第10話 窓の外の世界

 入院してからの初めての月曜日、いつも通り支度をし、朝ご飯を食べる。


 昨日の夜は少し美零さんとメールをしたけど、あんなに楽しいメールのやり取りは初めてだ。


 ご飯を食べながら美零さんとのトーク画面を振り返ってみる。若干飽きてきた病院食がとてもおいしく感じる。


 「あ、ご飯中に携帯いじるのよくないよ」


 「すいませ...ん?なんで藤咲さんいるんですか。さっきご飯配りに来たばっかですよね」


 いつの間にか部屋には藤咲さんがいて、堂々と椅子に座っていた。


 「そうなんだけどさー。ねえ、聞いてよ大翔君。最近患者さんが増えてきてすっごい忙しいんだよ」


 「たしかに初日よりも人が増えてた気がするけど、それと藤咲さんがここにいることに何の関係があるんですか」


 「私の担当はお年寄りの方が多いんだよね。それは全然いいんだけどさ、休憩室行っても私以外の看護師も忙しいみたいで、話し相手がいないんだよね」


 「だからってなんでこの部屋に来るんですか」


 「んー?私が担当してる中で一番年が近くて話しやすいからかな」


 一瞬期待したけど、だいたい予想通りだったのでへこむことはなかった。


 「俺も暇なんで話に来るのは全然いいんですけど、せめて入る時はノックくらいしてくださいよ」


 「ちゃんとノックしたよ。それなのに返事がないから心配して入ってみたら、大翔君スマホ見ながらニヤニヤしててこっちに気づかないんだもん」


 「え、俺そんなにニヤニヤしてました」


 「うん」


 まじか。人が部屋に入ってくるのにも気づかないで、ニヤニヤしてるってやばすぎるだろ。


 「でさ、何を見てそんなにニヤニヤしてたの」


 「えっと・・・あ、ゲームやってたらずっとほしかったキャラが出て。あー、うれしいなー」


 「大翔君嘘下手すぎてバレバレだよ」


 「ほんとですって」


 「あ、もしかして、この前来てた彼女さんとメールでもしてたのかな」


 大体合ってる。これが女の感というやつか。


 「ちがいます。そもそもあの人は彼女なんかじゃありませんって」


 「えーほんとかな。毎日来てるみたいだけど。本当のことお姉さんに言ってみな。大丈夫、誰にも言わないから」


 胡散臭すぎて全く信じられない。だが、問い詰めるようにどんどん近づいてくる藤咲さんのハニートラップ?にこれ以上耐えられる気がしない。


 このままでは藤咲さんに負けると確信したため、残っていたご飯を一気に食べた。


 「いきなりどうしたの!」


 「ッホン。あの、のど詰まらせて苦しいんで、この話終わりにしてくれませんか」


 「言ってる意味わかんないよ。やめるから一旦落ちつこ。ね?」


 そういって藤咲さんは落ち着くまで背中をさすってくれた。演技のつもりでやったが、本気でつまりかけてたので助かった。すごい嬉しい。


 それから藤咲さんは食べ終わったトレーを回収して、仕事に戻っていった。


 静かになった部屋で一人することもなく窓から外の様子を眺めていると、ちょうど雪が降ってきた。


 そういえば、美零さんが今日は雪が降るって言ってた気がする。


 すると、病院の中から数人の小さい子供たちが出てきた。子供たちは珍しい雪で興奮したのか、追いかけっこをしだした。


 俺も早く遊びたいな。


 怪我をしてからあまり考えないようにしてきたのだが、楽しそうに走り回っている子供たちを見ていると、何とも言えない気持ちになってきた。


 あの時の行動に後悔はない。むしろ、この怪我を誇りに思っている。


 だが、蒼汰たちの話を聞いたり、スマホのアプリなどで友達と遊びに行った。などの投稿を見ると、どうしても悲しい気持ちになってしまう。


 羨ましいな。


 外で楽しそうに走り回っている子供たちは時々、看護師さんに注意をされていたが、それでも楽しそうに遊んでいた。


 自分でもどうしてこんなに外の様子が気になるのかはわからないが、それでも外の世界を見ていたいと思った。


 「大翔君?」


 突然自分の名前を呼ばれびっくりして振り返ると、そこには藤咲さんがいた。


 「え!?大丈夫。何かあったの」


 「いや、特に何もなかったですけど」


 「ならどうして泣いてるの」


 「え?」


 藤咲さんに言われて自分の目を手を頬に当てると、確かに涙の跡があった。


 「ほんとに大丈夫?何かあったら私に言ってって、言ったよね」


 「ちょっと欠伸しただけですよ。ていうかなんでまたいるんですか」


 「ちゃんとノックしたってば。またスマホ見てニヤニヤしてるのかなって思って見に来たら泣いてるんだもん。それは心配するって」


 「またサボりですか」


 「休み時間だって。サボりなんてしません。大翔君と話したくて来ちゃった」


 本当は話をする気分ではないのだが、可愛いので何も言えない。


 「藤咲さんって友達いないんですか。俺は藤咲さんの方が心配ですけど」


 「今は病院が忙しいって言ったじゃん。それに、私こう見えても高校の時は、生徒会副会長でクラスの人気者だったんだよ」


 「副会長かー、微妙ですね。」


 「失礼な!」


 いつも通りの藤咲さんと話していると、モヤモヤしていた気持ちが少しづつ軽くなっていくような気がした。



【あとがき】

いつものことながら全く物語と関係ないんですが、僕はこの作品をパソコンで打ってるんですけど、最近気づいたことがあって、めちゃくちゃタイピングが早くなったんですよね!今では1話目の半分の時間で書き終えるようになりました。まあ元がひどかったのもあるんですけどね(笑)

なので、前々回くらいのあとがきで言っていた1週間に5本以上投稿という目標もどうにかなりそうです。 

コメント、フォロー待ってます。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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