第16話 悪意の上乗せ

さて、ここでどうやって我々が儲けを出そうとしているか、現時点での流れを簡単に解説しよう。


まず、スズキさんから「仕手が仕掛けられている株式の情報を取得する」。これ自体は完全に偶然の産物である。普段の行いがイイから、神様がチャンスを与えてくださったに違いない!


それはさておき。

その後、フドウさんと組んで、その株式を購入する。仮にこのときの購入価格を1株100円で10万株買ったとしよう。


次に、フドウさんが仕手グループの行うセミナーに潜入し、「今後大口で購入する可能性が高い客である」とPRする。株価をつり上げている仕手グループはここで「もし大口の買いが入れば、さらに株価が上がる!儲けるチャンスだ!」ということで、自己資金でさらに株を買い足す。そうすることで株価が仮に110円になれば、実はすでにもう購入して仕込んでいる我々のは10万株×10円で、100万円が儲かる、という仕組みだ。


もちろんこれだけで終わると微々たる額だし、価格などはあくまで概算だが、「もっと大きな利益を狙って仕掛けている」、と考えてもらっていい。


さて、今の時点でも十分だが、さらなる仕掛けに入ろう。


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「サクライ先生、ここだけの話やけどな、こんなネタがありますねん!」

フドウさんがさらに仕掛ける。


「これは、これはフドウ社長!何かいいことありましたか?」


「まだ未公開情報やけどな、知り合いでニュースメディア経営してる某社がありましてな!おすすめされた○○産業の株で、新しい特許技術ができるらしいんですわ!」


「え!?」

寝耳に水であろう。

だって、仕手グループはあくまで「取引高が少なくて株価がつり上げやすい銘柄を、適当に優良企業だとでっちあげてつり上げているだけ」である。本当に画期的な特許が取得されるとなると、適当に勧めていた株価が、本当に急騰することになる。


「ほらこれ、公開される予定のニュースのゲラ刷りですわ!」


「ほ・・・ほう。すごい情報網ですね」


「いやいや、サクライ先生が勧めてくれたおかげでワシもアンテナ張れたんですわ!先生様様ですわ!」


「ちなみに、このニュースの公開日は?」


「1週間後ぐらいらしいでんな。」



種明かしをしてしまうと、もちろんこれは「それっぽく作ったウソのニュース」である。雑誌っぽくゲラ刷りしているのは、その辺のデザイナーに2・3万で依頼すれば簡単に作ってくれる。


「いやぁサクライ先生、ほんまありがとうございます!ほかの知り合いにも株買うように言うときますわ!」

もちろん、「言うだけ」である。


「い・・・いやぁお役に立てて良かった!すいません、次のアポがあるのでこの辺で!」

そそくさと撤収していく。おそらく、仲間と急きょ打合せを行うのであろう。


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「へっへっへ、簡単なもんでんな」


「だまそうとするほうは、自分が騙されるとはなかなか考えないもんですよ。ましてや、いったんカモ認定した相手なら、なおさらです」

人間、いったん思い込めばこんなもんである。


「ほな、仕上げに入りまっか」


「ですね。我々はあくまで運営側にニュースソースを共有するだけ。ここから先も、サクライ先生に頑張っていただきましょうか」



ゲームは中盤戦。

ここからが本番である。


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