第16.5話(後編):霧宮友李

「突然ですが、このクラスに帰国子女が転入することになりました。入ってください」


「はい!」


 廊下で待っている私に、教室の先生が声をかけた。数年ぶりに日本に帰ってきた私は、今日からこのクラスに入る。


 知り合いがこのクラスにいると言って、ここに転入させてもらうことになったのだが、尋斗ひろとはどんな顔するかな?


 喜んでくれるのか、ビックリするのか。もしかしたら嫌がられてしまうかもしれない。けど、やっぱり私は尋斗と同じクラスにした。


 

 これをに尋斗への態度を変えようと思ったんだけど……朝の想定外の出来事で、ついキツい態度をとってしまった。


 そもそも私があんな態度を取るようになったのは、ああでもしないと、尋斗は私のことを気にかけてくれないと思ったから。


 ちなみに、もう一人の幼馴染の寿志ひさしにもキツい態度を取るのは、ただのついで。



 そんな昔のことを思い返しながら教室に入った私は、自己紹介をしつつ、尋斗がどこにいるのか探す。


「今日からお世話になる霧宮きりみや友李ゆりです! よろしくお願いします」


 ええっと、どこにいるかなぁ……


-バンバンバンバンバンバンッ


 ちょっと待って! なんであの1番後ろの席の人は、机に頭を打ち付けてるの?!


 奇怪きかいに思った私は、その生徒を凝視ぎょうししてみた。


 ムムム……って! あれ尋斗じゃん! しかもその隣で彼を見つめているのは、今朝けさの女の子。

 

 尋斗は何やってんの? うぅん……考えられるのは一つ。あの女の子に見つめられて照れた尋斗が、それを隠すために頭を打っている!


 つまり……尋斗はあの子のことが好き?!


 そんな……せっかく同じクラスになれたから、たくさん話して、たくさん遊んだりしようと思ったのに!


 私と尋斗のイチャイチャ……じゃなくて、幼馴染としての仲を深める計画が台無しになっちゃう!


 そんなのやだ。ずっと楽しみにしてたんだから、必ずやり遂げて見せる!


 あの子にだけは、絶対に尋斗を渡さない!

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