第11話 休憩

 「あ、このお菓子知ってる」


 昨日美零さんが持ってきてくれたお菓子を見て、藤咲さんはそういった。


 まだ他にもたくさんあるし、一人じゃ食べ切れないだろうし、おすそ分けしよう。


 「いつもお世話になってるんで食べてください」


 「さすがにこんな高級なのもらえないよ。大翔君が食べな」


 「え、これそんなに高級なんですか」


 「うん。1箱に5,6個しか入ってないのに結構いい値段するんだよ」


 そんなことも全然知らずに食べてた。すごい美味しいし、今まで見たことがないと思ったら、そんなに高級なものだったのか。


 「いいですよ。まだ何個かあるし、おなかすいてないんで」


 「そういうことなら頂こうかな」


 喜んでお菓子を食べている藤咲さんは、体が小さいのもあって、小動物のようでとてもかわいらしかった。


 まあ確かにこんな人がクラスにいたら人気者になるだろうな。可愛いし、基本優しいし。この人もモテるんだろうなー。


 「ん?なんだその視線。もしかしてさっきのこと嘘だと思ってるの」


 「別に疑ってませんよ。藤咲さんいい人だし、可愛いからモテるんだろうなーって」


 「え、ああ、うん。まあ今でもたまに患者さんに告白されるくらいですから」


 急に藤咲さんがてんぱりだした。


 藤咲さんくらい可愛いなら、そんなこと言われるなんて日常茶飯事だと思ってた。藤咲さんならそんなに驚くことじゃないと思ってたけど、意外だな。ていうか、俺はなんて恥ずかしいことを言ってるんだ。今になって恥ずかしくなってきた。


 「へー。患者さんに告白されるとか実際にあるんですね」


 藤咲さんが悪ふざけだと思ってる中に本気の告白があったと思う。勇気ある患者さんたちの泣いてる姿が想像できる。


 「それで、付き合ったんですか」


 「お断りさせてもらったよ」


 「いい人がいなかったんですか」


 「そういうわけじゃないよ。患者さんと付き合うのはちょっとってだけで、その人たちが悪かったわけじゃないよ」


 その言葉を聞いて大翔の頭が真っ白になった。


 「へ、へー。そうなんですか。じゃあその人たちが退院してから告白してきたら、付き合う可能性はあるんですか」


 「それはもちろん!まあ今までそんな人いなかったんだけどね。結局は入院中のお遊びってことでしょ」


 数秒前まで真っ白だった頭の中が、どんどんカラフルな花で彩られていく気がする。


 「そうなんですか。その人たちはもったいないことしましたねー。今頃泣いてますよ」


 「そんなことないと思うよ。どうせ今頃、違う女の人ともうすぐクリスマスだねーとか言ってるんだよ」


 「別に藤咲さんもその気になれば、彼氏なんて病院の外でいくらでも作れるでしょ」


 「そんな簡単に彼氏ができるんだったら苦労しないよ。私が何年一人でクリスマスを過ごしたと思ってるのさ」


 「クリぼっちどころか彼女いない歴=年齢の俺に言いますか。ていうか、藤咲さん彼氏いないんですか」


 「ここ数年いないよ。これでも看護師って忙しいんだからね」


 藤咲さんに彼氏がいないことはかなり大事件だった。明るい性格だから男受けもよさそうなのに。


 藤咲さんも美零さんもレベルが高すぎて周りの男は手を出せないのかな。


 「おっと。もうすぐお昼の時間だ。配りに行かないと」


 「こんなとこでサボってないで、病院に来てる男の人との出会いにでも賭けたらどうですか」


 「休み時間は休むためにあるんだよ。じゃ、すぐご飯持って来るからねー」


 出て行ってから5分もしないうちに藤咲さんはご飯を持ってきてくれた。


 ご飯を食べている間も藤咲さんは部屋にいるのかと思ったが、藤咲さんもさすがにそこまで暇ではないらしく、トレーを回収してすぐにどこかへ行ってしまった。


 午後1時過ぎ、先ほどよりも雪の勢いが強くなってきたころ、しっかり聞こえる音でドアをノックされた。


 こんだけ頻繁に訪れるということは、少しは気があるのではないかと思いながら返事をする。


 「こんにちは。大翔君」


 予想とは違い、部屋に入ってきたのは藤咲さんではなく、美零さんだった。


 俺の学校は明後日から冬休みだから、てっきり美零さんも同じだと思ってた。けど、一日早かったのかな。


 「こんにちは。美零さん。美零さんの学校ってもう冬休みなんですか」


 「えっと・・・あ、明後日からなんだけど、今日は午前中だけだったんだ」


 「そうなんだ。なら俺たちと同じですね」


 「そうみたいだね。それより大翔君。また敬語に戻ってるよ」


 「あ、わかってる。わかってるよ」


 「ほんとかなぁ」


 「そういえば、昨日持ってきてくれたお菓子ってすごい高級な奴らしいけど、本当にもらっていいのかなって思って、まだ残してるけど」


 「気にしないでいいよ。大翔君に食べてもらうために持ってきたんだから」


 それからからも、他愛のない話をしていると、美零さんはこれから用事があるらしく、今日は30分ほどで帰ってしまった。


 最近は美零さんや藤咲さんと結構話しているので、女の人と話すことにも少し慣れてきた。


 美零さんが冬休み入ったらもっと話す時間長くなるかな。



【あとがき】

少し日常回みたいなものが続いていて、つまらないと思う方も多いと思いますが、すいません。あと少し待っててくれると嬉しいです。

コメント、フォロー待ってます。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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