2021年10月17日

 二日間続けてゲームしかしていない、という過ごし方を久々にしてしまった。この罪悪感たるや慚愧に堪えない。と言ってもやってしまったことは仕方がない、楽しんだ時間も糧になるだろうという曖昧な認知的不協和を引き起こしつつ、ここ二日間を反省する。リモンや鳳仙などは寝食もせずにゲームに勤しむ私のことは早々に放っておいて自分たちで食事や睡眠をとっていたようでそこは問題がなく、ホッとした、二匹が私のせいで衰弱してしまったらとても悲しい。


 さて、私がやっていたゲームはBack 4 Bloodという当時Left 4 Deadというゾンビゲームを出していたチームが再び精神的継承作品として出した新作ゲームで、四人の生存者で協力しながらゾンビたちを退けてセーフルームへ逃げ込むという内容で、AIディレクターというシステムを引き続き採用し、ディレクターのさじ加減で同じステージでも敵の出現や落ちているものが変わるという仕様ゆえ、リプレイ性が高いゲームになっている。色んな人とフルパーティーを組んでボイスチャットでやり取りしながらゲームをしたが、当時のL4Dをやっていたときと同じような楽しさがあって非常に懐かしく感じた。


 当時L4Dをやっていたときはインターネットで知り合った人とゲームをするという習慣がなかったので、身内の四人で集まって遊んでいたのだが、余りにも郷愁に駆られて当時のメンバーに数年ぶりに連絡をして一緒にやらないか、と誘ったところもう家庭を持ってゲームをやらなくなった人や、ゲームそのものへの熱中度が落ちて、少しでもストレスを感じるとゲームプレイを止めてしまうようになった人などで、どうにも私を含めて二人しか集まりそうになく、悲しい気持ちになった。


 過去とは甘美なもので、この世の幸福とは過去の思い出の中にしかないと思っている人間なので今回の一件でそのネガティブな幸福論に拍車が掛かるような思いがした。今、一緒にやっている人たちはインターネットの様々な場面で知り合った人たちで、共通点はゲームだけというのもザラなのだが、それでもとても楽しく遊べるのは良い時代だなと思った。私などはプライベートの人間関係が嫌になってしまって、逃げてしまったから、インターネット上の気楽で程よい距離感の人間関係というのは心地が良く、むしろプライベートな人間関係よりも関わる時間が多くなっている。私は人間性に問題があるのでプライベートな人間関係がスムーズに行くことなど殆どない為、ネットに生かされているという感覚がすごくある。


 インターネットで知り合った人というのは多くは音楽や文学、芸術、漫画、ゲーム、映画、それらの創作に消費、といったひどくインドアで雑多な趣味の繋がりからであるが、自分の居心地の良い空間ができていると感じる。だから人がインターネットから去っていくときにはその人が死んでしまうように悲しくなるが、そういう別れもドライで良いと思う。


 それで思い出したが、そういう接点の一つにソーシャルゲームという存在もあった。当時私はソーシャルゲームを俗物的かつ魯鈍なギャンブラー精神を持った人間の遊ぶものだと決めつけて嫌悪していたのだが、その頃勤めていた職業的問題でそのゲームをやらなくてはならなくなり、嫌々始めたのだけれど、そこから私は魯鈍なギャンブラー精神に則って、様々なソーシャルゲームに手を出し始めた。そういうゲームにはだいたいクランやらギルドやらのシステムが存在し、それらで知り合った人たちと会うなどという機会も何度もあり、繋がりが出来ていった。今一緒にゲームをやったり、作業通話をする人たちもそういう繋がりで出来た人も少なくない。彼らの特徴としては一括にしずらく、本当に趣味も種々様々な場合が多い。その繋がりでユルグ・ブットゲライトの映画の話で盛り上がったり、トマス・ピンチョンについて熱く語れたりもした。ソーシャルゲームにはギャンブル中毒的な精神性以外は貴賤はあまりないのかもしれないな、などと思った次第だ。


 ともかく私が今狂わずに生きていられるのはそういうインターネットで知り合った人たちが遊んでくれたり、話し相手になってくれるからで、ありがとうインターネット、という気持ちである。

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