第16.5話(前編):咲良望美

 朝から疲れた。なんとか平良たいらくんの住所を見つけられたから、一緒に行こうと思ったのに……。


 一体あの子はなんだったの?


-ガラガラガラ


「ホームルーム始めるよー!」


 私が頭を悩ませていると、自分とは真逆と言えるぐらい明るい声が教室に響いた。このクラスの担任の先生の声だ。


「突然ですが、このクラスに帰国子女が転入することになりました。入ってください」


「はい!」


 帰国子女か……なんか少し憧れるなぁ。でも、外国なんて行ったら平良くんに会えなくなっちゃうしなぁ。


 って、そうじゃないわよ! べべべ、別にぃ、平良くんに会えなくたってっ、なんにも困ることなんてないし!


 そんなことを思いながら、私は横目で隣に座る平良くんを見てみる。


「…………」


 なんかすごい冷や汗かいてるけど、どうしたんだろう?


 私はそんな疑問を抱きつつ、黒板の前に立つ転入生の自己紹介を聞く。


「今日からお世話になる霧宮きりみや友李ゆりです! よろしくお願いします」


 あぁっ! あの子、朝の! 確か平良くんのことを押し倒したとかいう……。


 完全に猫被ってるわね。喋りかた方とか、朝と全然違う。


 そうだ、平良くんにあの子のことを何か聞いてみよう! そう思った私は、再び平良くんにの方に視線を移す。


-バンバンバンバンバンバンッ


 えぇぇぇぇぇっ! なんで机に頭打ちつけてるの?!  


 さっきの冷や汗といい、今といい……様子がおかしい……。


 考えられる可能性は一つ。……平良くんはあの子のことが好きで……一緒のクラスになれたことが嬉しすぎて頭を打ちつけている!?


 そんなぁ……これからは私が平良くんを独り占め……もとい、私の友達作りのコーチとして手助けしてもらおうと思ったのに……。


 最終的に私とお付き合い……いえ、平良くんともお友達になれたらと思っていたのに!


 というか何よ! 私が告白した時は、女の子になんか興味ないって顔していたのに……!


 許さないわ……何に対してかは分からないけど、とりあえず許さない!


 

 あの子にだけは、絶対に平良くんを渡さない!

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