第28話 楽しいお茶会

 2人の軽い口喧嘩も少し落ち着いてきたころ、2人が持ってきてくれたお菓子でお茶をすることになった。


 「大翔君大翔君。これもどう?美味しいよ?」


 「あぁ、ありがとうござ、ありがとう。」


 「ちょっと優佳。」 


 優佳さんがお菓子を進めてきたので、それを受取ろうとすると、美零さんに止められた。


 「さっきからどんどん大翔君にお菓子進めてるけど、少しは休ませないと大翔君がいっぱいいっぱいでしょ。」


 「ごめん大翔君。もしかして迷惑だったかな?」


 優佳さんが上目遣いでこちらを見てくる。本当に女性の上目遣いはずるいと思う。なんでも許せてしまう気がする。


 それが優佳さんほどかわいい人ならなおさらだ。


 「い、いや、そんなことはないけど...」


 決して迷惑ということはなかったが、優佳さんに次々にお菓子を進められて食べ続けていたため、少し辛くなってきたとこだった。


 「初対面の人にこんなにぐいぐい来られたら普通断りにくいでしょ。」


 「わかったよー。ごめんね大翔君。」


 「気にしないでくだ、気にしないで。」


 優佳さんにお菓子を進められなくなるのはそれはそれで悲しかった。


 「そういえば大翔君ってあと何ヶ月後くらいに退院できる予定なの?」


 「一応は6月か7月位って言われてるけど、俺のリハビリ次第て感じかな。」


 「・・・そっか。あと半年もないんだね。」


 「ん?まああと半年くらいで退院だね。」


 「あ、そうだね。頑張って。ね!美零。」


 「え?ああ、うん。そうだね。」


 そう。あと半年で退院してしまうのだ。2が、今までのように毎日は会えなくなってしまう。


 それは仕方のないことだが、会えたとしても月に1度か2度だろう。今の大翔には考えることもできない。


 「それじゃあさ、大翔君が退院したらうちの学園祭来てみてよ。時期的にはギリギリ行けると思うから。」


 「学園祭?」


 「そう学園祭。うちの学際は神奈川でも結構有名なんだよ。」

 

 「あ、前に聞いたことある。」


 去年、部活の仲間でいこうとしたこともあったが、部活があったせいで行けなかった。


 「来てくれるかな?」


 「部活がなかったら。」


 「ありがとー。あ、そうだ、まだまだ先の話だけど、その時に連絡取れないと不便だろうから連絡先交換しない?」


 先ほどから距離が近かった優佳さんの距離がさらに縮まる。女性経験0の大翔にはかなり厳しい距離感だ。


 「俺のでよければ。」


 「本当に!ありがとう。じゃあさっそく交換しようね。」


 大翔がスマホを差し出すと、優佳さんが連絡先の交換をやりだした。


 「ごめんね大翔君。優佳っていつもこんな感じなんだけど、今日は特にテンションが高いみたいで。」


 「気にしないで。俺も元気な人が近くにいると楽しくなってくるから。」


 優佳さんがポチポチとスマホを操作している間に、美零さんが申し訳なさそうに謝ってきた。


 「それに2人が楽しそうだと俺の方も楽しくなってくるから大歓迎だよ。そういえば気になってたんだけど2人はクラス一緒なの?」 


 「え、あぁ、うん。そうなんだ。学校でも結構一緒にいることが多いんだ。」


 「そうなんだー。楽しそうなクラスだね。」


 「うん...そうだね。」


 (楽しそうというか、そんなクラス天国じゃん!クラスにこの2人がいたら絶対休まない自信がある。)


 「そうだ、最近蒼汰君たちは来てるの?」


 「あー。あいつらとはいろいろあって最近会ってないんだよね。」


 「え、もしかして喧嘩とかしちゃったの?」


 「いやー。喧嘩っていうわけではないんだけど、ちょっと恨みを買っちゃって。」


 喧嘩の原因があんなふざけたものだなんて、美零さんには言えない。


 「どうして喧嘩しちゃったの?」


 「えっとー、大したことじゃないんだけど...」


 それに若干だが、美零さんが関わっていると言えなくもないので、もし言ってしまえば、美零さんはすごい謝ってくるだろう。


 だが、美零さんはもちろんだが、大翔ですら悪いことはしていないので、絶対に言うことはできない。


 「終わったよー。」


 大翔がなんていえばいいのか迷っていると、タイミングよく優佳さんが話しを遮ってきた。


 「あ、もう終わった?」


 「簡単だし慣れてるから大丈夫だよー。」


 「そっか。全部やってくれてありがとう。」


 優佳さんのおかげで、どうやら美零さんにくだらない喧嘩内容を言わずに済んだらしい。


 それに、まさか優佳さんの連絡先をゲットできると思っていなかった大翔は、予想外の収穫ににやけてしまいそうだった。


 「そうだ。私ずっと大翔君に聞きたいと思ってたことがあるんだけど、いいかな?」


 「俺に答えられることなら何でもいいよ。」


 「そっかー。ずばり聞きます。大翔君には彼女がいますか?」


 「「え?」」


 全く予想していなかった質問に、大翔と美零さんの2人が変な声を出してしまった。


 「え、えーと彼女がいるかって?」


 「うん!そうだよ!ずっと気になってたんだ。」


 聞き直してみたが大翔の耳に間違いはなかったらしい。


 「優佳はいきなりなに聞いてるの。」


 「気になるから聞いてみたんだよ。美零だって知ってるでしょ?恋バナが大好物だって。」


 「知ってるけど、まだ会って1時間もたってない人に聞くことじゃなくない?」


 「善は急げってね!」


 (あれ、優佳さんの目が光ってない?)


 「いやー、彼女いない歴=年齢の俺の話なんてなにも面白くないと思うけど。」


 「えー。本当かな?嘘つかないでいいのにー。」


 「本当です!嘘じゃないです!」


 「ふうん。嘘はついてないみたいだね。でも、付き合ったことは無くても好きな人くらいはいるでしょ。」


 優佳さんの目がガチだ。


 「え?」


 どんどん優佳さんが近づいてくる。だが、今の大翔は怪我のせいで逃げることができない。


 このままではまずい。強制的に話をさせられる気がする。


 「あ、やば、美零さん助けてください!」


 「えーと、、、本当は助けてあげたいんだけど、恋バナを始めたときの優佳は止められなくて。」


 「うそでしょ。」


 「その、、、ごめんね大翔君。」


 「可愛くいってもダメです!」


 今まで優佳さんを制止してきた美零さんでも無理となると、それはよほどのものなのだろう。


 「ひ~ろ~と~く~ん。楽しい話聞かせてね。」


 「いやだぁぁぁぁぁ!」


 楽しい楽しい恋バナの時間が始まった。



【あとがき】

 個人的な話なんですが、6月から学校が再開されるので、登校時間に多少のばらつきが出ると思いますが、待っていてくれると嬉しいです。


 コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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