第7話 魔王の戦闘、その片鱗
木々は倒れ、魔王を襲う。さながら巨大な斧か槌の様に振り下ろされたそれの直撃。本来ならこんなものの下敷きになれば生物は原型を留められない。荒いミンチになればまだマシだろう。
「どおー?まだ生きてますー?」
土煙を吸わぬ様、手で口を押さえて何かに問いかける。
「聞こえているぞ。楽しい芸を持ってるじゃないか、貴様」
想定していない返答。思わず女の口から「はぁ゛!?」と今までとは全く違う声音が漏れてしまった。
「大袈裟に構えて、正面一方からの攻撃と見せかける。そこへ包囲攻撃を持って面制圧で潰す。フェイントとしては悪くない。が、それが通用するか否かを判断できていない」
女は顔をしかめる。今まで彼女が行った『神狩り』において、この制圧攻撃を耐えたものはいなかった。今回もそうだと高を括っていた。攻撃が効かなかったことに加え、そんな自身の慢心すらも見透かされている。最早、女に仮面を被る余裕など無くなっていた。
「さて、次の芸は何だ?大地を浮かせるか?空を堕とすか?それとも星や闇と同化するか?さぁ、見せてくれ。見せろ」
魔王の顔に笑みと狂気が浮かぶ。女の足が震える。視界が遠のく。
何をすればいい?どうすればいい?眼前の化け物を殺す?不可能だ。あの男に通用する攻撃を持っていない。
では逃げるのか?駄目だ。逃げた所で奴がここに住み着いてしまっては今の狩りと生活が崩壊する。
降参するのか?いや、この化け物は好戦的だ。それでこの場が治まるとは思えない。
詰まる所答えは一つ。ここで死ぬのだ。
「……出さぬか。なら引き出してやろう。無理矢理にでもな」
魔王の瞳、その奥で炎が揺らぐ。指先に黒炎を灯し、それをゆっくりと女へと向けた。
そして炎の瞬きと共に、彼らの世界はひたすらな暗闇に呑まれた。
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