第46話 希望

 「山内先生と、部活仲間の人たち!」


 山内先生や、大翔の部活仲間の人たちに病院で最後に会ったのはだいぶ前のことなので、すっかり忘れていた。


 今まで藤咲さんに固執していたが、優佳に話して考えが広がったおかげで思い出すことができた。


 「えーっと、山内先生って確か美零がだっけ?」


 「うん。いろいろあったけど、今でも先生はこんな私のことも気にかけてくれるんだ。すごくいい先生だよ。」


 「その先生か、大翔君の部活仲間のどっちかに大翔君のことを聞きに行くんだよね。美零はどっちに聞きに行くの?」


 「の日も近いし、できるだけ早く、明日にでも先生のとこに行こうと思う。」


 山内先生がサッカー部の顧問だと言っていたが、さすがに部活中の人たちのもとへ突撃するわけにはいかない。行くなら、学校が終わってから部活が始まるまでの間だ。


 それに、大翔の部活仲間大翔の同学年ならまだしも、あまり川崎東高校の生徒たちには会いたくない。


 「そっか。私は面識ないし、そもそも学校には入れないから一人で行くんだね。」


 「うん。優佳にはあまり迷惑かけられないしね。」


 「だーかーらー。一人で背負い込みすぎないでって、さっき言ったばっかだよね。」


 「わかってるよ。でも、これだけは私がやらないといけないことなんだ。ありがとね、優佳。」


 優佳は少し心配そうな顔をしていたが、美零の強い意志を感じたのか、笑顔で応援してくれた。


 それだけで、どれだけ優佳が自分のことを思ってくれているのかが伝わってきて、嬉しかった。


 優佳のおかげで希望が見えた今、美零の顔には自信が戻っていた。


 「うん!やっぱり美零は笑顔じゃなくっちゃね!」


 もう自分から言うことはないと言って、優佳は立ち上がった。


 時計を見ると、すでに遅い時間になっていたので、そのまま駅に戻ることにした。


 駅に戻るまでの二人の表情は、ここに来たときよりもずっと明るくなっていた。



―――翌日

 (1カ月ぶりかぁ、それしかたってないのに、なんだかすごい久しぶりな気がするな。)


 校門を通り、そんなことを思う。


 授業の終わり時間に合わせてきたので、今から校舎へ向かう美零は、帰宅をする大勢の生徒たちとすれ違ったが、美零も川崎東高校の制服を着ているので、特に不審がられることもなく校内へ入ることができた。


 その途中で、何人かの生徒から視線を感じたり、こちらを見ながらこそこそと話しているような気もしたが、今はそんなことにかまっている時間はない。


 昨日のうちに山内先生には連絡を入れといたが、念のためサッカー部の練習場所を確認してみたが、先生の姿はなかった。


 校舎に入り、できるだけ目立たないように顔をうつむけながら歩いていたが、誰にも会うことなく職員室へ着くことができた。


 「ふぅ。」


 (悪いことしたわけじゃないんだけど、職員室に入る時はなんでか緊張しちゃうな。)


 こればっかりは全然慣れない。一度深呼吸をしてからノックし、扉を開く。


 「2年1組の天音美零です。山内先生はいらっしゃいますか。」


 部屋の中にいたほとんどの教師が、こちらに振り向いた。


 その中で、山内先生もこちらに振り向いて、何も言わずに歩いて来た。


 「久しぶりだな。天音。元気だったか?」


 「お久しぶりです。先生もお変わりないようで。」


 「ここじゃあなんだから場所移すか。」


 「はい。」


 山内先生の後ろをついていくと、普段からあまり使われていない教室に連れていかれた。


 この教室に着くまでに何名かの生徒とすれ違ったが、近くにクラスがないので、生徒の姿はいなかった。


 教室に入り、山内先生と対面する形で席に座る。


 「それで、仕事の方は順調か?」


 「それなりに。」


 「そうか。それならいいんだ。」


 それからも、いつも通りのなんでもない会話を続けていく。その途中も山内先生の表情や、口調から先生が美零のことを本当に心配してくれていることが分かる。


 月に一度ほどしか会うことはないが、山内先生は美零と顔を合わせるたびに、安心したような顔をしている。美零からしたら、第二のお父さんのような人物だ。


 だが、ほんの少しだが、今日の山内先生は歯切れが悪いような気がする。それに、いつもは友達のように接してくる先生が、少しよそよそしい気もする。


 (やっぱり先生は大翔君について何かを知っている。そろそろ本題に入ろう。)


 「先生は最近大翔君に会いに行きましたか?」


 「あぁ、、、会いに行ったぞ。」


 「そうですか。それはいつ頃のことか、覚えてますか?」


 「2週間くらい前のことか。」


 「その時、大翔君とはちゃんと会って話したんですよね?」


 「ああ。そうだ。」


 やはり、美零の勘は当たったらしい。山内先生は大翔について何かを知っている。そして、そのことを美零に隠している。


 「先生。私は―――」


 「天音。お前が今日ここに来た理由はなんとなくわかってる。大翔のことを聞きに来たんだよな?」


 大翔について聞き出そうとした美零は、山内先生の声にさえぎられた。


 「その反応。やっぱりそうなんだな、、、はぁ。本当は大翔に止められているんだが、仕方ないか。」



【あとがき】

前回の投稿で、最低でも週一ですると言っておきながら、早速約束を破ってしまってすいませんでした。


あと1,2週間もすれば大学生活にも慣れてくると思うので、それまでは少し投稿ペースが乱れてしまうかもしれませんが、すいません。


作品的にも、これからどんどん物語が動いていくので、楽しみにしていただけると嬉しいです。


コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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