第17話「ハッ……すみません、ちょっと……」

 今日は朝から大変だったなぁ……。咲良さくらには住所特定されるし、友李 ゆりは一昨日の優しい態度が嘘かと思うほどドSだったし。


-ガラガラガラ


「ホームルーム始めるよー!」


 ん……あぁ、先生か。なんだってあんなにテンション高いんだか。


 教室に入ってきただけなのに、なぜ担任がシャイニングしてるのか気になった俺は、少しその理由を考えてみた。


 ふんっ、俺の脳は既に6Gという規格外の速さで物事を処理することができる! まぁ、そんなことしたら脳が溶け落ちちゃうから使わないけどねっ!



 俺の中で一つの仮定……というか、もう確信したのだが、これはあれですね、転入生がくるパティーンですね。


 どうでもいいんだけど、パティーンって、初見しょけんパンティーに見えてドキドキするね!


 それはそうとして、先生さっきから廊下の方をチラチラみてるし、これは間違いないな。


 そんで……転入生には、ちょいと思い当たる人物がいるのだが……やばい、変な汗かいてきた。


「突然ですが、このクラスに帰国子女が転入することになりました。入ってください」


「はい!」


 ほら転入生だ! 落ち着け、俺。まだあいつと決まったわけではない。帰国子女はこの世界に何万人といる! 希望を持つんだ!


 俺は、自分に苦し紛れの言い聞かせをした。


 笑顔で教室に入ってきたは、普段の俺への態度とは一変して、まるで童話のお姫様のような話し方で自己紹介を始めた。


「今日からお世話になる霧宮きりみや友李ゆりです! よろしくお願いします」


 やっぱあいつかぁぁぁぁ! いや、薄々わかってましたけどね!


 落ち着け、平静へいせいだ……平静をよそおうんだ!


 そんなことを思った俺なのだが、なぜだろう……気がつくと、頭を机に打ち付けていた。


-バンバンバンバンバンバンッ


 いぃぃぃぃやぁぁぁぁ! 頭痛いのもあるけど……これからあいつにひどい扱いを受ける、下僕げぼくライフを想像すると……嫌だぁぁぁ!


「た、平良たいらくん!? どうしたの?!」


「ハッ……すみません、ちょっと……」


 先生の声に気づき、俺は頭を打つのをやめて返事をする……はずだったのだが、変わりに友李が話し始めた。


「先生……多分、尋斗ひろとは喜んでくれてるんだと思います。何年かぶりに会ったから……ね? ヒロくん?」


 嘘ついてんじゃねぇよ!? 一昨日会っただろ?! なんなら今日も一緒に登校したんだが?


 しかもなんで、俺じゃなくて咲良のこと見ながら喋ってんの? 怖い、怖いよ?


 俺の恐怖心になんて、勘付かんづきもしないクラスのやつらは、友李の発した『ヒロくん』の方に興味津々きょうみしんしんのご様子だった。



「あのぉ! 友李ちゃんは尋斗とどういう関係何ですかぁ?」


 体育会系の男子が面白半分で質問した。別にただの幼馴染だよ!


「私と尋斗は、幼馴染というか……許嫁いいなづけ……かな?」


「「「「「「「「えぇぇ!」」」」」」」」


 何それどこのヒロくんだよ?! 少なくても俺ではない! マジで!


 

 その後も色々騒いでるクラスの奴らが、友李に質問をしようとしていたが、チャイムが鳴ってそれは強制終了となった。


「それじゃあ、霧宮さんは平良くんの前の席に座ってください」


「えぇっ!」


 なんだなんだ。


 いきなり声を上げたのは、俺の隣……咲良だった。顔真っ赤にしてどうしたんだか。



「それじゃ、今日も皆さん頑張りましょう」


 先生の終わりの言葉に合わせて、みんな各々おのおのの行動を始めた。


「平良くん!」


「尋斗!」


「「ちょっと話があるんだけど!」」


 ハハハハ……モテルオトコハツライナァ。

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