第17話 ノストラダマスの大予言

その後も株価はどんどん上がり、今や1株200円を付けている。


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「SNSでも注目されているだけでなく、様々なメディアで、○○産業の新技術がPRされています!今が買いですよ!!」


インチキ投資セミナーの熱気は最高潮だ。

運営が買う→買いあおる→セミナー参加者が買う→ニュースが出る→運営と参加者がさらに買う、という流れを経て、株価はうなぎのぼりである。



疑問に思う方のために、「株価」の超簡単な仕組みについて、解説しよう。

株価というのは「発行数」が決まっているため、単純な需要、つまり「この会社は良いところだ!」と信じて買う人がいれば、たとえ赤字であろうが倒産寸前であろうが、「買われれば上がる」というものである。


もちろん、実際に東証一部に上場しているような時価総額数千億という大企業であればこんなことは起きないが、新興企業市場であるマザーズ銘柄なら、時価総額数十億円程度、という企業も珍しくない。


そんな企業に、まるでどぶに捨てるがごとく1千万・2千万というお金を突っ込むと、文字通り「時価総額の数パーセント」の株が買われたことにより、即座に価格が上がることになる。


これを自分一人でやると、「買って含み益が出るのはいいが、売って利益確定するとき、買い手がいなくて結局同じ需要の問題で株価が暴落」することになる。そこで、こんなボロボロ企業の株を「いい銘柄だ!」と信じて買うバカを用意する必要がある。これが仕手である。


このバカというのがインチキセミナーの参加者に当たるわけだが、ここに損をかぶせるなら、仕手筋とやっていることは変わらない。そこで、罠を張り巡らせ「自分は賢いと思っているバカ」である仕掛け人の皆さんに損を被っていただこう、というのが我々の計画だ。


「いやぁ、○○産業、いろんなニュースがでますなー」


その後もウェブで検索すると、様々な○○産業のごきげんなニュースが出てくる。参加者一同、ほくほくである。


「本当ですね。いや我々もびっくりですよ!」

インチキセミナー講師・サクライだ。

適当いった銘柄がまさかまさかの大当たりで、預言者いや相場の神であるかのようにあがめられている現在、ホクホク顔だ。地獄に落ちる時、どんな表情になるのか見てみたい。


「サクライ先生、株価ってなんぼほどいきますかいな?」


「いやぁ、5倍・10倍も夢じゃないですよ!」

ってことは、安めに見積もって株価500円になる前に売り逃げるつもりなわけだ。


「そうでっか!そこまでお付き合いさせてもらいますわ!よろしゅう頼んます!」



・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

まぁ、会うのはこれが最後になるだろうけどな!

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