、扉を叩いて、起こそうとしてみた。


コンコンッ


「……入ってみていいのかな?」

「お孫さんって男性なんだろうか。それとも女性なんだろうか。聞いておけばよかった。でもまぁ、どちらでも結局行くことになるんだしいいか。」

「それに、あれだけのことが書いてあるってことは、多分幼児だと思うし大丈夫か……な?」

「……失礼します。」


深呼吸をすると、扉に向けて声をかけた。


「これが僕の初仕事だな……。」


 ……ふぅ。よしっ!


 小さめにそうつぶやくと、僕は、まだ電気のついていない暗い部屋の中へと入っていった。

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