16話 ヒキニート、旅に出る!?

「今年の大型連休は、例年以上に高速道路が渋滞する模様です」

 をニュースキャスターは毎年恒例のコメントを、あたかも新出かのように、原稿を読み上げる。やはり車は難しかったか。

「ねえ歩くん、ゴールデンウイークどうする?」

 不安気に俺に尋ねる綾香。フッ、彼氏を舐めるなよ。

「見ろ!これが新幹線の指定席券、それも、グリーン車だ!」

「わ~ありがとう!よく買えたね~」

「鉄オタの友達にコツを教えてもらったんだ」

「鉄オタくんもありがとね」

 そういう優しさホント女神………思わず拝んでしまった。綾香は、俺が心から『鉄オタくん』に感謝していると思ったらしく、綾香も真似て、結局二人で手を合わせる。なんだこれ。


「歩くん、このキーホルダー可愛くない?」

 はしゃいでいる綾香の方がもっと可愛いのだが「新幹線乗り遅れるから、着いてからにしような」と、親子か兄妹のように諭す。ほっぺ膨らましてもダメなものはダメ。

「帰りに買うの、絶対覚えててね!」

 普通のカップルなら、旅行の始まりとしては良い雰囲気ではないのだが、幸い俺たちにとってはコミュニケーションの一環で、怒りはなかった。

 ぽよぽよと俺は、綾香の膨らんだほっぺを突き、綾香は少し戸惑いながらも、受け入れるように、微笑んだ。あっ、照れてる(笑)

 さて、俺たちは今、京都へ向かっている。ほんの数時間でつくのだ。なおかつ初めてのグリーン車。俺もテンションが上がってきた。

「はい、食べる?」

「サンキュー」

 旅行と言えばだよな。

「そうだ、えへへ」

 なんだ?

「はゆむくん、はべてひひよ」

 綾香はクッキーの部分を口に咥え、俺の方へ差し出す。確かにこの前のバレンタインデーに「してみたいな」とは言ったけど!!!流石に社会人カップルがグリーン車でするのはまずいでしょ!

「はあくひて」

 いかがわしさMaxなんだが!?だが、俺の理性、まあたいしたことのない理性だが、その理性は案の定オーバーヒートし、恐る恐る、それでいて期待に胸を膨らまし、チョコを咥える。

「%$#&@*+◇※▲∴÷;¥!”#」

 どうやら綾香は、本当に俺がすると思っていなかったようだ。こういう反応が見れたのはある意味ラッキーだな。


 そんなこんなで、俺たちは京都へとやって来た。








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