第18話 フェイクニュース
唐突だが、「会社の名前」について、知識は御持ちだろうか?
例えばここに、「株式会社人心バイバイ」という、マザーズに上場している、ごくごく普通の貿易業の会社が東京都にあるとする。
この「株式会社人心バイバイ」であるが、「全く同じ会社名で、大阪府に設立することは可能か、否か?」。答えは「商標登録されていなければ、問題なく可能」である。これが今現在の日本の法律だ。
さて仮に。仮に、であるが。
「上場しているのとまったく同じ社名で法人を設立」し、自社の活動を外部にPRする「プレスリリース会社」を通して、「○○の業務に関する画期的開発に成功!特許出願予定!」と、でっちあげの内容を告知し、万が一それがブログメディアなどに取り上げられれば、どうなるか・・・?
もし、万が一。
その銘柄を買い集めている特定個人に、「たまたま偶然、そんなニュースが出ている」という情報が入ったら。ましてやそれが、「自分は弱者を食い物にして賢く生きているんだ!」と天狗になっているアホだったとしたら。いったいどうなるだろうか。
これが、近年問題になっている「フェイクニュース」である。
もっと雑なところだと、同名法人どころな「ニュースだけをでっちあげて」記事にするところもあるが、手が込んでいるとここまでやる。
ちなみに、「特許取得!」などの完全虚偽の内容を書けばそれはウソ・違法行為になるが、「出願する予定ですよー」という、あくまで「努力目標」を書くだけなら、それ自体は罪には問われない。
「たまたま」似たような会社があって、「たまたま」同じ業種で、「たまたま」仕手をやってる人間の目に、それが触れただけである。その後、その人間がどうするかに関しては、関知しない。新聞やTVといったメディアは何やかんやたたかれるが、こういった「情報源の裏どり」をきっちりやっているかどうかという意味においては、ネットメディアなどとは比べるべくもなくキッチリしている。
一方で近代の社会は、新聞よりネットのほうが正確な情報がある!と考える人も多い。そういった意識の隙間を狙い撃ちにする手口である。
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「仕込みは上々でんな。そしたら、利益確定しよか」
ぼちぼち、仕舞時である。
株価が取得時100円、撤退時340円ほどなので、10万株×240円で2400万円、諸経費など差っ引いても一人当たり500万の投資で1000万円ちょいの利益である。
「TwitterとかのDMで、被害者の人らには、あのニュース、未確認ですがほかの会社らしいですよ、と伝えておきましょう。そこで撤退しなかった人は、自業自得ということで」
詐欺師である仕手筋に損失を負わせることが目的ではあるが、忠告を聞かなかったアホにまで責任は持てない。
「株価が崩れたら後は仕上げに、サクライにワシが電話入れて、損したやんけ!と捻じ込めばいっちょ完了でんな。」
「このプランのいいところは、株価操縦という罪を犯していた人間が、○○社のニュースで勘違いして損した!どうしてくれる!とは間違っても訴え出れないところですね」
法律を破るのは勝手だが、そうした場合法律で保護してもらえるというのは虫が良すぎるであろう。アウトローならアウトローらしく、自分の力で何とかしてほしいものである。
「しかし、ま、手間はかかりよったけど、いい投資でしたわ。またなんかあったらよろしゅうに」
「こちらこそ。いい付き合いを続けていきましょう」
余談だが。
利益確定をした後株価は一気に270円を割り込み、またニュースがデマであるタレこみと、下落を嫌った投資家の投げ売りにより、○○産業の株価はもとの数十円前後の水準に戻ったそうな。
騙されていた投資家が逃げ切ったのか、最後まで欲と道連れになったのかは、まさに神のみぞ知る、である。
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