第18話 帰り道

 「ふぅ。」


 お見舞いに来ただけなのに、いろいろあっていつもよりもずっと疲れた。


 今日は大翔君に迷惑かけちゃったな。でもそのおかげで、今まで以上に仲が良くなれた気がするからよかったのかな。


 仲が良くなれた気がするのはいいことなんだけど、自分の行動を改めて思い出すと、かなり恥ずかしいことをしちゃったな。


 今までの感情が爆発して、大翔君の前で泣いてしまったこともそうだけど、それ以上に、最後に自分が言ったことが恥ずかしくてたまらない。


 大翔君に『美零さんに会えてよかった』と言われたことがうれしくて、つい、勢いに任せて同じようなことを言ってしまった。


 だいぶ恥ずかしかったけど、後悔はない。伝えるべきことは、伝えた方がいいということを学んだ気がする。


 それにプレゼント渡したとき、予想以上に喜んでくれたからよかった。優佳と一生懸命選んだ甲斐があった。


 優佳におすすめされて選んだボールペンったけど、プレゼントにボールペンをもらってうれしいのか分からなくて、渡す直前までずっとそわそわしてたけど、大翔が喜んでくれて、本当によかった。




―――<12月23日>病院から帰っていた時のことだった。


 「あれ、美零。どうしてこんなところにいるの」


 駅に向かっている途中、突然自分の名前を呼ばれ、驚いて後ろを振り返ると、そこいたのはモデル仲間の、桐嶋優佳きりしまゆうかだった。


 「私はちょっと用事があって。優佳こそどうしてこんなところに」


 優佳は、同じモデル仲間であり、年も同じで学校が近いこともあって、プライベートでも遊びにいくほど仲がいい。友達が少ないこともあって、優佳には今まで、いろいろなことを助けてもらってきた。いわゆる親友というやつだ。


 髪型は少し暗めの茶髪のショートカット。身長は155くらいで、小動物みたいでかわいらしい。人懐っこく、明るい性格のため、友達も多い。そんな優佳が私と仲良くしてくれるのがうれしい。


 「私は仕事帰りだよー。そうだ!これから暇?久しぶりにカフェでも寄ってかない」


 「いいよ。て言っても1週間くらい前にも仕事で会ったし、お茶しなかったっけ」


 「私は美零と毎日遊びたいのに、最近かまってくれないから寂しいんだよー」


 優佳とはほとんど毎日LINEのやりとりをしていて、その度に遊びに誘われるのだが、最近は病院に行っているせいで、以前ほどは遊べてはいない。


 近くのカフェに入り、適当にコーヒーを頼んで席に座る。椅子に座り、頼んだコーヒーを飲もうとすると、突然優佳が顔を近づけてきた。そして、なにやら険しい顔をしていた。


 「ゆ、優佳?急にどうしたの」


 「ずばり聞きます。今、美零には彼氏がいますか」


 突然何を言い出すのかと思って、一瞬身構えたけど、その内容は優佳の大好きな恋バナだった。


 「なんだ。いつもの恋バナね。前にも言ったけど、私は今まで彼氏なんてできたことないよ」


 「それは前のことでしょ。で、今はどうなの」


 「今も彼氏はいないよ。もし私に彼氏ができたら、優佳にすぐ教えるって前にも言ったよね」


 「ほんとかなー。じゃあ、最近私と遊んでくれないのはどうしてなの」


 どうやら優佳は、最近遊べていないのは、私に彼氏ができたからだと思っているらしい。


 そういえば、優佳にはまだ大翔君のこと言ってなかった気がするな。


 事故にあった日、そのことを知った優佳から鬼のように電話が来ていたが、あの日は優佳にかまっている暇がなく、大丈夫とだけ伝えて電話を切ってしまった。


 大きな怪我がないと分かった優佳は、それ以上事件のことを聞いてこなかった。


 そのため、詳しい事件のことも、大翔のことも優佳には言っていなかった。


 「最近私が忙しいのは、ここの近くにある病院にお見舞いに行ってるからだよ。」


 「お見舞い?だれの」


 それから、大雑把に、大翔君に助けられたこと、毎日お見舞いに通っていることを説明した。


 「へー。あんまり詳しくは知らなかったけど、そんなことがあったんだ。なんかドラマみたいだね」


 「まぁ、そうだよね。私もあの時は本当に死んだって思ったし」


 「笑い事じゃないんだから気を付けてよね。でもそうゆうことかー。その子と付き合ってるんだね」


 「どうしてそうなるの!?」


 優佳は今までの説明を聞いてなかったらしい。そんなことを言った覚えは全くない。


 「だってそうじゃん。最近の美零はなんか・・・楽しそう?」


 「ふふっ。なにそれ」


 優佳はこう見えて勉強ができるのだが、普段の言葉遣いなどがふわふわしているせいで、全くそうは思えない。


 「最近の美零は表情が柔らかくなった気がするよ。」


 「そんなに変わったかな」


 「うん。きっとその子のことが好きなんだよ」


 「優佳はすぐにそっちの話に持って行こうとするよね」


 「うん!恋バナ大好き!」


 中身はお子様だが、モデルである優佳にこんな屈託のない笑顔をされると、なんだかこっちの方が照れてくる。


 「さっきも言ったけど、大翔君は命の恩人であって彼氏じゃないからね」


 「命の恩人だからこそでしょ。私もそういう恋愛小説見たことあるもん。ていうか、私が美零だったら絶対その子のこと好きになってるよ」


 「もし私が大翔君のことを好きだったとしても、私のせいで大怪我をしたんだから大翔君が私のこと恨むことはあっても、好きになるわけないよ」


 「美零ってたまにすっごいネガティブになるよね」


 「そんなことないと思うけど」


 時々優佳に注意されるけど、ほかの人からはそんなことを言われたことがないから、私自身よくわからない。


 「それで?クリスマスはどこのイルミネーション見に行くの?」


 「話聞いてた?大翔君は入院中。イルミネーションなんて見に行けないよ」


 「そうだったそうだった。でも、プレゼントは渡すんでしょ」


 カップルが多くて店に入りづらいという理由を付けて、今日はあきらめたけど、まだ何を渡すか決めていなかったな。


 「そのつもりなんだけどさ、何を渡せばいいのかわからなくて困ってるんだよね」


 「え!?まだ買ってないの?明日までに買わないとじゃん」


 「そうなんだよ。ピンチなんだよ。ねぇ、優佳助けてよ」


 「いいよ!私も男の人にプレゼントしたことはないけど、恋愛小説で予習はばっちりだよ!」


 なぜか自信満々で少し不安けど、贅沢は言ってられない。今は1人でも多くの意見が欲しいところ。それに、優佳は流行に敏感だから、優佳の言ったことを信じれば、大丈夫なはず。


 「今から行く?」


 「いやー。ここら辺はあんまり高校生向きじゃないから明日にしない?私も美零と買い物したかったし」


 「私はいいけど、優佳はいいの」


 「私は空いてるよ。ってことは明日は美零とデートだね。やったーー!」


 「そうだね。私もいろいろ調べとくけど、明日はよろしくね」


 「うん」


 こうして優佳とのデートが決まったのだった。



【あとがき】

 前からずっと美零のモデル仲間を出したかったのですが、予想以上に遅くなってしまいました。やっとです(笑) 


 これからも、美零の関係者を少しづつ出していこうと思いますが、この調子だとだいぶ時間がかかってしまいそうです(笑)


 コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

 

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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