第12話 そして新たな物語がはじまる……。

 深夜。

 午前2時。

 烏ヶ森からすがもりの人喰い沼の淵にひとりの男が立っていた。


 フード付きの黒いロングコートをまとった男だ。

 ロングコートの裾が夜風にあおられ、パタパタとはためいている。

 フードを目深に被った男の目が闇に光った。

 小さな波紋が広がる。

 水面は墨を流したかのように黒く果てしない深淵を映し出している。

 闇に隠された男の口が開いた。


「ありがとう。きみのおかげで面白い獲物が見つかったよ」


 また波紋が広がる。

 その声に呼応するかのように。


「きみはそこで眠っていてくれ。

 なあに、心配はいらない。ぼくがたっぷり楽しんだあとは、きみのもとに送り届けてあげよう」


 すると――


 ごぼ…ごぼ…と水面が歓喜をあらわすかのようの泡立った。


「では、楽しみに待っていてくれ」


 男がコートの裾を翻し闇に消えた。

 ……まだ、物語は終わらない。



   異常性欲絞殺魔


         END

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異常性欲絞殺魔 八田文蔵 @umanami35

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