15話 ヒキニートはお姫様!?

 俺は今、そう広くないキッチンで料理をしている。時刻は午後2時47分。昼御飯はとうに済まし、晩御飯の準備にしては早すぎる。では何故、俺は一人でホットケーキを焼いているのか。答えは部屋を一目見渡せばわかる。フォークとナイフを手に持ち、満面の笑顔でこちらを見つめるかわいい女の子がいるから。女の子と言っても、今年で23歳。立派な女性なのだが、その出で立ちはデフォルメされた漫画のワンシーンを彷彿とさせる。

 そう、俺は綾香に頼まれて、ホットケーキという名の世話を焼いているのだ。我ながら綾香にはシロップのように甘い。


 そんな上手いような下手なような、それこそ自家製ホットケーキのような例えを思い浮かべている内に完成した。

「うわーー!おいしそ~!!」

 この笑顔の為に俺は作ってたし、その言葉が聞きたかった。後はおきに召すかだが……

「ふわふわ~~~」

 思わず笑った。ふわふわが『ふわふわ』って言ってるw

「ねぇ~もっと作って作って」

「食べるの早いな!?」

 俺は二口ほど自分の分を頬張り、再びキッチンへと向かう。このお姫様が喜ぶのは嬉しいが、あまりわがままが過ぎると流石に支障が出るので、粉は隠しておいて、残しても俺が食べられるように、小さめのを2枚焼いた。


「ん~やっぱり最高!」

「そう言ってもらえて俺も作りがいがあるよ」

「えへへ、幸せだね」

「まぁ、ちょっと映画っぽいな」

「だね♪」


「結構お腹いっぱいになるな~」

「そうだね~私、歩くんより多く食べちゃったからもう晩御飯食べれないかも」

「子どもか」

「子どもじゃないもん!」

「俺はそういう綾香大好きだけど、あざとすぎで女子から嫌われてないか?大丈夫?」

「た、たぶん大丈夫。私、嫌われてそう……?」

「いや、なんとなくあざいとカワイイ系女子は、同性から嫌われるってうわさがあるから。まぁ、ニートだから関係ないか」

「そうだね」

 今日もそんな事でお互い笑いあえる。やっぱりちょっと映画っぽいな。

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