第27話 元気な天使たち

 (あー。緊張する。なんとなく許可したけど、美零さんの友達がこんなにすぐ来ると思わなかった。)


 あと少しで美零さんが来る時間なので、だんだんと緊張してきた。


 ふと考えてみたら、大翔は入院してから人との交流がだいぶ減った。特に女の人との交流は、美零さんと藤咲さん以外ほとんど話す機会がない。


 学校に通っていたころでさえほとんど女子と交流してこなかった大翔が、初対面の女の人とまともに会話できる気がしない。


 「さっきからどうしてそんなにソワソワしてるの?」


 「一生懸命話題を考えてるんですよ。っていうか早く出てってください。もうすぐ美零さんたち来るんですから。」


 真面目に考えている大翔にやじを飛ばしてくるのは、少し前に部屋に入ってきた藤咲さんだ。


 「天音さんたちって、天音さんのほかに誰か来るの?」


 「そうなんですよ。美零さんが友達を連れてくるって言ってたんで、話のネタを考えてるんですよ。」


 「そうなんだ。その友達ってどんな人なの?」


 「元気な人らしいけど俺もあったことないんで詳しくは。そんなことより、藤咲さんもここにいるなら一緒に考えてくださいよ。」


 藁にも縋る思いで藤咲さんに頼んでみる。実際に女性からアドバイスをもらえることはだいぶ大きい。


 「変に気を張りすぎない方がいいと思うよ。その場に合わせて、自分の話したいことを適当に話せばいいんだよ。」


 「はぁ。そういうもんなんですかね?」


 「そういうもんだよ。適当に相槌打っとけば女の子との会話は成り立つよ。」


 「もっと具体的な例をくださいよ。」


 藤咲さんのアドバイスはどこか投げやりな気がする。というか絶対適当に言っている、あまり信じてはいけない気がする。


 「まあそういうこと。人が来るなら私はもう仕事に戻るけど、よほどのことがない限り嫌われないだろうから頑張ってねー。」


 「え、ちょっと待って、もう少しアドバイスを・・・」


 大翔の願いもむなしく、藤咲さんはこちらに手をひらひらと振って、仕事に戻って行った。


 美零さんたちが来るまでもう時間はほとんどないだろう。最後の頼みも消えた今、大翔にできることは何もない。


 変に気を張っても仕方がないと、無駄なあがきはやめ、普段通りにすることにした。


 いろいろと諦め、ベットの上で美零さんたちが来るのをボーっと待っていると、大翔の部屋の扉がノックされた。


 「入っていいですよー。」


 最後に一度深呼吸をする。1カ月ほど前の、まだ美零さんと話すことに慣れていなかった頃のことを思い出す。


 部屋に入ってきたのはいつも通り可愛い美零さんと、その美零さんにも引けを取らないほどの美少女だった。


 (嘘でしょ...天使?心の準備ができてないよ!?)


 「こんにちは。今日は突然来ちゃってごめんなさい。美零の友達の桐嶋優佳です。」


 「こ、こんにちは。川崎東高校の内田大翔です。今日はわざわざあ、ありがとうございます。」


 緊張して噛んでしまった。恥ずかしくて顔がどんどん赤くなっていくのが自分でもわかる。


 優佳と名乗った女の人は、見た目からして元気そうないかにもという感じの人だった。


 だが見た目の印象とは違い、言葉遣いはしっかりしていて、話し方もお穏やかで、とてもいい人そうだった。

 

 美零さんはいつも通り私服だったが、桐嶋さんは制服を着ていた。ただの制服のはずが、なんだかとてもおしゃれに見えた。


 こんな2人が同じ学校にいたらまさに天国なのだろう。だが、今の大翔はどちらかというより地獄にいる気分だった。


 (圧倒的場違い感。美零さん1人でも緊張するのに2人なんて、、、直視できない。)


 「昨日言ったばっかりなのにごめんね。優佳がすぐに行きたいっていうから。」


 「いえ、全然気にしないでください。一日のほとんどが暇なんで。」


 「っふふ。それならよかった。それと、なんでそんなに緊張してるかわからないけど、また敬語に戻ってるよ。」


 「あ、えーと、桐嶋さんがいるからつい。」


 やっと慣れてきた美零さんも桐嶋さんと一緒のせいか、全く別次元の人のように思える。


 改めて、こんな人たちが大翔のお見舞いに来てくれていることの異常さに気が付く。


 「川崎東かー。私たちの学校と結構近いよね。今年の文化祭私も行ったよー。」


 「そうなんですか。でもほとんどシフト入ってたんで、会う機会がなかったかもしれないですね。」


 (距離を近づけようと思ってフランクに話しかけられてくれてると思うんだけど、俺にはレベルが高すぎる!)


 「大変だったんだねー。それと、美零にため口なんだから私にもため口でいいよ。っていうかそっちの方が私もうれしいし。」


 「は、はい。頑張ります。」


 美零さんにも敬語を治すのにかなり時間がかかったのに、そんなに早く順応できる気がしない。


 「優佳。急にそんなこと言ったら大翔君が困るでしょ。それに、私だって今みたいになるまで結構時間かかったんだからね。」


 「なに美零?焼いてるの~?」


 「違うって!大翔君を困らせるようなことはやめなって言ってるの!」


 軽く言い争っている2人を見ているだけで、仲の良さが伝わってくる。とても微笑ましい。 


(眼福だ。2人の会話をこのままずっと見ていたい。)


 いつも大翔が見ているものとは違う美零さんの一面が見れてよかった。今日はそれだけで満足だ。


 「迷惑だったかな?少しづつでいいから仲良くなりたいんだ。あ、あと名前は下の方で読んでくれると嬉しいな!」


 「えーと、じゃあ、優佳さん?」


 言い争っている2人を見ながらこっちの美零さんも新鮮ですごいいい。などと考えていたら、突然こちらに話を振られて固まってしまった。


 「その言い方はほぼ強制みたいなものだよ!大翔君。優佳の言ったことはあんまり真に受けなくていいからね。」


 「何それ!ひどいよ!私はただ大翔君と仲良くなろうとしただけなのに!」


 再び美零さんと優佳さんで軽い言い争いが始まった。だが、2人の顔はどこか楽しげで、見ている大翔まで楽しくなってくるような気がする。


 まだ全然慣れてはいないが、2人がとても元気なので、この調子でいけば本当に仲良くなれる気がしてきた。



【あとがき】

 最近僕のパソコンの方が悪いのか、カクヨムの方に原因があるのかわからないんですが、少し調子が悪いので、誤字が多いかもしれません。

 もし、誤字などを見つけた場合は、指摘していただけると嬉しいです。


 コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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