14話 迷えるヒキニート!?

「先輩は彼女とかいるんですか?」

 会社の飲み会に参加して、お酒も二杯目に到達した頃、後輩の安藤瑠璃あんどうるりが親しげに尋ねてきた。

「いるよ」

「へぇ~どんな人ですか?」

 可愛くて、色白マシュマロだが、デブではないし、むしろモデル体型なヒキニート。とは言えねぇな。

「可愛いよ」

「写真とか無いんですか?」

「写真か~あんまり撮らないからなぁ、あっあったわ」

「見せてください!あぁ~ホントだ~カワイイ。先輩はこういう女の子が好みなんだぁ」


「なんて言われちゃってさ、ん、綾香、聞いてる?」

「怪しい、怪しいよその娘!絶対歩くんの事好きじゃん!!」

「いや、からかってるだけだと思うけどな」

「他には!他には何て言ってたの!?」

「え、え~と……あぁ、そういや同棲してるって言ったら、『お仕事とかは何してるんですか?』って言ってたな」

「それでっ!?」

「専業主婦みたいな感じかな?」

 そこで照れるなよ。

「『どうして働かないんですかね?』とも言ってたけど……流石にそこまではわからんって言っといた」

「……歩くんは、私に働いてほしい?」

「そうだなぁ、別に同棲するのに困らないくらいのお金はなんとか稼げてるし、本人が嫌がってるのに、無理に働かせるのも違うと思うから」

「歩くんはやっぱり優しいね」

「そうかなぁ」

「……私ね、学生の頃、バイト先で嫌な事があったんだ………」

『どんな嫌な事が?』なんて聞けなかった。学生アルバイトなんて優遇は良くもなければ、悪くもない、単なる駒のように扱われ、大抵の学生はそれを気楽に思う。ニートに成らざるを得ないようなトラウマがあったという事だ。

「もちろん分かってるよ、別の仕事やバイトでは大丈夫なんだろうって。でも、いざ応募しようとすると、怖くて出来ない」

「綾香、もういいんだ。俺は綾香と付き合う時に誓ったぞ、養ってやるってな」

「でも……今思えば何だか悪女みたいで…」

「何が悪女だ。確かにそれが負担になって、俺が病気にでもなったり、綾香が勝手に豪遊してるなら、そうかも知れない。

 でも、二人で幸せに暮らせてるじゃん、俺たち。だからその間は、別に無理して働く必要はないから安心してよ」

「うん……!!!歩くん、大好きっ!!!」

「何だか小悪魔みたいだな」

「やっぱりそう思ってるじゃん~!!」

 うん、やっぱり綾香はこうでなくっちゃ。

「俺も綾香が大好きだよ」

「む~、私も大好き」


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